第132話 崩黒神
第五位階下位
ニグレドの粒片・ケンタウロス LV38
ニグレドの剥片・ナックラヴィー LV89
森の中には大悪魔が率いる異形の軍団がいた。
ニグレドと名の付く魔物達は、その全てに皮膚が無く、どれもが歪な形状をしている。
この気持ち悪い連中も悪魔獣の一種なのだろうか?
……取り敢えずニグレドという名の化け物がいるのは間違いないだろう。
ちょっと近付きたく無いので遥か上空から潰して消しておいた。
万が一敵じゃ無かったりした場合は魂の解析後蘇生する方向で。
◇
敵を殲滅するのは増援が来てからなので、私は森に入った敵だけ殺すという一番楽な仕事をこなすだけで良い。
高原から森を通らずに出る道は南の坂道以外無いので、蟻一匹逃がさない為にも私か黒霧しか出来ない仕事だが。
まぁ現状は暇なので、手慰めに桃兎姉妹の魂の解析を行った。
黒霧が一杯一杯で負担を掛けたくないのも理由の一つだ。
彼女等から得られた情報を纏める。
先ず、姉の方の記憶を解析して得た情報。
彼女等の名前は、姉がメレリラで妹がウレミラ。お互いをめーたんとうーたんで呼び合っている様だ。
父は誰か不明、母はウーラという名前であり、双子を出産して間も無く亡くなっている。
また、村の大人達の話から推測するに、ウーラは転生者であり、ユニークスキルはおそらく魅了系。
双子にはその力の因子が受け継がれている。
めーたんの前世の情報は全くと言って良い程に残っていないが、どうも体が弱かったらしく、強力な各種耐性系に加えて治癒能力と身体能力を強化する力に……何故か浮遊スキルが混じったユニークスキルを持っていた。
更に、救助直前に妹が殺された事で感情を爆発させており、新たに妙なスキルの因子が発現していた。
幾ら私が有能とは言え、見た事も無い形状のスキルだとその大まかな概要しか分からないが……このスキルはおそらく狂戦士化や遺伝した魅了系の力、並列思考の様なスキルが混じり合った、二重人格型の能力だと思われる。
つまり、あまりのショックに自己防衛が働いて、めーたんの弱い部分と強い部分が分離してしまう……直前に助かったせいで、発現し掛けていたユニークスキルは不完全な形で停止した様だ。
取り敢えずめーたんの魂は今の所安定しているので、放っておけばユニークスキルは彼女の求める形で定着するだろう。
……当然放っておかないけどね。
続いてうーたん。
彼女は……多分ウーラの魂の大部分を引き継いでいる。
実際にウーラの魂を見た訳では無いので何とも言えないが、うーたんの魂にはウーラの物と思われる記憶の断片が混じっていた。
或いはもしかしたらウーラの子供が双子だったのは、ウーラが生まれ変わる器を求めていたからなのかもしれない。
ざっと見た感じだと、メロットやキット達と魂合した時のそれと似ているので、おそらく間違い無いと思う。
魂は複雑に見えてスキルや記憶が無い物は案外単純な作りなので、ウーラの記憶を捨ててスキルと余白部分だけをめーたんに注げば簡単に混じり合いそうだ。
うーたん自身は転生者では無いが、ほぼ完全な形で母親から引き継いだ魅了系のユニークスキルと、おそらく魂合に関わっていると思われる不完全なスキルがある。姉妹仲良く改造手術決定である。
……どうもウーラさんには夫がいないとか生まれ変わりたいとか記憶を捨てるとか不幸の香りがするが……まぁ、双子が成長して母の真実を知りたいとか言い出した時の為に情報収集だけはしておこう。
◇
《【大陸クエスト】『ニグレドの影』をクリアしました》
【大陸クエスト】
『ニグレドの影』
参加条件
・ボス『ニグレドの欠片』を討伐する
達成条件
・ボス『ニグレドの欠片』を討伐する
失敗条件
・大陸が滅びる
達成報酬
参加者報酬
・スキルポイント10P
・道具『遊楽の神子剥片』
参加者貢献度選択報酬
貢献度100%
・報酬選択権:B
・スキルポイント5P
・スキル『終焉の黒の欠片』
・武器『崩滅の黒肉腕・レプリカ』
・道具『悠久の黒肉片・レプリカ』
・道具『黒分神の宝殿箱』
・道具『真金の宝箱』
・道具『真銀の宝箱』×2
・道具『真銅の宝箱』×3
どうやら黒霧達が魔界から現れた強い魔物を倒したらしい。
選択報酬から良さそうな物を選んだ次の瞬間、その声は聞こえて来た。
『——はははっ! 妙な気配を感じて久方振りに現界してみれば、中々に面白い事をしているではないか!!』
目前に突如として現れたのは、何処までも暗い人影。
昼の陽光を飲み干すかの様な黒の塊。
崩黒神ニグレドの分神 LVー
——神霊の一種だ。
『おい、貴様っ! 遊技神の奴と遊んでいるのだろう? 我も混ぜろ!』
「……そんな事言われても」
と言うか、この世界が遊技神によって作られた物である事を認識している?
……もしかして……外から入って来た……?
『む、なんだぁ貴様ぁ、幼神の分際で我に逆らうつもりか? んん?』
少女の様なシルエットをしたニグレドの分神は、恫喝する様な言葉を吐きつつも、そこにはまるで敵意や害意が無い。
これは今まで会ったどの神霊にも見られる傾向だ。
連中は幼神という言葉の通り、まるで僕を幼児の如く扱ってくる。
僕がどんなに敵意を昂ぶらせて無礼千万な発言をしても、それすら児戯であると笑い楽しんでいるのだ。
僕の手に余る神霊を前に、どうしたものかと困っていると——
『む』
「?」
——世界が停止した。




