第190話 転生者達と面談ランチ
第五位階上位
先ず念話で呼びつけたのは、一応リベリオンのボスと言う事でユーイチだ。
「ユキ様、本日は御招待頂き——」
「——敬語や敬称は結構。それを求めるのは今じゃない。常時それじゃあ息が詰まるだろう?」
「……王女殿下の仰せのままに」
そう言うと、雄一はニヤリと悪戯っぽく笑って見せた。
折角の機会なので、情報のやり取り以外の交流をしっかり行おう。
「それで、ジョージ君、部下の練度は如何程かな?」
「あぁ……まぁ、ぼちぼちかなぁ」
「曖昧だね」
「っか、上が高過ぎてそう報告するしか無いんだよなー」
雄一はバツが悪そうにしながらも開き直った。
「構わないさ、牛歩でも一歩だ。疲れたら立ち止まったって良い。困ったら僕に頼りなさい」
「……はは、なんか期待されてるみたいで小っ恥ずかしいな」
彼は照れたように頬を掻いた後、1つ間を空けてから、キリッとした英雄の顔で此方を見据える。
「さっきはぼちぼちなんて言ったが、俺達は間違いなく成長してる。全部ユキさんのおかげだ……必ずこの恩に報いてみせる。——俺達は強くなる」
未来の英雄の誓いだ。応えてやるのが主の務めと言う物だろう。
「君の忠義、確かに受け取った」
そこまで言うと、僕は仮面を外し——
「期待しているよ、雄一君」
——ニコリと微笑んだ。
「…………綺麗だ」
「至極当然だ」
「……何で隠してるんだ? 勿体ない」
「美しさとは、時に争いを呼ぶ物だ。例えば……君が僕に惚れたら君は間違いなく女性に刺されるだろう」
雄一はギョッとした後首を振った。
「いやいや、エミリーそんな事しないし、俺はエミ——」
「——君の事を愛しているのがエミリーだけとは限らないよ」
「へ?」
「心当たりは無いのかな?」
そう聞くと雄一は難しい顔で考えながら、ポツリと呟いた。
「……な、くはない」
「ほう、誰が?」
「あー、やっぱり大きいクランのリーダー張ってるからなぁ、やたらと声援とか受けたり、ファンレターとか届くんだよ……それかー」
「……ふむ」
これは重症だ。仕方ないから強硬手段に出よう。
「雄一君、君は近い将来信頼する仲間の手によって葬られる事になるだろう」
「は? なぜにっ!?」
「ところで話は変わるが——」
「——変わっちゃダメな奴だろ今のっ!!」
「ハーレムに興味は無いかな?」
「は?」
ポカンと口を開く雄一に言葉を続ける。
「因みに此方側はつい先程から防音結界が施されている。此方で大声を出しても彼方側に声が伝わる事は無い」
「い、いや……俺は……………………きょ、興味が無いと言ったら……嘘になる……」
「素直でよろしい」
恥ずかしそうに無表情の黒霧やお酒をガブ飲みするイテアをチラ見しつつも、雄一は素直に答えてくれた。
それだけ聞ければ十分だ。
「さて……何か質問はあるかな?」
「……あのー、さっきのは俺が恥ずかしいだけですかねっ」
「どうやら質問は無さそうだね」
「いやまてまてまて……質問なら、山程ある」
「何かな?」
雄一は改めて表情を引き締めて言った。
「邪神は、本当にいるのか?」
「いる」
「そうか……」
「言っておくが、今の君達では邪神にとって塵芥に等しい。役に立つとは思わなくて良いよ」
「う……な、何か出来ないのか? 帝国とかがおかしいのは邪神のせいなんだろ……?」
ふむ……さて、転生者達が邪神との戦闘に参加するには何が必要だろうか?
