第32話 竜の行方 ※挿絵あり
第三位階上位
「ふーん、で、ザイエはどうして此処へ?」
「いきなり呼び捨てかよ、本当に生意気だな」
嬉しそうに言う事では無いと思うよ。
ともあれ、ザイエがどうして来たのかは疑問である。
竜を倒す為なら爺様だけでもどうにかなった事だろう。
「態々俺が来てやった理由は二つだな。先ず一つ、ユキ、お前がいるから」
「態々教えに来てくれた事?」
「まぁ、そう言うこったな……必要無かったみたいだが」
一つ目は分かった、となると本命は二つ目だろう。
「それで、二つ目だが……まぁ簡単に言うとデュナーク1人では厳しい相手と戦う為だな」
「へぇ、それって相当やばいんじゃないかな」
「あぁ、やばいな、それこそ大陸の危機だ」
本当にやばい事態が裏で進行していたらしい。
僕にはどうしようも無いのでさっさと受け流すとしよう。
多少の好奇心はあるが、一応解消に務める。
「ところでザイエ、少し前に『クリステア・アークキング・クラブ』って言う巨大蟹と戦ったんだけど、これとそれ、どっちが強いの?」
竜と巨大蟹の戦闘力の差、これが分かればザイエの力を測る事も出来るし、その危機がどれ程の物か分かる筈だ。
「あ? クリステアアークキング? ……あぁ、精霊蟹の上位種か」
どうやら『クリステア・アークキング・クラブ』は精霊蟹という種らしい。
そう言えば進化先に『エレメントメタルクラブ』と言うのが有ったが……それのこと?
「地下にいた奴……あれは神獣みたいなもんだからなぁ……能力的に考えて精霊しか勝てないんじゃねぇの? 俺も一対一ならちと厳しいが…………え、何お前、倒したの?」
目を丸くして聞いてくるザイエ。残念ながら倒したのは精霊さん達だ。
「倒したのは精霊だよ、それより能力的に考えてってどう言う事?」
「あぁ、精霊ね。えぇとだな——」
ザイエの話しを纏めると、こう言う事だ。
精霊蟹は精霊の宿った石や結晶を喰らう、それ故に魔力の質は精霊に近い。
その結果、精霊相手だと魔力の質が近いので攻撃が効き辛くなるのだとか。
逆もまた然り、精霊からの攻撃も巨大蟹に通り難いが、体の構成の問題で精霊に粘り勝ちされるらしい。
巨大蟹に勝てたのは精霊さん達が精霊だったから、言うなれば相性が良かったからだった。
その上、アークキングのレベルだと鎚鋏を全力で地面に叩き込んだら山が割れるくらいだとか。
土精霊巨人さんの頑張り無くして今の王都は無い。
「しっかし、デュナークも物好きだよなぁ」
「何が?」
「いやなぁ、爺様ってなぁ……ククッ……」
「?」
ザイエは何やら笑っているのだが……何だろうね?
「何がおかしいんだい?」
「だってよぉ……ほらユキ、俺の事お兄ちゃんって言ってみ?」
何やら変な事を言い出したザイエ。
お望みとあらば新しい世界へのトビラを開いてあげるけど?
意図して声音を変え、可愛らしく小首を傾げてみる。
「ザイエ……お兄様……?」
「ゴフッ……あれ? ちょっと待って今の無し」
リテイクを求められたのでテイク2。
「お兄さん急にどうしたの?」
「え? ああ……まぁ、そう言うこった。お爺ちゃんよりお兄ちゃんの方が良いだろ?」
良く分からないが。つまり、爺様は実は爺様じゃ無い? 本当はザイエと同じくらいの姿という事だろうか?
「ザイエって何歳?」
「五百からは数えてねぇな」
「ソウナンダ」
ソウナンダ……まぁ何でも良いが。
◇
ふと、森の中から紫水晶の瞳を持つ黒猫が出てきた。レイーニャだ。
「ニャ? ユキニャ、2日ぶりくらいかニャ?」
目の前に歩いて来たレイーニャを抱き上げる。ちょっと毛並みが良くなった?
