第36話 残敵掃討
第四位階中位
終了と言いたいところだったが、その実まだ終わりでは無い。
とりあえず、最初に貰って以来使っていなかったポーションを爺様とザイエに渡す。
焼け石に水、程度でも多少の効果は期待しておく。
小瓶は回収、洗って使い回す。
さて、現在の戦力を把握しなければなるまい。
先ず敵だが。
地上には今、十万以上の不死者が徘徊し、瘴気を振り撒いている。
頭を叩いたので、溢れる瘴気は大分収まった物と思われるが、その実数が数だけに、未だ森を犯す瘴気は侵攻を続けている事だろう。
そして魔物も、リッチがいるのだから増え続けている筈だ。
あまり対策に長い時間を掛けては居られない。
最低でも明日中にリッチだけでも殲滅しなければならない。
続いて僕等側の戦力だ。
先ず、プレイヤーだが。
さっきの一件を考慮して考えると、タク達が呼び掛ければ三千人程集まってくれそうだ。
つまり十万以上vs三千少々。
……うん、まぁ蹂躙されるだろうね。
僕がどうにかするしか無い。
貢献度18%の恩恵は凄まじく、僕のレベルは大きく向上した。
配下の皆も相応にレベルが上がっている事だろう。
このまま打って出たとして、半分も倒せれば上出来といったところかな?
……いや、僕自体が強くなっているからもう少し倒せるかもしれない。
……まてよ? 強い個体をテイムすれば、このアンデッドの大群を併合出来るのではなかろうか?
併合出来なくとも、強い個体が味方に入ればそれだけ此方の戦力が増す。
出来なくともやる価値は大いにある。
最悪の場合、爺様とザイエを連れて逃げれれば、取り敢えずは勝ちである。やろう。
「爺様、ザイエ、まだ動ける?」
「僕は厳しいかな、魔法は使えない上、身体能力も十分の一以下くらいだ」
「うーん、俺もそんな感じかなぁ、今ならユキにも負けるぜ?」
どうやら戦えはするらしいが、あまり動かさない方が良いだろう。
最悪、僕が敵を足止めしてその間に逃げて貰えば十分だ。
「……え? ザイエって僕に勝てるの?」
「ぐっ! ちょ、調子に乗りやがって!! 勝てるぞ! ……多分………」
「……冗談だよ、今はまだ勝てない」
「今はまだ、ねぇ……こんな小娘に言われるなんて……修行し直すか」
「僕、男だよ」
「……は? …………いや、冗談か」
取り敢えず、ザイエと爺様を担いでデカスラさんの中にダイブする。
目指すは地上、リッチ・ロードとかのテイムである。
「おぉ、スライムの中に入るなんて初めてだぜ」
「案外快適だね」
「地上へゴー」
◇
道中、出てくるアンデッドを薙ぎ払いつつ、またもや大量に消費した魔水晶を補充する。
それら補給活動をしつつ、今回の戦いを省みる。
現界の第1試練:不死者の試練。
戦闘力は間違いなく今までで最強と言えるだろう。
肉体の地力は結晶大王蟹が上で、技量では古の不死賢王に軍配があがる。
だが、真に恐ろしいのはそこではなく、無数の死霊軍団を創造する力こそが古の不死賢王の真髄だ。
万全の結晶大王蟹と万全の古の不死賢王が戦った場合、軍団を持つ古の不死賢王が圧勝する筈である。
つまり、今回僕が活躍出来たのは、偏に爺様とザイエが古の不死賢王の圧倒的魔力量を引き受けてくれたからに他ならない。
今回手に入れたアイテムで僕が使えそうなのは、ローブと指輪と魂という名の涙滴型の結晶である。
メイド服の上にローブを纏い、指輪をはめる。
古の不死賢王の魂は結晶大王蟹の魂の横につけておく。
鑑定のレベルが足りないので、相変わらず装備の効果は分からない。
◇
暗い地下墓地を抜け、ようやく地上へ出ると、そこには大量のリッチ、デスナイト、巨人達がいた。
どうやら待ち伏せしていたらしい。
非常に不味い状況とも思えるが、逆にチャンスでもある。
何せ、一番強い連中がズラーッと並んでいるのだから。わざわざ探し出す手間が省けた。
周りを見渡し品定めする。
リッチ・ロード LV100
デスガーディアン・ロード LV100
最も近くに居たこの二体が一番強かった。
他は、
アンデットを無理やり合成した様な姿を持つ巨人達のレベル帯は、概ね80〜90程。
リッチは大体レベル80前後。
デスナイトの上位らしきデスガーディアンがレベル50程だった。
ささっと手前の二体を支配、テイムする。
「『不死者支配』『下級契約』」
無事成功した様だ、これは僕のレベルが上がったお陰だろう。
他にも、『古の不死賢王の支配指輪』が何やら反応していたので、支配関係のスキルを援護、強化する効果があるのだと思われる。
「ぬ? 急に意識が鮮明に……なんじゃこの状況は!?」
「むむ? これは……私は一体どうなったのだ……? 此処は……? 私は……死んだ筈だ……」
テイムが成功した瞬間に急に喋り出した二体。嗄れた声で生前の性別は分からない。
取り敢えず挨拶しておこうか。
「やぁ、ユキだよ。今から二人は僕の配下だが、悪いけど説明している暇は無いんだ。『命令』アンデッドを殲滅せよ」
「ふむ、確かに話している暇はなさそうじゃわい、皆の者行くぞ!」
「その声、ルーレン殿か。では私も行かせて貰う! 続け!!」
話が早くて助かるが……僕は確か二人をテイム、命令した筈。
その二人の近くに居た多くのアンデッドが二人に続いて他のアンデッドを攻撃し始めているのだが……。
うむ、概ね作戦通りだ。流石僕。
「さて、皆も散開して敵を殲滅してくれ。僕は大物をやる」
これは第五ラウンドってところかな?
◇
《レベルが上がりました》
墓地内部の掃討は大量の魔水晶を代償に手早く済んだ。
新しいスキル『古の不死賢王の御霊』は、魔力の感じから、カルキノス同様身体能力が向上し、尚且つ、自己治癒能力が極端に上昇する効果があるらしい。
また、バフ、つまり補助効果を味方に与える能力もある様だ。
補助効果は使用者の能力に関係する様で、素の状態で発動させると皆が僕みたいになる。
素早く、敵の急所を、破壊する。
何と、此処にカルキノスを上乗せする事が出来た。
つまり、カルキノス発動状態の僕の力を指定した対象に付与出来ると言う事である。
勿論これをした場合は魔力の消費スピードが跳ね上がり、完全充填済みの魔水晶を使っても数十秒で魔力が切れてしまう。
だが、その分の見返りは十分にある。
僅か数十秒の間に、アンデッドの大軍は一気に数を減らした。
特に、飛んでいる奴や巨人なんかは良い的で、能力が途切れた時には敵の主力は壊滅状態だった。
後は簡単な片付けだけ。
中々良いスキルを手に入れたものだ。
◇
遺跡の主戦力の多くを掃討したが、未だに墓地の地下からゾンビやスケルトンが溢れ出している。
まぁ、瘴気の源になっている強力なアンデッド達はうち払ったので、これ以上森が死ぬ事は無い筈だ。
今日はもう撤退しよう。
寝る時間だ。
「僕もう寝るから、皆は王都へ向かってね」
「ウォン!」
勿論、アンデッドの皆は送還してある。
「クローズゲート」
ゲームを始めて6日目。
一番長い日が——
——今、終わった。
・遺跡の攻略 完




