第206話 金色は輝いて
第六位階下位?
真っ先に動き出したのはティアーネ。
念動力を受けて動きが鈍いザッハークへ、大剣の一撃を振り下ろす。
「はぁぁっ!!」
気合いと共に放たれた一撃は、ザッハークの鋭い爪とぶつかり合い、金色と漆黒が拮抗する。
次に飛び込んで来たのは、炎の化身。アズミだ。
持っていた能力が精霊化する類の力だったからか、アズミは力の塊そのものへの耐性と適性が高い。
他に先んじて衝撃から立ち直ったティアーネに続く様に、金炎を纏う剣でザッハークの片手と拮抗する。
両手を封じられたザッハークへ、タダトが迫る。
流石は年の功か、アズミと同じタイミングで動き出したタダトは、炎纏う大剣を振りかぶるアズミの影となってザッハークへ接近した。
本来のザッハークであれば余裕で対処出来た事だろうが、今は敵も肉体を変化させたばかりな上、濃密な金の力によって五感の調子もさぞ悪かろう。タダト自身の気配を消す能力も中々に優れている。
「ふっ!!」
流麗な剣技は金水を宿し、短い呼気と共に放たれた蒼金の煌めきが三度舞う。
最も弱点に近いと予測される胴体を狙った斬撃はしかし——浅い。
いつの間にやらザッハークは防御の魔法を行使していたらしい。
緻密に編まれた黒の結界は、ザッハークの体表を這い、タダトの斬撃をなぞる様に敷かれていた。
——タダトの剣技は見切られている。
なれば防げなくなるまで斬るだけの事。そう言わんばかりに、タダトは蒼金を走らせる。
そこへ迫るは漆黒の顎門。
ザッハークの首が一つ伸び、邪気を押し固めた黒球を生成しながらタダトへ近づく。
——光の軌跡が駆け抜けた。
リエだ。
突撃する速度をそのままに放たれた蹴りが、ザッハークの頭を打ち払う。
顎門から離れた黒球はあらぬ方向へと飛び、半ば荒野と化した帝都の地面に着弾した。
邪気は蠢き大地を犯し、黒の邪竜が立ち上がる。
邪竜が暴れ出す前に、黒霧達の魔法が殺到して邪竜を消滅させた。
パックアップは完璧である。
高速で動き回るリエは、治癒の力を用いて浄化の力を強化した爪で、ザッハークの三頭と打ち合う。
背後に回り込んだユウイチとヨウイチがザッハークの背や尾へ剣を振るい、分身出来るアコが全体の補助を行う。
——優勢だ。
少なくとも今は。
だが、敵もこのままで終わる訳では無いだろう。
忌々しげに此方を睨む真ん中の首が、口を開いた。
『絶望セヨ』
ドス黒い邪気が立ち昇る。
◇
虚空に現れたのは、邪気の塊である幾千の黒い剣。
ザッハークが魔法を行使したのだ。
粘つく様な邪悪な気とは裏腹に鋭く尖った穢れの剣。
それら全てが僅かに動き、僕達全員へ先端を向ける。
そうと認識した次の瞬間——2つの金色が輝いた。
光の根源はリエとアコ。
金光は刹那の内に勢いを弱め、その代わりに2人の中から緑と黒のオーラが溢れ出た。
それは間違いなくラーベスタとグリドアの魔力だ。
ただし、内に秘めるエネルギー量が段違いに跳ね上がり、その質も並大抵の物では無い。
金の粒子さんが何かをしたのだろう。
何処からこんな力を捻り出したのかは、僕の目を持ってしても皆目見当がつかない。
リエから溢れる高密度魔力が翼を形成する。
その姿はラーベスタの神体を表すかの様で——加速した。
空間操作系の力が働いている様だ。
『ははっ、凄いや! おいらにこんな力があるなん——』
『——喋ってないで、集中』
『あ、はい』
そんな声が聞こえた次の瞬間、リエは転移の如き速度で空を駆けると、次々と邪気剣を打ち砕きはじめた。
『これは負けてられないっすね!』
『おうとも、気合いを入れろ。我が僕よ!』
『僕じゃ無いけど気合いは入れるっす!』
アコから闇の魔力が立ち昇る。
現れた数百の分身は、瞬く間に赤眼の異形へと形を変え、邪気剣へと攻撃を開始した。
高速タッグが力を振るい、数瞬の内に幾つもの邪気剣を破壊する。
しかし、邪気剣の猛威は緩まない。
刹那の内に百が砕ければ百が現れ、少しでも遅れれば誰かに向けて刃が迫る。
2人が全力を尽くす事で、辛うじてザッハークの魔法と伍する事が出来ていた。
——ザッハークの両腕から負の力が溢れ出る。




