第34話 賢者の師
第四位階下位
扉の先は広い空間だった。
天井が高く、入り口から奥まで幾つもの柱がある。
壁や天井に魔法文字が刻まれていて、どうやら先程の弓の結界とリンクしてこの部屋を封印していたらしい。
最奥は階段状の作りになっており、言うなれば謁見の間、と言った所だろうか?
普通なら玉座がある場所には大きな金属製の棺桶がある。
そしてその前に——
? LV?
「リッチ……?」
ローブを纏い、黒い宝玉がついた杖を持っているそれは、草原で戦ったリッチに似ていた。
ただし、感じる威圧感、魔力量とその質は竜にも劣らない。いや、むしろ竜を遥かに超えている。
「ユキ、あれがアンデッドの親玉だぜ、気を付けろよ?」
そう言うとザイエと爺様は柱の間をゆっくりと歩き始めた。
アンデッドはそれが見えているのだろうに、悠然と構えている。
心なしか首を傾げている様にも見えるが、一体何を考えているのやら。
「よぉー、久し振りだな糞ジジイ! 見ないうちに随分とボケやがってよぉ」
「師匠! こんな事は今直ぐ止めてください!」
驚愕の新事実が明らかになった。
この骸骨、何と爺様とザイエの知り合いで、その上師匠らしい。
そりゃあ強い訳だ。
骸骨は合点が行ったと言う様に一つ頷くと、嗄れた声で言った。
「ほぉ、見覚えがあると思ったら。デュナーク、ザイエ、それにその小さいのはミシュカか、いやはや懐かしい」
デュナークとザイエは分かるけど、ミシュカって僕の事?
「エイジュとマリテュールは居ない様じゃが、まぁ、後で迎えに行けば良いか」
そこまで言うと骸骨は杖を突き出した。
「さぁ、我が軍勢に加わり救いなきこの世界を共に終わらせようぞ!!」
急激に魔力が高まり、黒い槍が飛来した。
洒落にならない量の魔力が込められた三本の槍は、それぞれ、僕、爺様、ザイエを狙っている。
それに対して動いたのは爺様だ。
此方も洒落にならない量の魔力が込められた四本の白い槍を飛ばし、内三本は黒い槍とぶつかり合い相殺、一本は骸骨の張った魔法の壁に当たり、罅を入れるも防がれた。
瞬時に骸骨に接近したザイエは、骸骨が壁を修復する前に、爺様が当てた所と同じ場所を殴りつけ壁を破壊。
その勢いのままに骸骨に殴りかかった。
ザイエの拳は骸骨の骨の拳とぶつかり合い、そして——
「ゴフッ」
ザイエが血を吐いた。
武術的な物ではなく、魔法的な攻撃を受けたのが分かった。
ザイエの体内魔力に一部骸骨の魔力が混じっている。
「ゲホッ……やっぱりジジイの拳は効くなぁ……くそ!」
そう言いながら、ザイエは骸骨と拳の殺し合いを始めた。
一撃一撃が必殺の威力を持った拳撃の応酬は、周囲に破壊の嵐を巻き起こす。
時折お互いの攻撃が当たれば、ザイエは血を吐き、骸骨は嗤う。
その間、爺様も魔法攻撃を繰り返すが、悉く相殺されている。
化け物達の戦いはしかし、列然としたら戦力差の元、危うい綱渡りをするかの様に続けられていた。
「よし、そろそろ行こうか」
僕は骸骨へ向け歩みを進める。
何せこの骸骨、人間の動きしかしないんだもの、ね。




