第130話 魔界より来たれし軍勢
第五位階下位
モンデシウル共和国を攻めている帝国軍の総数は……ちょっと洒落にならない。
彼の国はその領地の殆どが高原だが、南端の都市『ラウィシウル』の周辺だけは低い場所にある。
ラウィシウルは『ウル・ルク・アトゥルング』と言う名の迷宮を中心に森を切り開いて作られ、獣人の国としてはかなり大きい街だ。
ウル・ルク・アトゥルングと言うのは、獣人達の古い言葉でウル族の訓練場と言うらしい。
迷宮を中心とした街なだけあり、そこに住む獣人達は比較的頭が良くてレベルも高い。
そのおかげで、草原を覆い尽くす程の異形の大軍にも辛うじて攻め落とされずに生き残っていた。
上空から見た都市を襲う敵の総戦力は——
——およそ12万。
そのほぼ全てが悪魔獣であり、軍団の1%以下がそれを使役する悪魔達となっている。
そして……悪魔獣達は今尚増加中と。
戦場から少し離れた場所。
開かれた森の中に、複数体の大悪魔と一体の悪魔王がいる。
連中は巨大な魔法陣を描き、中空に不自然な亀裂を形成していた。
その開かれた穴から次から次へと際限なく悪魔獣が溢れ出しているのだ。
幸いだったのは、悪魔の軍団が都市を積極的に落とそうとしている訳ではなさそうな事だ。
召喚された悪魔獣の中でもレベルの低い者が都市を包囲し、よりレベルの高い者は高原の方へと向かっている。
悪魔獣に人型が少ないのも街が保たれている要因だろう。
悪魔達が何故都市を直ぐに落とさず冗長なやり方で包囲しているのかは……分からない事もない。
一つは、高原の獣人やモンデシウルの配下を逃がさない為。つまりは人質。
もう一つは……自分達の優位を確信し、弱者を甚振っているのだろう。
大体いつもそれで失敗しているが、それは私と言うイレギュラーあっての事なので、普段は成功しているのだろう。
ある意味哀れな連中だが、折角価値の低い雑魚が群れているので、経験値になって貰うとしよう。
そう——ボーナスステージである。
まぁ、どうもおかわりをずっと続けられる様な状況では無さそうだがね。
悪魔達が開いた亀裂型の転移門から、悪魔獣と一緒に超高濃度魔力が溢れ出し、周辺一帯を侵食している。
このまま放置すれば、多数の属性を持つ混沌とした高濃度魔力が何かを具現化してしまうかもしれない。
と言う訳で、ささっと作り上げた作戦はこうだ。
先ず、都市戦場にリベリオンを放り込む。
その周辺領域へリベリオンに同行している黒霧の端末が結界を張る。
結界内部に、死んでも良い雑兵集団である水増しプラントゴーレム軍団と、最近は素材提供係に従事していたルメールを投入する。
都市戦場を攻略する一方で、悪魔本陣にはレスタを駆る黒霧の端末が襲撃を仕掛ける。
歯応えの無い迷宮狩りでつまらなそうにしている紅花と調子に乗っている白夜、それから療養中のティオロア含む三聖獣。クラウ一味。レッサーデミアジムス。キース。デットリーポイズンスライム装備のクレヴィドラグ。などを増援として向かわせる。
高原の麓で、僕が持つ防衛以外に動かせるほぼ全ての戦力を投入した総力戦が行われる一方、今正に獣人の集落へ襲い掛かっている上位の悪魔獣や大悪魔を始末するのが、僕の役目だ。
獣人達を考慮して、睡蓮と茉莉花をつけた狐3人組+蛇で行く。
睡蓮には『妖狐の魔霊装』を装備させ、茉莉花には『妖狐の宝珠』を持たせた。
これにより、レベル500前後である彼女達が召喚出来る狐火のレベルが250+50程になる。
また、僕も今回の進化で尻尾が5本になり、『狐火』を装備する事で更にもう一本を追加可能。
ここで人化を一部解き、一部を竜化させる事で、青い尾が2本、黒い尾が2本、銀の尾が2本になる。
召喚可能な狐火のレベルは、これらの相乗効果のお陰で90まで上がる。
つまり、レベル500が2体に300が14体、僕と僕が操作する狐火が6体に、おまけで白蛇君。
これで敵を包囲しつつ時間を稼ぎ、都市戦や本陣戦を制した皆を迎えて敵軍を完全に殲滅する。
残念ながら今回は敵兵を鹵獲する余裕がなさそうなので、貴重な悪魔達には経験値になって貰うしかない。
折角なので魂魄だけは黒霧に回収して貰い、有効活用するとしよう。
それじゃあ作戦開始。
◇
高速移動用のロケット、『黒雷』を応用したエンジンを取り付け、天遊核の力で少し浮かびながら疾走する大型の装甲車6台が、戦場に突っ込んだ。
悪魔獣の大軍を轢き殺しながら突き進み、その途中で限界突破済みのリベリオンメンバーが随時戦場へと身を投じて行く。
全員が出た所で装甲車が変形し、人型となって敵軍へと牙を剥いた。
作戦通り黒霧が戦場を隔離し、プラントゴーレムの大軍が召喚されたので、この戦場は数時間の内に終結するだろう。
一方悪魔本陣は、遥か高空から隕石の如く飛来した炎を纏うレスタが『メテオーインパクトー!』などと言いながら本陣に突撃した。
黒霧の保護を受けていたレスタは、大地震を起こして巨大なクレーターを作る程の衝撃を受けても傷一つ無く、その一撃で一部の弱い大悪魔とそれ以下の悪魔を虐殺した。
流石に悪魔王は殆ど無傷だが、ゲートの維持に気を使っていた大悪魔はその多くが致命傷を受けた様子。
空から見えない森の中には悪魔獣がかなりの数潜んでいるし、レスタの突撃でゲートがおかしくなったのか、ゲートの先から妙な気配も感じるので、増援部隊にはちょっと頑張って貰う事になりそうだ。
まぁ、何方も今ある戦力でどうにかなりそうだし、私は私の戦場に行くとしよう。




