第177話 ユキのしゅわしゅわ
※800万PV達成
第五位階上位
《【クエスト】『砂中の侵略者』をクリアしました》
《レベルが上がりました》
ミュータントギガンテスワームは強かった。
前回戦ったミュータントアシッドワームが蚯蚓の進化だったのに対し、今回のは蚯蚓の亜竜種、蚯蚓竜の進化だ。
それも、ギガンテスワームと言う通常のワームよりも巨大且つ危険なワームの、更に突然変異。
それはもう、ザヴァンの最年長個体に匹敵するか凌ぐ程に強かった。
ミュータントより一回り少々小さいクイーンワームと合わせると、ザヴァン達だけでは少なくない死者を出す事になっていただろう。
ともあれ、これでこの地からザヴァン達を引き抜いてもしばらくは問題無い筈だ。
このまま此処を放置すれば別の生物が生態系の頂点に立つだろうが、それはまだまだ先の話だ。
砂怪の墳墓のクエストをクリアして入手した物は、スキルポイント7P。神子結晶7個。
ララースァの栄養満点な液体を生み出す『ララースァ・クリスタル』。
風属性の魔法が使える二又の大剣『双角剣・ザヴァン』。
装備すると大きくなれる腕輪『ジャイアントブレス』。
まぁまぁ良い物をゲット出来た。
◇
『僕がお姉ちゃんなんだぞ』
『……?』
『ララは妹なんだぞ』
『……??』
『妹はお姉ちゃんにぎゅってされたりよしよしされないと死んじゃうんだぞ』
『!?』
『決して死にませんわ』
『……?』
『……ネィは妹卒業なんだぞ』
『っ!? そ、そんな……』
『冗談なんだぞ』
僕の体内でイチャイチャしている樹精三姉妹のやり取りを聞き流しつつ、状況の確認と考察を続ける。
61体のザヴァンは、知恵の聖杯によって高い知能を持っているので、知能相応に適切な処置を施している。
彼等はスノーブラックの『黒鎧騎兵団』とイメージカラーが相反するので、別の軍団を結成してそこに入れよう。
ザヴァンは種族的には植物と竜の属性を持つので、植物系で纏めた軍団『森海の主』を作る事にする。
今回で3つ目になる聖杯に魔力を押し込み、希望の聖杯の位置を特定した。
同時に、黒霧達がシャンズ理法国を制圧し、4つ目の聖杯『愛の聖杯』と聖杯の聖女シャルロッテの情報を入手してきた。
結論から言うと、聖杯とシャルロッテはユーグランス王国の南東、結界に閉じられた空間にある。
シャルロッテが生きているかは不鮮明だが、人間のシャルロッテへの信仰が精霊王だったシャルロッテに送られている事を考えると、人間のシャルロッテはもう既に亡くなっていると考えるのが普通だ。
……ただし、人間のシャルロッテがいる場所は、何重にも結界が張り巡らされ、僕の目を持ってしてもその深部を見抜けない封印された大地。シャルロッテが生きていても不思議では無い。
また、理法国の禁書庫から得た情報によると、聖杯はシャルロッテが作った物らしい。
この世界は生きた天災が自由気ままに闊歩しているから国の寿命も短めで、技術や伝承が遺失する事もままある。
禁書庫にある本だからと言って信用出来るかはイマイチだが……そこにあったシャルロッテ伝説が全て真実ならば、シャルロッテは転生者か或いは何かしらの神の加護を受けた人物という事になる。
接触は慎重に行った方が良いだろう。
帝国南の小国群は、現時点の踏破率がおよそ5%。
このまま昼夜を問わず進行を続ければ、予定通り3日後に侵略が完了するだろう。
発見された迷宮は、各軍団が順次攻略している。
最後に邪神関連。
先ずは邪神竜の居場所だ。
あくまでも予測だが、六王の位置と精霊王の封印地点、邪神の断片の封印地点から考えるに……ちょうど帝国の北、魔割山脈が途切れている場所が怪しい。
続いて、帝国にいる筈の邪神の断片について。
此方は、未だに動きがない。気配すらない。
いない筈は無いのだ、帝国の軍人達が悉く負の力に汚染されていたのだから。
最低でも負の化身がいなければこんな事にはならない。
此方は要警戒だ。
最後はユーグランス王国と負の化身の関連について。
ミュータントギガンテスワームに負の汚染があった形跡を発見した。
長い時の中で浄化される程度の汚染だが、ワームの凶暴性を解放するには十分な汚染度だ。
……負の化身が白い夜を早める為にワームを汚染したと考えて間違い無いだろう。
ミュータント化した原因は地脈の活性だろうが、ギガンテスワームに進化した原因は凶暴化して多数の魔物を喰らったからと考えられる。
眠りについていたのは、凶暴化の反動だろうか? ……もしかするとシャルロッテが何かしたのかもしれない。
ユーグランス王国内にも汚染の形跡があるかもしれないので、南東へ行く道すがら町や村をよくサーチして進むとしよう。
◇
《【王国クエスト】『封じられし邪心の咆哮』をクリアしました》
王宮の地下に不浄の気配を感じ、忍び込んで見た。
武装した警備兵達を掻い潜り、幻覚を駆使して入った広間にあったのは、1つの箱と青白い結晶の板、そしてそれへ手を組んで祈りを捧げる美女。
ざっと見たところ、この大広間には国中から不浄を搔き集める機構が施されていた。
集められた不浄やそれが凝り固まった負の力は中央の箱、清浄の聖櫃に流し込まれて浄化される。
それでも足りない時に備えて、生や聖、光の属性魔力を強化する負滅の聖板が用意されていた様である。
差し当たって溜め込まれた負の力をしゅわっと浄化し、広間の機構を軽く粉砕しつつ聖櫃と聖板を回収して、背中に突き刺さる視線を無視して転移した。
本来なら説明の1つもしてやりたい所だが、ちょっと急用が出来たのだ。
王宮の遥か上に転移すると、ちょうど南東で光の柱が立ち昇った所だった。




