第204話 其ハ絶望ヲ与ウ語部ナリ
第六位階下位
新たな装備の分配を終え、念の為騎士の宝珠だけは僕が装備し、これにて最終確認完了と言う事にしておいた。
改めて、ナリファンの第4形態を警戒しているユウイチ達に声を掛ける。
『お疲れ様。ナリファンの魂は回収したから、取り敢えずは安心して良い』
『……はぁぁ〜〜……了解。やっと終わったか……』
『えーと、ユキさん。このまま直ぐに次に行きますか?』
リエの問いに、僕は黒の兜を外しつつ頷いた。
黒霧も僕に合わせ、黒鎧騎兵団の鎧から全力戦闘用の装備に切り替え始める。
『うん。まぁ、大丈夫だとは思うけど……改めて情報を提示しておこうか』
黒霧を通じて一部の強者達に、些細な情報群を送信した。
——ディアリードについての情報を。
分かっている事は少ない。
だが、ディアリードが千年先の未来で悪魔達を統率する絶対存在であると分かれば、それだけで十二分に警戒して余りある。
……と言うか、千年前の時点でレベル600クラスを生み出せる様な化け物が、千年掛けて軍団を準備していたらと思うと……力は幾らあっても足りない。
『ディアリード、か…………またと無い好機って事か』
『そうだね。今が未来の試金石だ』
『可能な限り情報を回収しつつ戦う必要があるな』
まったくもってその通りだ。今の時点で化け物過ぎない事を願うばかりである。
そうこう話してる内に、黒霧と僕の着替えも終わり、精霊帝と七精勇者の体調確認を終えた。
『それじゃあ行こうか』
僕は鬼面を被り直す。
僕の言葉にユウイチ達はコクリと1つ頷いて、玉座の間に繋がる大扉に手を掛けた。
◇
天窓から射し込む薄明かりが、玉座の間を仄かに照らしていた。
遠くに見える魔割山脈には灰色の雲が掛かり、雄大な山脈の頂きをその影に隠している。
唯一はっきりと見えるのは、綺麗に抉れた峡谷のみ。
天窓の上下にある壁画には、何らかの超越存在と思わしき巨大な光と、それに平伏する民が描かれていた。
帝国は王権神授の元この地に君臨し、封印を守って来たのだろう。
歴史を感じさせる玉座の間には、2つの影があった。
やたらと高い位置にある玉座に腰掛けている黒い影と、そこに至る階段に座っていた小さな影。
声が響いた。
「よくぞ来た、この世界の勇者よっ!!」
若い、と言うよりも幼い少年の声が、薄暗い大広間に響き渡る。
暗闇に光る赤い瞳が楽しげに歪み、小さな影が歩み出た。
通路から刺す魔法の光の元に現れたのは、金髪赤眼の少年。
シドウ君から得た情報が正しいなら、帝国49番目の王子だ。
取り憑かれたのか取り込まれたのか、はたまた取って代わられたのか。どの道元の王子はもういないだろう。
少年の姿をした悪魔はニヤリと嗤った。
「我こそはディアリード。この世界唯一の魔王統導主なり!」
悪魔がその両腕を大きく広げ、次の瞬間——玉座の間に魔法の光が灯る。
「さぁ、勇者達よ —— 絶 望 の 時 間 だ !
抗い、戦い
—— 打 ち 砕 い て 見 せ よ ‼︎」
まるで元から居なかったかの様にディアリードは煙と消え、代わりに玉座に座っていた黒い影が立ち上がった。
邪霊・イヴリース LV?
全身が黒く変色した皇帝は、呪詛が如く言葉を紡ぎ——
『蒙昧ナル正霊ヨ——』
——邪悪な光が広間を包み込んだ。
◇
暗闇から鎌首を擡げたのは竜の三頭。
絶望の化身は闇より這い出、竜脚が石の床を踏み砕いた。
邪竜王・ザッハーク LV?
『——始原ニ沈メ』




