第6話 登録されたい
※970万PV達成
第七位階中位
「はぁ……娘が、いっぱい……」
そう言って、ハイネシアさんは恍惚とした表情で水精三姉妹を抱き締めている。
「ふぁ…………トリップしてる所悪いけど、次に行くから付いてきてね」
娘が1人出来てからは娘ラヴに目覚めたハイネシアさん。
アルケレーネさんは錬金術、魂合、加護の重ね技でゲーム内の記憶を得た為状況を理解しているが、その妹達であるウィーナディーアとルゥスリシュちゃんはニコニコしつつも困惑している。
本当なら親子水入らずで過ごさせてあげたい所だが、ハイネシアさん……より、魂二個分の力を持つアルケレーネさんの力は機神討伐に欠かせない。
家族全員連行します。
◇
地下水路を出て、次に向かったのは鍛錬島、西にある僕の迷宮。
パフィニョン軍団やゴブリン軍団が修練に励むこの迷宮には、個人別のフィールド制限がある為、未だに挑戦者はいない。
ゴブリン達は前に確認した通りで、鬼人も妖精もまだまだ変化はないが、パフィニョン達は僅かな期間でもモリモリ耐性を上げ、改良版の生産を行っていた。
此処に来た理由は、此処が黒霧クラスタの設置場所として最適だからだ。
要は、神のお膝元である鍛錬島の、僕が作った迷宮の中で、パフィニョン軍団と言うやたらと強い集団が守っている場所。つまり一番安全な場所だからである。
と言う訳で、微妙に拗ねる黒霧の御機嫌取りをした後で、今後の予定と大まかな方針について情報の送信を行った。
「それじゃあ黒霧。教育は任せたよ? 急がなくて良いからね」
「承りました、私の主人」
御機嫌な黒霧に500万近い数の魂の教育を任せ、次の行動に移る。
金の本に登録し直した幹部級の蘇生復活である。
アナザーの死亡判定は、おそらく魂で活動出来ない生物が肉体を失った場合。だと考えられる。
だから僕は肉体を失っても死亡しなかったのだろう。
それが精霊などの場合は、肉体そのものが魂を映す鏡であり、魂だけでの活動は肉体に捕らわれた者よりも容易な筈なので、死亡判定にするには魂までダメージを負わせないと難しいだろう。
此方は勿論下位の精霊であれば、肉体が精神体でも星辰体での活動には不慣れな事が予測されるので、倒せる者は案外簡単にやれると思われる。
さて、ではゲームから連れ帰って来た精霊種達はどうだろうか?
結論から言うと、全員復活である。
端末として使用していた肉体を失った為、最低限の魔力しかなく、幼体化どころか光の玉になっていたが。
精霊帝に限って言えば、報酬で得た基本属性の宝珠を魂に与える事で、ほぼ完全な復活を果たしている。
ハイネシアさんは実験も兼ねての一足先のご復活だ。
ルメールにはエイジュから徴収した森の宝珠を与えた。
元が天殻樹と言う樹木なので、精神体だけで復活するのはどうなのかとも思ったが、力関係が逆転して何処にでも天殻樹を生やせる様になったので、結果オーライである。
比較的弱めの樹精三姉妹は、ルメールの補助を受けて復活した。
また、死亡判定になった者も、何故か蘇生に掛かる時間はレイーニャの時と比べても驚く程に早かった。
此方はおそらくだが……魂の損耗が無いから復活に必要な肉体を用意するだけで蘇生出来ると言う事ではなかろうか?
つまり、巨大イカが超巨大イカに進化出来た要因の一つは、マレビトより遥かに強いレイーニャが死んで魂の幾らかが飛び散ってしまったからだと考えられる。
ともあれ、そんなに時間が無い今の僕には、幹部級達の復活が早いと言うのは福音以外の何物でも無い。
本頼りになるが、ほぼ完全復活した精霊帝達も一時的に本へ戻し、短いながらもしっかりと休息を取って貰う。
金の本は精神の消耗も肉体の損耗もしっかり治してくれるので、短くても十分なリラクゼーションになるだろう。
……僕も登録されたいなぁ。
そんな事を思いながら本の表紙を撫でると……金の本に宿る金の力に当てられたのか、ふとあの感触を思い出した。
意図せずして、指は唇へ添えられる。
「……もうっ……!」
僕がこうして悩んでるのを見て笑ってるんだろ? そうに違いない。神は意地悪だ!
僕ともあろう者が、ふとした拍子にこうなってしまうのは、心を強く揺さぶられたからだろう。
恥ずかしかったり、嬉——いやまぁそんな感じの感情が、僕を僕のまま神へと至らせる鍵なのだ。
機神討伐の仕込みをしながらも、しばらくの間、悶々とした感情が収まる事はなかった。
◇
各種雑事を終え、寝る準備を整えてからアナザーにログインした。
明日は午前中からやる事があるので、アヤは既にご就寝。
タクも寝る前にメールを送ってくれて、それによると各迷宮の踏破は無事完了したらしい。
今後の予定を考えると、機神討伐は僕の援護なしで行われる事になりそうだが……まぁ、大丈夫と信じよう。
何より、僕の援護なしで強敵と戦うと言うのも一つの経験だ。
最後に確認だけして、今日は寝るとしよう。




