第158話 最終日 三
第五位階上位
《【伝説クエスト】『拳道仙』をクリアしました》
《【大陸クエスト】『火巫覡』をクリアしました》
精霊人 アニス・アンスタン LV333
入手したアイテムは『仙拳・本能』。火の晶珠1、欠片10、純結晶100個。
スキルポイント3P、神子結晶3個。
2人とのお話しは無事完了し、1人の仙人と進化した精霊帝が仲間に加わった。
両者の話を聞いた所によると、アニスとヴェルガノンは直接の面識こそ無いが、ヴェルガノンの姿形は祠を開けて確認済みらしい。
アニスが魔の領域に入った理由は、精霊王のジャミングがちゃんと作動しているかの確認と、邪神の断片の封印に綻びが無いかの確認の為。
何故にその旨をナーヤに伝えなかったのか聞いた所、『あたしが一番強くて一番賢いから、師匠も他の奴には確認の必要があるとは言わなかったんだろうな!』との事。
まぁ、確かにレベル200前後で停滞する程度の人材では邪神との戦いには参加出来ないし、いざ戦いになっても肉壁にしかならない。
その点ナーヤはかなり頑張った物だと褒めてあげたい。
おおよそ十年程前に魔の領域に入ったアニスは、火精王の妨害結界を確認し、ついでに祠を掃除してから祠の前にお供えをして最後にもう一度挨拶して次の目的地に向かったらしい。
一見粗野に見えてかなり礼儀正しい様である。
その後、次の目的地である邪神の断片の封印場所に向かう途中で、アニスと同格の力を持つ甲殻人の負の化身と遭遇、これを周囲の生属性魔力を用いて撃破し、瀕死の重傷を負ったアニスは人の領域に帰還しようとして……落ちて死んだらしい。
話がひと段落ついた所で、ヴェルガノンが腕を組みながら話し掛けて来た。
「ところでアニスよ、我が名を継ぐ気はないか?」
「え? ごめんなさい。あたしまだ結婚する気ないです」
「は? いや、そうではなくてだな……おい、ユキよ、何とか言ってくれ」
何故此方に振るのか……説明が面倒くさいだけか。
ともあれ、アニスに信仰と名前の関係について軽く説明する。
水精女帝のハイネシアさんから聴取した話では、ハイネシアが水の女神、アルケレーネが船乗りを助ける海の女神、ウィーナディーアが豊穣をもたらす雨の女神で、ルゥスリシュは大陸南東にある巨大な湖に住む水精の名、ナイオニスはナイオニス大清流の水に関する超越存在を祀られる事で得た物なのだとか。
次いで、火精帝王のヴェルガノンから話を聞くに、ヴェルガノンは火山の神、ユースは砂漠で蜃気楼を見せる陽光の瞳神、カーレニエルは大火の女神、ヴェスミシスは鍛治の炉の女精霊で、フォルナはたき火や篝火の女精霊に対する信仰で出来ているらしい。
結局アニスはユースの名を貰い、対外的にはアニス・Y・アンスタンと名乗る事になった。
◇
朝食の席では、様々な騒動が起きた。
例えば、ナーヤがアニスに抱き付いたり、アニスが生身のクラディとゼーレを見て目を真ん丸に見開いたり、ヴェルガノンが紅花に名を継がせようとして白夜と口論になったり……後は、ちょっと魅了封印が足りない事もあったかもしれないが、些細な事である。
本日の朝食は其々が好きな物をと言う事になっていたが、大体の子は見た目の10倍以上入るので、隣の芝生が青く見えたら取り敢えず食べる様な状況だ。
幸いにして食料は随時補充される作り立てがインベントリ内に入っているので、足りなくなる事は向こう100年無いだろう。
騒がしい朝食を終えたら、次は緊急性の低い情報の確認と整理だ。
先ずは魅了封印の新たなる装備について。
此方は、イコルを増量した包帯を服の下にも巻く事で対応した。
ついでに、後回しにしていた髪留めも作成し、雪の結晶を模したそれを顔の左右に装着した。
頭頂にティアラ、顔の左右に髪留め、首にチョーカー、黒or白のゴスロリ服に右腕だけの手套、包帯でグルグル巻きの体にいくつかの指輪、ハイニーソックスと改造型天駆の靴で、ようやく魅了を完全封印する事が出来ている。
ここに仮面をつけていると、もはや不審者である。
少なくともリベリオンがこのゲームの主旨にどの程度関係しているか分かるまでは、転生者の鈴ノ宮真白を演じる必要がある。
リベリオンがゲームクリアに必要なら私として最後まで戦い、不要なら僕として全てを呑み込む。
その為の力は……まだ、足りない。
……続いて、獣人の中の転生者達について。
黒霧の解析結果によると、獣人の中で魂魄に破格のエネルギーを蓄えていたのは3人。
珍しい砂色の肌に金の髪と瞳を持つ山羊獣人の幼女。同じく珍しい、肌から髪から瞳まで真っ白の羊獣人の幼女。同じく珍しい黒髪黒角の犀獣人の幼児。
この3人は、確認した所間違いなく転生者であった。
ただ、やはり記憶が殆ど残っておらず、ユニークスキルは持っていない。
幸いと言って良いのかは今一だが、山羊の子は心の成熟の速さや砂色の肌が気味悪がられ、羊の子は真っ白なのが気味悪がられていたので、回収交渉は簡単に済んだらしい。
何でも、『我々の様な親失格のクズに育てられるよりは主様のお膝元にいる方がずっとこの子の為になりましょう』、と涙ながらに語ってくれたらしい。
どうやら両獣人の親達は贖罪を望んでいる様なので、しっかり職務に励む様黒霧に言伝しておく。
尚、サイの方は、武人気質の両親と5歳ばかりの子供が、『死に別れる覚悟はとうに出来ております、どうか、どうか息子をお願い致します……!』『よろしくお願いします!』、と言った風に頭を下げて来たらしい。
取り敢えず死に別れなんてさせてたまるかと言わせて貰おうか。
勿論、彼等はいつでも会おうと思えば会える様になっているので、今生の別れとかではない。