「そうだね、だいたい2日ぶりくらい?」
そう言いながら身体中を撫で摩る。擽ったそうに身をよじるレイーニャ、やはり毛並みが良くなってる。
「レイーニャ、どうしたの?」
「どうしたのって、それはニャーのセリフニャ! 擽ったいニャー!」
「まぁまぁ、で、どうしたの?」
「進化! 進化したのニャ! はニャすニャー!」
「うん分かった、離さない」
「は・ニャ・す・の・ニャー!」
何に進化したのか知らないが、相変わらずレイーニャは「な」が言えない。
「ほっほっほ、少し見ない内に随分と強くなったの、ユキよ」
「やぁ、爺様、2日ぶりくらい?」
森から爺様が出て来た。ティア含む精霊さん達と僕の配下、それから真っ二つになった竜の爪をプカプカと浮かせている。
「ところで爺様、実は若いの?」
「ほっほっほ、ザイエ?」
「…………ほら、ユキ、頭、良い、から」
「……そう言う事にしておこうかの」
まぁ、爺様が若い姿を偽っているという事なら僕の見た目と年齢と性別について驚かなかった事も分かると言うものだ。
「まぁ、爺様は爺様だし、さして気にならないけどね」
「ほっほ、ユキは良い子じゃのう、なぁザイエ?」
「……でもよぉ……まーだ気に病んでやがる」
何やら深い事情がある様だが……話して来ないなら聞かない。僕とレイーニャは蚊帳の外だ。
ティアは気絶しているらしい。
攻撃属性魔力を纏っていなかったとは言え、あの重量だ、普通なら死んでいてもおかしく無い。
妹精霊さんは、竜の魔力が込められた暴風にやられ、かなり消耗してしまったらしく、あの時の姉精霊さんと同じ様にグタッとして浮いている。
光の巨人はボロボロと崩れ、小さな光になって霧の森の方へ飛んで行っている。
森へ帰っているのだろうが、月が照らす草原で一列になって進む様は何処か幻想的である。記念にパシャリ。
「んで、ザイエ、この竜はどうするの?」
「ん? あぁ、そうだった。デュナーク、出来るか?」
「ふむ、……何とか出来そうじゃの。ユキ、その目をドラミールの近くに置いてくれんか?」
良く分からない会話があり、爺様の指示通り、相変わらず僕をジーっと見つめてくる目玉を竜の横に置く。
すると、爺様は何処からともなく大きな魔水晶の様な物を取り出し、竜の横に置いた。
これはまさかあれかな?
「『生命誕生』」
暗い草原を爆発的な光が包み込んだ。唐突であるが、目は既に塞いでいる。
光が収まった頃を見計らって瞼を開くと、目の前には灰色の大きな竜の死体と、真っ白で小さな竜の仔が眠っていた。
ドラミール ベビードラゴン亜種 LV1 状態:睡眠
名前が付いている、それはつまり……。
「蘇生……?」
「魂が残ってれば出来んだよ」
「魂が残る程強い者であればの。さぁユキよテイムするのじゃ」
「へ?」
良く分からないが、良いと言うなら良いのだろう。
貰えるのなら貰っておけ。鈴守家の家訓である。
「『下級契約』」
《《【大陸クエスト】【緊急クエスト】『堕ちし竜王』が『匿名』によってクリアされました》》
《【大陸クエスト】【緊急クエスト】『堕ちし竜王』をクリアしました》
《《
【大陸クエスト】【緊急クエスト】
『堕ちし竜王』
参加条件
・ボスと戦う
達成条件
・ボスを討伐する
失敗条件
・王都が滅びる
達成報酬
参加者報酬
・スキルポイント10〜15P
》》
【大陸クエスト】【緊急クエスト】
『堕ちし竜王』
参加条件
・ボス『ドラゴンロード・ゾンビ』と戦う
達成条件
・ボス『ドラゴンロード・ゾンビ』を討伐する
失敗条件
・王都が滅びる
達成報酬
参加者報酬
・スキルポイント15P
参加者貢献度ランダム報酬
貢献度2%ーー100%
・武器『竜王の牙剣』
・武器『竜王の爪』
・防具『白竜王鱗鎧』
・防具『竜王の吐息』
・防具『腐竜王の吐息』
・スキル結晶『竜鱗』×5
・スキル結晶『竜殻』×1
・スキル結晶『再生』×5
・スキル結晶『金剛』×5
・スキル結晶『剛力』×5
・スキル結晶『竜耐性』×5
・スキル結晶『炎耐性』×5
・スキル結晶『聖耐性』×5
・スキル結晶『負耐性』×1
エクストラ評価報酬
決死隊
個体名『エスティア・ルベリオン』との友誼
個体名『デュナーク』との友誼
個体名『ザイエ』との友誼
精霊との友誼
ボスの退化個体『ベビードラゴン亜種』の捕獲
・スキルポイント25P
・スキル『愛情』
・スキル『変声』
・スキル『演技』
・スキル『精霊の祝福』
全体報酬
・新スキル解放
《レベルが上がりました》
テイムは無事成功した様だ。
コロコロと落ちてくるアイテムを慣れた動作で拾い集める。
「この竜の体は貰って良い?」
「ドラミを引き取ってくれるんなら俺は構わねぇけど?」
「ユキの好きにすると良かろう」
と言う事なので頂いておく。やったね。
「今の、天啓と祝福か……久し振りに見た」
「そうじゃの……懐かしい」
竜の体をインベントリに仕舞う。インベントリって限界は無いのだろうか?
◇
「さて、それじゃあ行くか、ユキ。デュナーク、転移だ」
「うむ、急がねばならんの」
「はぇ?」
唐突に地面に魔方陣が現れ、次の瞬間——
「ここ……遺跡?」
瘴気に包まれた遺跡の空に転移した。




