第18話 やると思ってた
第七位階中位
掴みは上々。
一番人見知りする摩耶を真っ先に落とした事で、必然的にマヤの保護者ポジションであるマガネ、もとい桜里の好感度が上がる。
2人の好感度が上がる事で人の良い聖人の好感度も上がり、3人の好感度が上がる事でクリア、麗奈の好感度も上がる。
一石四鳥の成果である。
ゲームで知り合った相手とこうも立て続けに会うとは、世間は狭いものだ。
……まぁ、その実、僕が会った相手は飛び抜けて優秀な者が殆どで、冠成内で他より頭一つ抜きん出る優秀なのはほぼ鈴守の縁者。
それに……お昼ご飯食べてる時に来たタクメールによると、新たな9万人分のゲート・ギアはその7割が抽選になるらしい。
神はきっと才能がある人とその周りを最優先で確保しに行く筈だ。
僕と彼等に縁があるのは、決して偶然ではない。
尚、残りの3割の内、1割少々、もとい1万は確定予約。残りは当日販売分と言う事だが……犯罪が起こる危険性が高い事は警察も承知の上だろう。
さて、一件だけ塔の確認を付いて回り、特に妙なところも無いと言う事で、若い衆を引き連れて屋敷に戻った。
ミコトとカナは、他の塔を別々に順繰り周って行く途中なので、一時お別れである。
◇
若者4人を連れて、屋敷内の先とは別の謁見室に移動した。
此方は、僕用では無く、鈴守や鈴護の偉い人がそれより下の人に会う時の部屋だ。
畳が敷かれたこの部屋は、程々に良い値段がする調度品がちょこちょこ置かれており、奥のお偉いさんが座る場所は拳1つ分高くなっている。
専ら鈴守縁者の行儀練習で使われる型の部屋で、鈴守神社の少し大きめな分社には必ず同じ形の部屋がある。
セイト達も此処に来ると言う事は、この部屋を使った事がある筈だ。
……そもそも謁見の予定が無い下男下女の役割だった可能性も……あると言えばあるが……。
「……偉い人に、会う……?」
「そうだよ」
流れで手を繋いだままのマヤが部屋に入って直ぐにそう聞いて来た。
ちゃんと行儀作法は習って来たらしい。
偉い人に会うと聞いて、驚きの声を上げたのはクリア。じゃなくてレイナ。
「え!? えぇー!? 鈴守様に会うんですかぁ!?」
酷く動揺する彼女へ、セイトが否定の言葉を述べる。
「いや、どうだろう。今は神事を控えているし、鈴守様も僕等に会える程お暇では無いんじゃないかな?」
「おそらく、当主様では無い方に御目見えするのだろう。私は後で真金家の者として当主様にお会いするからな」
「……ユキ、誰と会うの……?」
マヤの問いで4人の視線は僕に集まった。
謁見するんだから、そりゃ当然一番偉い人に決まってるじゃないか。
「当然、鈴守の当主サマダヨ。ほら、早く座って」
僕の指示でぞろぞろと下座につく彼等。
はぁー。ドキドキしますぅ。とやたらと大きい胸を押さえるクリアに、居住いを正すマガネ。セイトはやや緊張した面持ちで正座している。
そしてマヤは……。
「……」
「……離してね」
「……」
僕の手を掴んだまま、僕を隣に座らせようとし、今は、行っちゃうの? と言わんばかりの顔で此方を見上げている。
「……駄目?」
「離さないと謁見にならないからね」
「……分かった…………」
うむ。マヤはもう僕の虜だな。この調子で他の人達も落として行こうか。
では謁見である。
「ちょっと待ってね」
そう言うと、僕はポニーテールを下ろし、おもむろに上座に登った。
改めてそこに座る。
「?」
「っ!?」
「……!?」
「……?」
頭上に疑問符が浮かんだままのマヤとクリア。
即座に気付いたマガネ。
僅かな間を置いて気付いたセイト。
そんな4人へ僕は——
「やぁ、鈴守紗雪だよ♪」
——などと声を掛けてみたり。
静まり返る室内。
「……成る程……ユキなら、やると思ってた」
そんな何処かで聞いた様なマヤの言葉が、彼等の頭の中に木霊した気がする。
◇
新たに来た真金一行、彼等の内オウリは身内だが、セイトとマヤとクリアは違う。
マヤはマガネの少し遠い親類だが、鈴守との縁はそう深く無い。
三人を招待したのは、流派の宗主、真金玄三とその娘、真金裕子、そしてその娘である真金桜里だ。
彼女等が僕の姿どころか名前さえ知らなかった理由は、げん爺がそこら辺の仕来たりに少し厳しい人だったからである。
護鈴に曰く、未熟な護鈴は主を知ってはならぬ。
我が家の家訓、名を名乗る時は偽名を名乗るべし。と言うのは、暗殺などを警戒しての事なのだ。
彼等4名は、謁見の後何かしらの手伝いに向かわせた。
今ならちょうど屋台を出す人達向けにお昼ご飯の配布を始める頃なので、おにぎりや豚汁なんかを配ったり行列を管理したりと忙しくなるので、4人はそこに送られるだろう。
この後僕がやる事は……皆優秀なので無いと言えば無い。
だが、祭りを前にして優秀な僕の才能を遊ばせておくのも非効率なので、適当な鈴巫女か鈴巫女補佐を捕まえて色々手伝う事にする。




