第187話 華麗なる怪盗
※830万PV達成
第五位階上位
翌朝。
東方と西方の制圧が完了している為、今は一部の防衛戦力を残し、全軍が帝国を取り囲んでいる。
過剰戦力によって侵略が続いている中央南部の小国群は、間も無く制圧されるだろう。
幹部クラスの女性陣は、昨日のスキンシップやお願いと応援で元気いっぱいだし、男性陣は温泉と酒と食事で英気を養ったので、同じく元気いっぱいだ。
迷宮の方も直ぐに終わるだろう。
と言う訳で、僕は帝国に潜入して帝国民の誘拐をする事にした。
◇
帝国は、その広大な領土の大半が人の領域である。
同規模の領土を持つエヴァンスタは山や森に囲まれ、同じくユーグランスは砂漠に侵されている。
よって、帝国は最大規模の人間領域を持つ国と言うのが正しいだろう。
そんな帝国には、ターザハルダ伯爵領を除くと、巨大都市もとい首都1個、大型都市もとい各領主館のある街6個、中型都市14個、小型都市28個、大小様々な村が無数にある。
人口は優に100万を越えており、豊富にある人的資源の殆どは農奴や奴隷となっている。
捕獲した帝国軍人などから得た情報によると、帝国には市民に階級がある。
三等市民、二等市民、一等市民、上等市民の四段階だ。
三等市民の下には更に奴隷があるが、扱いは三等市民と奴隷で殆ど変わらない。
いわゆる農奴……の酷い奴と言った所で、男は朝から晩まで働かされ、女は容姿によって其々別の階級の男に使われる。老人や怪我人は、多くの場合死兵として碌な装備も与えられずに迷宮探索へ向かわされる。
要は口減らしだ。そもそも農業が出来ない体の者を迷宮に送り込むなんて、肉壁以外の何物でもない。
大人以降が酷い扱いを受けるのに対し、子供は一度一つ場所に集められる決まりで、そこから何年か掛けて学校の様な物に通い、転生者の選別が行われる。
見事転生者を産んだ母親は、例えそれが犯罪奴隷であったとしても階級が1つ上がり、転生者自身は上等市民として帝国民に迎えられ、成人すると同時に騎士爵を叙勲する事になる。
転生者では無かった子供は、選別期間中に教育を受けているので、奴隷や三等市民の子は二等市民に、二等市民や一等市民の子は一等市民になる。
二等市民は、貧民と言うのが適正だろう。
三等市民の様に行動を制限される事は無いが、基本的には碌な職に就く事も出来ず、日雇いの仕事で糊口を凌ぐのが精一杯。
最終的には、男は迷宮に潜って死ぬか穀倉地帯で死ぬまで鍬を振るうしかなく、女は春を売って日銭を稼ぐ事になる。
余程頭良く行動し、時には容易く世話になった相手を蹴落とすくらいでないと、忽ちに餓死するのが二等市民だ。
三等市民は自由がない代わりに配給があるので、最も人が死ぬ階級は奴隷を抜いたら二等市民である。
一等市民からは、ようやく帝国民と言って良いレベルになる。
ちゃんとした職にもあり付けるし、長男は徴兵されなくなるし、申請すればお店を開く事も出来る。
優れた才能を持つ者は、上等市民に格上げされて役人等になれたりするのがこの階級で、余程の事が無い限り階級を落とされる事は無い。
上等市民となると、その全てが貴族家の使用人や役人、上等兵、兵士長クラスで、働き如何によっては騎士爵を与えられる事もある。
現在のルステリア帝国には、冒険爵や従士爵は無いので、使用人なんかは上等市民が限界だ。
これらの階級は、基本的に上へ行く程楽な生活を出来るが……その分上流階級と関わる事が多くなり、件の上流階級は腐り切っているので、年に十数人は奴隷落ちさせられているらしい。
ざっと見た感じだが……よくもまぁここまで上手く場を整えた物だと感心する。
帝国は下から上まで殆どが、負の力を生み出す為の工場そのものになっていた。
帝国領中央やや南寄りの大平原は、精霊王の力によって帝国全土を支える一大穀倉地帯となっており、主に三等市民が生活している。
差し当たって先ずは土の精霊王を回収……する前に、各地の村民を村毎頂いておく事にする。
土地毎ごっそり持っていくと言う中々に豪快な誘拐だが、文句のある帝国臣民は是非言いに来て欲しい。
◇
見境なく。躊躇なく。たった一つの見逃しすらなく。村を全て回収し、外を歩く旅人や商人を頂いた。
ついでに家畜と巡回する帝国軍人も頂いておいた。
撤退する帝国軍には何も手を出して無いが、道中の村が綺麗に無くなっているので、何かしらの混乱はあるだろう。
念の為黒霧に監視してもらう。
そんなアレコレをした後の昼食前の良い時間に、穀倉地帯の地下にいる土の精霊王を回収した。
ノーム・エンプレス イテア・オルヴェナーニャ・ミネロラ・レヴァアルズ LV?
オリハルコンの神像に封じられていた彼女は、無事精霊帝に進化した。
彼女が目を覚ましたら昼食である。




