第122話 思考する神血
第五位階下位
イヴから聞き出した資料の他に、独自の見解によるイコル君達の能力検証を行った。
結果は上々。
神血は一粒一粒が人間千人程の演算力を持っているが、実践的数値では人間千人分に劣る様だ。
まぁ、人間千人が全演算力を魔法に回せる訳では無いので実力的にはトントンだが、人間千人分の演算力では無く、スペック的には人間千人分程の演算力と言った方がよろしい。
正式にはドール千体程の演算力だ。
イコル君達の場合、その戦闘力を正確に計算する事は出来ない。
理由は、その魂が即席生命のそれと似通っているからだ。
言うなれば『劣等生命』か。
性質的には生命と言うよりも『知性ある道具』の類いだろう。
本体自体の魔力保持容量は、極小サイズながらも流石は神霊金属と言った所で、魔力ポットとして期待出来る程には多い。
また、イコル君達はその名の通りある程度の思考能力を持ち、演算力の一部を利用して凡ゆる環境に適応可能らしい。
既にイヴから得ていた情報ではあるが、勿論生物の体内に入っても何1つ害は無い。
神血は母体から胎児に受け継がれるのがその世界の常識であったとか。
彼等には根幹に慈愛、忠誠、共感のメモリーが存在し、叛逆の可能性はゼロに近い。
その上『思考する神血』足る彼等は、進化の過程でイヴ・ハルモニアの影響を強く受けている為、イヴの極小端末と呼ぶべき存在であり、叛逆はまずあり得ない。
この神血を正式に名付けるなら『イヴの神血』が正しいだろう。
仮に進化前のイコルを作成して私の魔力で変質させたら『ユキの神血』となる。
まぁ、現状では原本を作成して分岐進化させるより、完成形である『イヴの神血』を利用した方がお手軽なので此方を使うがね。
歴史の考察や彼等のスペック確認などの基本性能調査を行った結果、『イヴの神血』は空間操作系の能力に高い適性がある事が分かった。
空間魔法は汎用性が高いので、存分に活躍して貰おう。
◇
試験的に、鹵獲したジャイアントブロンズゴーレムの核から作った肉と金属製のサイボーグ型ドールに神血を投与した。
完成したのがこれだ。
レッサーデミアジムス LV?
数値的にはレベル400に匹敵するだろう。
種族は神血人形と言う物で、青銅人形の場合はタロスとなるらしい。
生命創造の魂魄強化効果を使い、相応の量の魔力を消費して作られたこのドールには、様々な神血機装を搭載してある。
肩に掛からない程度の髪はイヴと同じ白髪で、見た目はクラウと同じ幼女。
クラウと違って目はパッチリと開いているが、ゴーレム種の魂魄を持つ者の特徴通りに表情が無い。
完全な機構人類じゃない理由は、神血を兵装に割く為に量を減らしたのが原因だ。
必要絶対量を減らす為に小型化しても足りなかったらしい。
装備は、姉妹に配布した物と同規格の布鎧。
胸元に光る雪の結晶を模した記章、スノーシンボルは、絶賛研究中の空間魔法と極微量のナノマシンを混ぜ込んで内部の拡張を行った。
新たな機能は、適当にプログラミングした『生体管理システム』と、念話を利用した『位置特定システム』、両方を利用した『緊急防御』『緊急治療』『救難信号』などなど。
これ以外に特に目立つ装備は、少女の細い首にセットされた少し機械的な首輪だ。
これはイヴが装備していた物をそのまま再現した装備で、その名を『次元倉庫』と言う。
『召喚』の一言で、中にある装備を転送する事が出来るのだ。
現在搬入されている武具は、天遊核を使った白い翼状の飛翔ユニット。実弾を生成して放つ狙撃銃。魔法の弾丸を放つ二丁拳銃。麗震を改造した剣。結界を生成する杭。などがある。
各種便利装備は、配下に順次配布して行こう。
その他、手足にブースターやナイフ、ワイヤーなどを仕込み、対応力を高めておいた。
ここまで調査、開発した所で、『思考する神血』の利点を簡潔に纏めると……『後付けの超強化アイテム』だ。
魂魄で技能を取得し、物質に能力を刻み込み、そこへ神血を塗布する。
こうする事で、1つの物に実質3倍以上の力を宿す事が出来るのだ。
……さて、資料も纏めたし、これでイヴの神血に関しての研究は一段落付いた。
少し休んで次の作業を始めよう。
◇
数時間の仮眠をとった次の朝。
気分爽快に目を覚ますと、私はまた一段進化、成長していた。
自らの姿を確認し、胸部に掛かる重みが変わって目が覚めたのだと気付いた。




