第163話 収穫
※760万PV達成
第五位階上位
バーチス君の捕獲は比較的簡単に済んだ。
どうやら前線の小砦で戦闘が始まった事は気付いた様で、逃げ出す準備をしていたが、背後に立つ私には気付かなかったらしい。
私も天帝竜程ではないが、それらと関わった事で隠密能力は大分高くなっている。
気付かないのも宜なるかな。
バーチス君に隷属していた合成獣は、その殆どが寿命の短い不良品なので、特に崩壊が近い者は介錯しておいた。
そうこうしている内に、配下の子達に侵略させていた魔物小砦も無事制圧が完了したのである。
6つのクエストをクリアして入手したのは、スキルポイント14P。神子結晶14個。旗20個。大量の魂魄と一部の合成獣や魔物に数名の帝国軍人とバーチス君。
次の獲物は、禁忌の魔女ヤカルナと人形劇のアーシア。
彼女等を捕獲した後は、槍仙と弓仙だ。
◇
砦の解体は黒霧に任せ、5人いる精霊帝と黒霧の端末に悪魔のいる大砦を任せた。
他の子達は邪神の断片の封印を捜索させている。
風の精霊王がいるであろう場所は既に目星が付いているので、邪神の断片を発見し次第回収しようと思う。
先ず最初に私が捕らえるのは、ヤカルナ・プリエール。
彼女はバーチス君同様戦いの気配を感じ取っている様で、魔物達を動かし始めている。
対する人形劇の方は優雅に食休み中なので、後回しで良い。
誰にも気付かれない様大地に降り立ち、手を伸ばせば届く場所に立つソレを観察する。
腰まである長い白髪は、荒野に降り注ぐ強烈な光の雨を受けて光沢を放ち、特に属性変化していない瞳は珍しくもない蒼色。
……まぁ、私は好きだけどね、青系統。
身長はそう高くなく、手足のリーチは相応に短い。
ゆったりとした白いローブの下には、詠唱短縮の為か無数の刻印が刻まれており、所持している金属の杖は、希少金属の光鋼製。
バーチス君と比べると、ヤカルナさんの方がスペック的に優っている。
ただし、負の侵食はヤカルナさんの方が進んでいる様だ。
「『命令』進路、オグザ砦。オーガ隊は防衛に残りなさい……さて、早く終わらせて研究を再開しなくては」
「まぁ、直ぐ終わるよ」
「そうだと良いのですが……と言うか貴女また声が…………!? っ!?」
ヤカルナさんが物凄くびっくりしている内に、魔物の処理を進める。
既に降り立った時点でその多くは物言わぬ骸となっているが、彼女は気付いていない。
ついでに何名かいる帝国軍人等を拘束したところで、ヤカルナさんが手に持つ金属製の杖を振るって来た。
捕まえるのは容易いが、それを紙一重で回避し、その間に大きくバックステップして逃げたヤカルナさんを見送る。
「『命令』アレを捕らえなさいっ!」
乾いた荒野の空に、少女の声が響いた。
しかし、それに応える者はいなかった。
「……っ!? ……う、嘘……そんな……」
茫然自失となった、やたらと隙の多いヤカルナさんを念動力で絞め落とし、これにて此方の砦にあった最大の脅威を取り除いた。
最後に、要注意人物の確認だけして次の砦に移るとしよう。
件の要注意人物は、先進技術を用いられた冷暖房完備の馬車の中に、手厚く保護されている。
中の人物は既に気を失っているので、遠慮なく扉を開け放つ。
中にいたのは——
ヤルルカ・プリエール LV62 状態:休眠
橘 章 LV7 状態:気絶
——鑑定が二重に表示される人物。
見た目はヤカルナを金髪にしてやや幼くした容姿をしている上、名前から見ても肉体の因子から見てもヤカルナの親族である事は間違いない。
その肉体には、ヤカルナの妹と思われる人物の魂と同時に、全く別の因子を持つ転生者の魂が入っていた。
それも……何と言うか、かなり不自然な形で両方の魂が歪んで接続されている。
何がどうなってこんな事になったのかは知らないが、章氏の魂とヤルルカの肉体は上手く適合しておらず、ヤルルカの魂とヤルルカの肉体もまた接続が半ばで途切れている。
肉体を動かしているのは章氏の魂であり、肉体に魂を定着させているのはヤルルカの魂。
ざっと見た所、両者は魂が分離不可能な程絡み合いつつも記憶は共有されておらず、余程条件が揃わない限りは感情のみが交信したり共鳴したりする程度の様だ。
詳しい事は後で解析するとして、今の時点で分かった事は1つ。
彼女等は、奇跡の様なバランスの上で生存しているので、並大抵の技術で弄ればたちまち瓦解して死んでしまうだろう。
ヤカルナの研究というのは、魂魄の研究の事だったのだ。
『禁忌の魔女』なんて呼ばれる訳である。
◇
アーシア《鳳凰院 結鶴瑠》 LV82
人形劇のアーシアは……全く戦う事なく捕獲出来た。
年齢にしておよそ10歳くらいの彼女は、朝食後の食休みから二度寝に移っていたからだ。
勿論、防衛のドールやゴーレムもいた上、数十名に及ぶ侍女が付いていたが、多少訓練された程度の人形など物の数ではなく、侍女達に至っては少し問答しただけで眠るアーシアを引き渡してくれた。
侍女達に聞かれた事は1つ。
——貴方は帝国に勝てますか?
強い諦念の中に確かな覚悟と僅かな希望を持った瞳で此方を見詰める彼女等に、『あと5日で終わるんじゃないかな?』と言う言葉と共に圧縮情報パックを送信した。
こうして、人形劇のアーシアとその配下の人形、アーシアファンの侍女達を捕獲……と言うか保護する事となったのである。
これにて、砦の侵略は完了。
得られた物は、スキルポイントが合計34P。神子結晶が34個。領域の御旗が46個。
魔物、悪魔獣、合成獣の魂魄およそ20万匹分。
転生者2,000と少々に、帝国十傑の『超念力』『雷霆』『人形劇』『禁忌の魔女』『キメラマスター』の5人。
低級悪魔王とその配下の悪魔が200名程。帝国軍人やその従者などが500人少々。人形劇の配下が3万に、後は一部の魔物や悪魔獣、合成獣が3万。
クエスト報酬は兎も角として、大量の生物資源、魂魄資源を得られた。
生きてる方は迷宮に送り催眠教育、魂魄はうーたんのアメ工房に送り順次飴にしている。
それじゃあ最後の獲物を刈りに行こうか。




