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【書籍化】錬金術師ユキの攻略 〜最強を自負する美少女(?)が、本当に最強になって異世界を支配する!〜  作者: 白兎 龍
第?章 Another Chronicle 第一節 叛逆の追憶記

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第135話 人の良い狼

※680万PV達成


第五位階下位

 



 閃光が悪魔獣の群れへと降り注ぐ。


 120匹のクレヴィドラグがその両鋏を前へ向け、240の光撃が悪魔獣の大群を焼き払った。

 近ければ近い程威力を増す光系魔法を前に、悪魔軍は接近する事が出来ず、頼みの綱の魔法も茉莉花への攻撃で魔力が心許ない状況だ。


 悪魔軍にクレヴィドラグの進軍を阻止する方法は無い。



 ……まぁ、クレヴィドラグもクレヴィドラグで魔力が殆ど残ってないけどね。

 張子の虎でも威圧するには充分なのだ。



 南方からクレヴィドラグが迫る一方で、東方では2人の黒霧とレスタが暴れ回り、実に安定した殲滅戦を行っていた。


 レスタは他の子達同様に魔力切れ間近だが、黒霧の端末は現在迷宮とゲートで繋がっているので、精神力は兎も角魔力が尽きる事はない。

 刺さると爆発する魔法の槍が雨霰と降り注ぎ、逃げる事すらままならない凄惨な現場を作り出していた。


 端末の装備は黒霧が生産出来る範囲内の武具であり、現状では精霊金属が使われている。

 能力的には若干型落ちだが、敵の格が低いので今のところは問題無い。



 殲滅戦で一番混戦になっているのが西方だ。


 敵陣半ばまで三聖獣が突っ込み、白夜が強い個体を積極的に撃破。紅花とクラウ一味は弱めの敵を拘束して後方へ流しており、後方ではキースの指揮の元バトルモンキー達が敵を処理している。

 レッサーデミアジムスのイヴもどきちゃんは、上空で敵軍を見下ろしエネルギー系の武装、もとい魔法で味方を徹底援護していた。


 少し危なっかしい所もあるが、放っておいても大丈夫だろう。



 獣人連合がいる北方は、守護を任せた睡蓮が狐化し、20個の狐火と共に壁を形成して敵の進軍を一切許さない。



 南と西はまだ抜けられる危険性があるが、あと少しで茉莉花の束縛も解けそうなので、間も無くこの国での戦争も終結するだろう。

 監視の必要はもう無い。


 と言う訳で、私は此方に向かって来ている狼の群れとお話ししに行く事にする。





モンデシウル LV228


ホワイトウルフ・ロード LV76


グレーターシルバーウルフ LV65



 モンデシウルは真っ白な狼だった。


 その子供らしき他の狼達は、レベルが高い者は真っ白で低い者は少し違う色が混じっている。

 そんな中に、一匹だけ銀色の狼が混じっていた。


 しかもその狼はウルル似である。



『そこな狐の娘。我はこの地を統べる者峰大神(モンデシウル)なり。我が領域を侵す不届者供はどうなっている? 力添えは必要なのか?』



 ひたひたと草を踏みしめ前に出たモンデシウルは、張りのある女性の声でそう問うてきた。


 それに対し私は優雅にカーテシーなどして挨拶してみる。



『初めましてモンデシウル、私は鈴ノ宮 真白。この地より遥か北西の森で王の様な事をやっている。助太刀は不要だよ。じきに片付く』

『ふむ、他国の王が何故この地に……いや、先ずは礼を言うべきか』



 モンデシウルは一拍おき、居住まいを正して言の葉を並べた。



『救援、感謝する。スズノミヤマシロ。其方等がいなければ我が友や子等がどれ程その命を散らしていた事だろうか。我が誇りにかけてこの恩には必ず報いると誓おう』



 ふむふむ、恩には必ず報いる。ね。この狼さんは救国の恩にはどの様に報いてくれるんだろうか?

 彼女は最後には勝てたと思ってるみたいだけど、放っておけば皆殺しにされてた事は間違いないし、その対価は勿論……命だよね?



