第150話 休日の様な 〜2日目・午後:灼海〜
第五位階下位
昼食後、黒霧から幾つか現状の報告を受けた。
先ずは重要度の低い物から整理する。
各種生産設備には特に問題なし。
金属生産は施設カテゴリーの『極大鉱脈』を1万基設置した大量生産を行なっており、生産量は毎秒30kg。毎日2kt。
このままだとイヴ・イコルの生産で1日分が瞬時に溶けてしまうので、おそらくあるであろう邪神との最終決戦に備える為にも、今の10倍生産する様に指示を出した。
幸い魔力には困っていない。
大量の迷宮核を使用して広範囲の地脈から魔力を汲み上げている上、迷宮核は未だ増加中なのだ。
その他の資材生産は一定量を保持。各種消耗品は自動生産ラインにより大量生産中。
一部の高位アイテムは、自動生産ラインはあるが生産量は少なめに抑えており、それよりも更に高位のアイテムは今の所自動生産ラインを作っていない。
続いて教育方面。
此方は、催眠教育と実技訓練を行い、僅か数日ながら十分な成果を得た。
特に、各支店の店員担当は本日中にも教育が終わるので、明日にはスノーブラックのお店を稼働させる事が出来るだろう。
戦闘担当はもう少し訓練と実戦を経る必要がある。
こればっかりは上限がほぼ無いので、ある程度の強さで妥協するしかない。
大雑把な教育内容は、先ずは配下基本情報パックを入れる。
その後、各人毎に欲望を刺激し、その実現や妥協に向けた、私に都合の良い道筋を匂わせる。
最後に、各役職に見合った最低限度の教育を受けさせる。
知恵を与え、願いを自覚させ、力を与える。以上3点を持って、大体の場合は理想的な配下が完成するのだ。
元から力がある連中には特別カリキュラムを受講させる。私より格上じゃない限りはこれで十分対応可能だ。
次、リベリオンが関与する問題。
此方は、リベリオンに借金を背負わせた故に起きた当然の事象である。
要は、借金背負って休むとか落ち着かないと言う事だ。
そんな訳で、彼等にはバイトをして貰う事にした。
配下を派遣して共和国内を捜索、発見した迷宮を依頼としてリベリオンに探索させる。
小迷宮は100万MC、中迷宮は400万MCだ。
態々事後承諾の借金を払おうとする律儀な彼等には、依頼毎にしっかり支給品を配布しよう。
そして最後、重要な情報が1つ。
——東方戦線についてだ。
西方に比べて国の数も多く、侵攻するのに質と数が求められる東方は、帝国が持つ全戦力のおおよそ半分が投入されている。
その半分の内、数に相当するおよそ80万の兵士が撤退を開始したのだ。
『黒雷』を数機飛ばして得た情報によると、東方に向かっていた戦力は、純粋な帝国軍人は20万程、奴隷や徴兵された兵士が30万、隷国の軍人や兵士が30万。
その他、転生者部隊が1,000人。十傑の1人『人形劇』が率いるドールやゴーレムの集団が3万。隷属の首輪で使役された魔物部隊が8万。合成獣が5万。悪魔と悪魔獣が10万となっている様だ。
撤退を開始したのは前者の80万人で、広域に散らばっていた兵士達が引き潮の如く帝国首都へ下がっている。
それに伴い、積極的な攻めを行っていた残り16万の軍団は各地の砦で防備を固めている様だ。
撤退理由については……心当たりがない事もない。
何せ、3人もの強者を逃しているのだから。
それも、内1人は『簒奪王』と呼ばれる転生者最強の戦士であり、そいつは転移魔法を使う事が出来るのだ。
大方西方侵略が失敗した事を受けて慌てて首都へ人を掻き集めているのだろう。
東方に戦力を残したのは、挟み撃ちを警戒しての事と考えて間違いない。
そして、これは又とないチャンスでもある。……精鋭16万を一気に鹵獲する。
取り敢えず後1日くらい放置すれば、帝国の大軍隊が十分に離れるので、今日明日は予定通り戦争はお休みとしよう。
◇
共和国の捜索。支店の整備。ウィゼル層迷窟の侵略命令。他。
各種指示を出し終え私が向かったのは、魔割山脈を越えた先、灼海。
目的は、灼海にいると思わしき六王の確認と、あわよくば領地や資源の確保、既に討滅されている負の化身の封印を確認したり、ジャミング精霊王を解放&拘束したりだ。
そんな目標の元、氷に閉ざされた山脈を通過している際、ふと強い気配を感じたので周辺を探索した所、幼女の死体を発見した。
その幼女は、体に傷こそ無いもののボロボロの服を着ており、周囲の状況から考えると……戦いの果てにクレバスへ落ちて力尽き、凍り付いたものと考えられる。
幸い幼女は凍り付く事で半ば封印された形となっており、その魂に損害は無かった。
アニス・アンスタンの死体 品質? レア度? 耐久力?
備考:アニス・アンスタンの死体。氷漬け。
拳仙、アニス・アンスタンを手に入れた。
ナーヤの話だと、アニス・アンスタンは魔割山脈に入ったっきり帰って来なかったと言うじゃないか。
間違いなく死んでいるものと思っていたが、体も魂も朽ちない形で死んでいるとは中々運が良い。
もしかするとそれが狙いだった可能性もあるが、それは後日本人に聞くとしよう。
そんなこんなで魔割山脈を越えると、遠目に見える広大な灼海が——戦場になっていた。
◇
灼海は全体的に緩やかなすり鉢状の地形をしており、西からは海水が、東からは淡水が流れ込む汽水域となっていた。
常に湯気が立ち上り、特に中央付近は沸騰している所が見受けられる。
そんな灼海では、一体の巨大な赤い蟹と複数の人型ロボットの様な物が激戦を繰り広げていた。
流石に距離があって鑑定自体は出来ないが、目視でも地形データが更新される地図スキルと併用する事で鑑定は可能である。
それによると——
精霊蟹 LV141
火精蟹 LV159
ヴォルケーノ・ジェネラルクラブ LV128
火精結晶蟹 LV253
? LV?
シン LV8
四つ葉 LV6
ジョン二号 LV8
Kinako LV6
田中さん LV7
——どうもプレイヤーがいるっぽい?
詳しい事は分からないが、レベルが低いのに蟹達と渡り合っていられる理由は、装備のおかげだろう。
見たところプレイヤーらしき集団は、全員が全員魔導鎧を装備している。
それらの精鋭と思わしき連中と戦っている巨大蟹は、おそらく結晶王蟹の属性特化種族であり、邪神を封じている六王の一柱だと推測される。
取り敢えず蟹に助太刀しよう。




