第198話 死を越えて
第六位階下位
当たれば致命傷の攻撃を避け、時に逸らす。
精鋭の戦士達がナリファンと激戦を繰り広げている一方、ゲート側では駆逐戦が行われていた。
見上げる程に巨大な門からは、無数の魔物が際限無く溢れ出してくる。
その軍勢を、一方は白と黒の閃光が乱舞し、もう一方は物量に物を言わせて殲滅していた。
リエとアコの高速コンビは、アコが分身して雑魚を駆逐し、リエが偶に混ざる100レベル以上の強者を惨殺する形で大門の1つを完全に封殺していた。
レオナールや悪魔獣達は哀れな物で、出て来る端から経験値に変わっていく。
加護が無いので経験値の吸収効率が悪い為、魂は全て量産した死魂結晶で回収だ。
死魂結晶自体は黒霧クラスタに接続されているので、厳密には死魂結晶で回収と言うより黒霧が回収しているが。
疾風の如き黒の群れは、それぞれが持つ小太刀に聖属性を付与し、魔界から溢れ出る闇の魔物を切り捨てる。
アコだけの演算力だと自分そっくりの分身は精々2人まで、黒い影になるまで能力を落としても10数人程が限界だ。
そんなアコの能力演算を黒霧が肩代わりする事で、アコと同じ姿をした分身が10名も現れ、その戦闘力も本体とほぼ同等。
小太刀に付与された聖属性は元々アコが持たない力で、効率的に悪魔を屠る為の黒霧の計らいである。
リエの方は、力を解放すると少し理性が飛ぶので、増した獣性をそのままに選択肢を狭める事で対応した。
実際の所は、出来る事が多過ぎな上、直感的にローリスクハイリターンの選択肢を選んでいるので、ただでさえ少ない演算力を彼女自身が放棄しているのだ。
よって、その場その場の最適解を黒霧が演算し、幾つか提示してやる事で、リエの殲滅スピードは1.5倍程向上している。
対する魔物側は……何も出来ない。
レベル100超えなら一撃では死なないが、その代わり死ぬまで切り刻まれる。
死後、魂と肉体は自動的に回収されるので、消えるまで滅多斬りされるのだ。
命懸けで稼いだ時間で出て来れた魔物は、次の瞬間には回収である。
スピード特化の2人を抜けるには、レベル100クラスが同時且つ連続で出て来るしか無いだろう。
此方は2人で十分対応出来ている。
反対の物量戦も、結果的には2人のそれと同じだ。
何せ、皆にはある程度の遠距離攻撃手段がある。
シンジの針……と言う名の槍や、マイカの光魔法、キミトやテルオミは言わずもがな遠距離攻撃型で、門に近づかなくとも攻撃の雨を降らせる事が出来る。
魔力の供給も、黒霧越しに迷宮を経由して地脈から汲み上げており、その演算も黒霧が補助している為……何なら数日はこの戦線を維持出来る。
ナリファンや魔界門の戦いに不参加の者達は、戦場を遠巻きに囲っていつでも援護出来る様備えたり、ナリファンの支配から解放されて気を失った転生者達の護衛に向かった。
魔界から流れ込む混沌とした濃い魔力は黒霧に分解、吸収させているし、オヴィンニクと言う種族の黒にゃんこは僕が捕まえている。
後は……呆然と戦場を見ているシドウ君を、もといその魂に刻まれたユニークスキルをアレコレしたい欲求がモリモリ湧き出て仕方ないっ。
……が、それはナリファンを仕留めた後にしよう。
◇
腕力でナリファンを上回るノリヒコ。
格上との戦いで徐々に仙気を我が物とし始めている剣士達。
しかし、敵もまた永き時を生き抜いた強者。
手にした膨大な力に少しずつ慣れ、余裕を取り戻していった。
レベルは500を越えた辺りで打ち止めになり、宝珠に残った大量の魔力は攻防や回復に使われている。
僅かずつ戦局が傾いて行く中、一本の楔が打ち込まれた。
魔界門から出てくる敵が少なくなり、手隙になったリエが参戦したのである。
それは一瞬の出来事だった。
ノリヒコが6本の剛腕でナリファンの腕と翼を押さえ付け、剣士達が刃を振るう。
ナリファンがそれぞれの剣を全て受け止め、瞬時に反撃の魔法を行使しようとした次の瞬間——
——ナリファンの胸部に手が生えていた。
十分な助走。膨大な魔力の凝縮。生じた僅かな隙。
ただ一点に集約されたリエの貫手が、ナリファンの強固な魔法防壁を貫いたのである。
リエの攻撃はそれだけではなかった。
鋭い爪が肉体に突き刺さると同時に、魔法妨害の波状魔力が流し込まれ、ナリファンの動きを阻害する。
そこへ襲い掛かるは剣と魔法の総攻撃。
戦いの中で研ぎ澄まされた仙気がナリファンの肉体を切り刻み、隙間を縫う様に放たれた遠距離攻撃の雨が皮膚を突き破る。
如何にレベル500の強者と言えども、レベル300相当の力を持つ者がその全魔力を用いて魔法妨害を行えば、肉体の制御を大きく阻害させる事が出来る。
その上、宝珠がある場所も悪かった。いや、リエが狙ってそこを貫いたのだ。
すぐ近くにある宝珠へ波状魔力を集中させる事で、ナリファンと宝珠の繋がりが乱された。
斯くして、宝珠を持つ強者、ナリファンは大した対抗も出来ず、強者にしてはあっさりと地に沈む事となった。
◇
「……やったか」
ユウイチは呟いた。
「知ってるぞ、それ、ふらぐってやつだな!」
ティアーネが元気にそう言った所で——
——地に伏すナリファンが光を放つ。
まぁ、そうなる可能性もあるだろうと予測はしていたが。
第二ラウンドの始まりである。