『うん。取り敢えずその話は敵を殲滅してからにしよう。何せ国と国との正式な取引だ。私達が掛けた命を不当に安く買い叩かれては困るからね』

『む……我が誓いを違える。と、其方はそう言いたいのか?』

『生憎と私と君は初対面でね、誇りにかけてと言われても信用出来ないんだ』

『む、むぅ……確かに、その通りだ……し、しかし我は我が同胞を救った恩義を反故にする様な恥知らずではない! ……つもりだ』

『うんうん。私もそうであって欲しいと願っているけど、それを証明する物が無い。……ところで私は契約魔法と言う物が使えるんだが——』



 と、その様なやり取りを経て、契約魔法を行使する事になった。


 内容は至極分かりやすい。

 『此度の戦における戦功に対し、モンデシウルは善性に基づき正当な対価を支払うことをここに契約する。万一契約を違えた場合、モンデシウルとその眷属は命を持って罪を償う事を宣誓する。』といった内容だ。


 魂の力を少しだけ用いた強い強制力を持つこの契約は、レベル200代程度で抗う事は出来ない。



 この契約は本当にモンデシウルの善性による所が大きいので、モンデシウルが救国の対価をドングリ一個と本気で思っていればそれが正当な対価になる。

 まぁ、人が良いこの狼さんは本気で正当な対価を支払うつもりらしいけどね。


 それ故この契約は、モンデシウルが不当に安く買い叩く事は出来なくとも、私が不当に高く売り捌く事は出来る仕様となっている。


 また、契約違反の罪に対する罰の決定権は私に委ねられており、このまま行けば対価も魂、違反しても魂である。

 私に会ったのが運の尽きだったな。モンデシウル。



『これで契約成立だ』

『うむ! ……ふふ、其方はとても良い人の様だな』



 喜色満面の声が聞こえた。

 善性に基づきと言う点が評価されたのだろうか? 善性に基づく必要があるのはモンデシウルだけなんだがね。



『……そう思う?』

『ふふふ……必ずや我が善性の元其方に報いると誓おうぞ』

『うん。そうして』



 モンデシウル。人が良い上に楽観的だ。良く今まで騙されなかったね。やっぱり運が尽きたのか。


 モンデシウルは満足気に頷くと、スッと視線を私から逸らし、桃兎姉妹を見た。



『ところでスズノミヤマシロ、その兎の娘達なのだが、もしや迷い子の兎ではないか?』

『おそらくそうだろうね』

『そうか……無事で良かった……拙速で悪いが彼女等を兎の氏族の元へ帰してやってはくれないか? 彼等はとても心配していた』



 嬉しそうにそう言うモンデシウルには悪いが——



『——それは出来ないお話しだね』

『……な、なに? 何故なのだ?』

『彼女等はその魂を代償に私へ救済を願った。既に契約は履行され、彼女等は血の一滴、骨の一欠片、その魂までもが私の物。帰るべき場所は私の元をおいて他にない』



 モンデシウルはしばらく絶句した様に固まり、ふいに怒気の感情を振り撒いたが、それは言葉になる前に沈静化した。

 彼女にとって幼い子供は助けて当然の存在なんだろうね。



『……そ、そうか……ならば契約に一つ追加をして欲しい』

『聞こう』

『此度の戦に関する救済者を我が善性に基づき正当な対価を払う事で解放する事を誓って——』

『——それは出来ない』

『っ! な、何故だ!』



 聞いただけだから。


 ……などと言う言葉遊びではなく。そもそも私はこの桃兎姉妹の未来性を買っているのであり、何ならモンデシウルみたいなちょっと強いだけの狼なんかよりもずっと価値がある存在だからである。

 つまりはモンデシウル程度にこの2人の正当な対価を支払える筈がない。



『はぁ……分かっていない様だから言ってあげるよ。……君は子ウサギ二匹の対価くらい簡単に用意出来ると思ってるみたいだけど。この2人の魂はそんなに安い物ではない』

『っ!? そ、それは……我は……そんなつもりでは…………我は……』

『……まぁ、極力幸せになれる様には気を付けるつもりだよ』

『……すまない…………』



 酷く落ち込んだ様子のモンデシウルが呆然と地面を見下ろしている。すまないとは誰に対する言葉なのか。



 友を守る事が義務だとでも思っているらしいモンデシウルが落ち込んでいるのを尻目に、共和国救援戦線は静かに終わりの時を迎えたのだった。



 

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永遠未完『魔物解説』……ネタバレ含む。

よろしければ『黒き金糸雀は空を仰ぐ』此方も如何?
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