第167話 リベリオン全滅
第五位階上位
戦後の各種処理について黒霧に指示を出し、生物資源その他の教育や死傷者の治療を行ったり、事情説明を含むお話しをした。
次の戦いに備えて一時休憩を取っていた時である、その一報が黒霧から報告されたのは。
——リベリオン全滅。
敵は黒い小型の人竜型。
◇
「……なんだ、焦って損した」
流石に邪神の断片に殺されるのはマズイ、と慌てて転移して来たが、目の前にいたのは——
悪魔竜 ベルゴ LV?
ミルクリス・ターザハルダ LV3
——悪魔獣の上位種と拘束具を付けられた幼女だった。
ざっと周りを調べると、どうやら此処は城塞都市の城内部にある謁見の間。
大きな窓から差し込む日の光に照らされ、血の赤が妙に鮮烈だった。
——リベリオンのメンバーは惨殺されていた。
綺麗に並べられた小さい方と、無造作に転がる大きい方。
大きい方は折れていたり穴が空いて中身が溢れていたりするが、小さい方は皆綺麗なまま。
その傍らには、無傷の黒霧の端末が死んでいた。
唯一居る2人の生者を調べる。
内片方は、悪魔獣の上位種が進化した物と思われる悪魔竜と言う種族の魔物だ。
名はベルゴ、魔竜の悪魔王ベルゴである。
そして、そいつの魂魄の中に、リベリオンのメンバーの魂が収まっている。
——喰われたのだ。
どうやら黒霧の方は装備や所持品ごと殺されたらしい。
霊魂結晶はただの結晶になっていた。
とりあえずリベリオンのメンバーは無事だ。
事前に覚醒処理していたので、如何な悪魔王とは言え消化にはまだ時間が必要だろう。
拘束して切り開いて取り出せば良い。
問題はもう1人の方。
——黒霧を殺した幼女だ。
軽く見た所、間違いなく、彼女には死神の因子か加護がある。
全身を拘束され十字架の様な物に括り付けられているその幼女は、レベルこそ低いもののその魂に凄まじいエネルギーの塊を有していた。
それこそ、無数の転生者などから力を奪っている簒奪王カインをも優に超えている。
妙な力を使われては面倒なので、即座に幼女の意思を刈り取っておいた。
「っ!? ……貴様、何者——」
『集合』
此方に気付いたベルゴの誰何を遮り、それらを召喚した。
私……いや、僕の背後に現れたのは、6人の精霊帝と10人の黒霧。
「黒霧5人と精霊達はベルゴを拘束、残りは幼女……いや、死神の拘束で。逃がさないでね?」
ユラリと出現した死神とそれを幼女から呼び出したベルゴ、両人との戦いが始まった。
◇
ベルゴの方は、瞬きの一瞬で終わった。
魔覚を用いたからだ。
幸い黒霧は常に僕と深い所で接続されており、その演算力は魔覚の領域には遠く及ばないものの使えない程では無く、僕自身の負担は比較的少なく済んでいる。
使ったエネルギーは、一番近くにいた精霊帝達。
従魔術のコントロールで接続し、勝手に体のマナを使用させて貰った。
流石に邪神戦の後で膨大なエネルギーを使用する事になってしまったので、彼等彼女等には幼児化が必要だ。
幸い魔力に溢れる場所はある、と言うか作れるので、半日もすれば充分回復するだろう。
使用した膨大なエネルギーは一瞬でベルゴを包み込み、肉体と同じ形をした魂魄ごと結晶化した。
後はインベントリにポイである。
状況が落ち着いてからゆっくり解体してくれる。
一方死神の方は、思ったより余力があったので魔覚の状態で完全解析を行った。
どうやら死神はめーたんの二重人格スキルとノリヒコ君の鬼人召喚スキルを足した様な能力であると判明した。
要は、魂魄内に根元を同じくする別の人格の魂魄があり、それは現実にもう一つの体を生成できるのである。
弱点は、生成されたもう一つの肉体がインスタントな物で数十分もあれば消滅すると言う点。
更に、本来であれば魔力を消費する所を、この幼女は足りない分を自らの命で賄い死神の肉体を生成している。
致命的と言って差し支え無い程の弱点だ。
死神自体は、死神の因子こそ持っているが純粋なあの死神では無く、因子自体が成長した別の死神だ。
また、幼女の方は転生者である事が確定したと同時に、弱冠5歳そこ等で覚醒転生者に自力覚醒していた。
絶望が彼女の願いを歪め、抑制を取り払ったのだ。
何が起きたかを簡潔にまとめると、強過ぎるユニークスキルが定着したと同時に暴走して家族や使用人を虐殺してしまったのだ。
そこに潜伏していた悪魔が追い打ちをかけ、幼女の心は折られてしまった。
刻み付けられた罪への逃避と死神の力が合わさり、彼女の魂魄の中で前世と今世の繋がりが殺され、前世の彼女は引き篭もり、今世の幼女は壊れた人形の様に虚ろな存在となった。
と言う訳で、僕が行った事は3つ。
記憶のコピーと、記憶の消去、そして教育。
その結果生まれたのが、致命的な記憶が抜けて基本的な常識だけが残った記憶喪失の幼女、ミルクリスちゃんと、全てを覚えていながらも全てを受け入れて立ち上がる事が出来る様になった死神、青葉このみさんだ。
また、ユニークスキル自体も成長方針を誘導して成長を促し、生成した死神を魂魄に戻せる機構とそれを入れておく事が出来る余白を構築した。
魔覚を解除すると、直ぐに死神が進化の光に包まれ、光が収まると、死神の能力と装備はそのままに前世と今世が混じり合った様な姿のこのみが現れた。
差し迫った脅威と問題は排除したので……今日はもう休もうかな?