まず、前提としてレベルは最低でも500以上。
『神代化処理』も必須だ。専用に調整した装備に加え、多々の支援アイテムもいるだろう。
何より、並外れた魔力操作能力などを含む個々の技術力がいる。
そこまでして鍛えに鍛え、ようやく雑兵程度の評価を得られる訳である。
……うむ、まぁ適当な事を言っておこう。
「一回やってみて分かったと思うが、邪神は攻撃を受けると欠片が飛び散る。最前線ではそれらを処理している余裕は無い。君達には溢れ出る雑魚を駆逐して貰うつもりだ」
「そう、か……何の役にも立たないって訳じゃあ無いんだな?」
「大陸を守る上では重要な役割と言えるだろうね」
「分かった。その時まで俺達は訓練に励もう」
「期待しておくよ」
◇
雄一を下がらせ、次に呼んだのは四月一日兄妹。
ウォルテス・ヴェルヌとサイファの能力は、『共振強化』と『万物合一』。
どちらも稀有な高等能力であり、解析は急務だ。
まぁ、転生者、覚醒転生者、神代転生者と分けていても、内在する器の大きさとそこに満たされるエネルギー量は大差無いので、此方側から弄ってやれば案外簡単に神代の力を宿す事は出来るだろうがね。
ともあれ、解析や覚醒なんかは後の話だ。先ずは目の前の2人とお話ししよう。
「やぁ、こうして対面するのは2回目だね」
そう声を掛ける僕に対し、2人は跪いて頭を垂れた。
「「その節は大変失礼致しましたっ!」」
どうやら、僕へ攻撃を仕掛けた事を言っているらしい。
まぁ、僕が誘導した訳だが。
「分かっていると思うけど、あれは実戦訓練みたいな物だよ。あの時君達の判断は間違っていなかった」
「そう言って頂けると、此処も幾分気が楽になります」
「仲間達には俺から伝えておきます。特にイスカの奴が気にして——グエッ」
「すみません。兄さん昔から口数か多くて……アハハ」
脇腹に肘鉄をくらい悶絶している兄を放置して、妹は愛想笑いを浮かべた。
「ふふ、仲が良い様で何よりだよ」
「は、はい……」
若干頬を赤らめ此方を見る妹ちゃんに、今後の予定を伝えておく。兄は脇腹抱えて唸っているが……直ぐ復活するだろう。
「君達兄妹2人には、今後しばらく研究に協力して貰う事になる。他の人より仕事は多くなるが、その分の配慮はしよう」
「はい! よろしくお願いします!」
「あと、敬語や敬称は不要だ。必要な時まで取っておくと良いよ」
「は、はい……! ユキ様……」
……大丈夫かな? 魅了発動して無いよね?
その後、幾らかの質問を受けてから四月一日兄妹を下がらせた。
ユニークスキルの因子を回収しているとは言え、引き継がれた能力とオリジナルでは成長率やその方向性が変わってしまう物。
彼等彼女等がお役御免になるのはまだまだずっと先なのだから、その調子でしっかり励んで欲しい。
◇
続いて、注目株の1人、白石琴乃。ディニー・イーシェン。
此処等では珍しくも無い金髪をストレートに伸ばし、白を基調とした清楚なドレスを纏う美少女だ。
彼女は上段に登るや否や、中々様になっている礼をして見せた。
「お初にお目にかかります。陛下、本日は御招き頂き——」
「——敬語は不要だよ」
「では初めまして。雄一君がユキさんと言っていたので私もユキさんって呼ばせて貰いますね」
にこやかに微笑む様は至って普通に見えるが、彼女は筋金入りの厨二病だ。
常識人の振りをしているが内心は大興奮中で、魔術分野に対しては中々の貪欲さを示している。
講師の黒霧を質問責めにし、情報料を提示されてあしらわれた様である。
「呼び立てた理由は他でも無い。君のユニークスキルに関してだ」
「ユニーク、スキル……? ……ボソボソ《良い! むしろそうすべき事を……なんで思いつかなかった私!》」
聞こえてるよ。声に出してしまう癖は直した方が良いかもね。
「今後しばらくは君の能力の実験に従事して貰う」
「え、あ、はい」
「勿論その分の報酬は出るよ」
「え!? 是非!」
報酬と聞いて目を輝かせたのは、魔法の勉強の為だろう。
魔法は階級が上がれば情報料も跳ね上がって行く仕様なので、MCは幾らあっても足りない。
「……因みにおいくらですか……?」
「取り敢えず三千万用意しよう」
「さんっ!?」
「結果次第ではその倍出すよ」
「ば、倍……!? ろ、六千万円……ふ、ふへ」
「……」
「ふへへ……こほん……ふへんんっ」
「嬉しそうで何よりだよ。何か質問は?」
にやにや笑いが止まらない琴乃。
その後どうにか立て直した彼女は、魔法に関して色々と聞きたいと言うので、後で詳しく話をする事にした。




