第117話 それは遠い世界の出来事
第五位階下位
続いて、クランゼル王国近傍の迷宮探索状況。
現在のドール、ゴーレム混成部隊は、新たに18個の小迷宮を踏破した。
やはり睡蓮の様な例は特殊らしく、現状知性ある迷宮核との遭遇は無い。
ただまぁ、人形魔女の迷宮も敵意を異様に滾らせていたので、姿形が核そのものでも知性はあるのかもしれないが。
報酬は、合計でスキルポイント18P。遊楽の神子結晶18個。無数の宝箱の山。
一個一個開ける度に面白い物出ろと願っているが、そもそも報酬としてインベントリに入った時点で中身は決まっているのだ。
とは言え、下手な鉄砲も数を打てば当たる物で、多少良い物は出た。
封魔の鎖 品質B レア度3 耐久力B
備考:魔法を封じる鎖。
一風 品質B レア度3 耐久力B
備考:風を操る扇。
月の冠 品質A レア度4 耐久力A
備考:所持者に月の力を授ける冠。
小迷宮には負の力を持つ魔物が6体程確認され、合計でスキルポイント6Pと神子結晶6個を入手した。
迷宮にばかり負の力を持つ魔物がいる事も、地脈の異常活性と何かしら関係があるのだろう。
◇
新たに捕獲した魔物や人間の集団の教育や、公国の支配、砦の修復を黒霧に任せ、私は再度星核機装船へと戻った。
星核機装船は、ベルツ大陸のちょうど南方で海の上に飛行する巨大な円形都市だった。
そんな星核機装船とイヴの来歴だが……腹立たしい事に遊技神辺りの神から邪魔が入り、情報取得に制限が掛けられてしまっていた。
船内は殆ど霧が掛かった様になっているし、コンソールの情報やイヴの声にまでノイズが入っているしで、纏まった情報が得られていない。
その代わりと言わんばかりに、この船のコアの情報だけは鑑定する事が出来た。
機械神の神核 品質SSS レア度10 耐久力SSS
備考:機械神の力が込められた結晶体。
機殻星の星核 品質SSS レア度 10 耐久力SSS
備考:星を維持、管理する為に作成された人造星核が変質した物。
機械神・イヴ・ハルモニア LVー
まぁ、うん。そんな気配はしていた。
やはり、イヴ・ハルモニアは神霊の類いであった。
程々に衝撃的な事実に遭遇したが、どうも彼女は他の神と違う様子。
大いなる余裕を感じないし、何か大きな秘密を抱え込んでいる様子も無い。
何より、叛逆の追憶記のキャラクターとして出ている事から、瞳神や死神より下位の神霊である事が伺える。
ともあれ、敵対する可能性がほぼゼロの強者と戦う備えを出来る程私達に余裕は無い。
そんな事よりも、頭に叩き込んだ数少ない情報の精査の方が重要だ。
先ず、彼女の持つ技術体系について。
結論から言うと、これらの技術『機械理論』は科学の極致。つまり——
——全ての世界での再現が可能である。
ただし、最先端の技術だけしか提示されておらず、そこに至るまでの技術それ一切がすっぱり抜けていた。
……まぁ、最後だけ分かれば十分だけどね。
『機械理論』を極簡潔に纏めると、一個で人間百人分程の演算力を持つナノマシンを数億個利用する事で、根源因子を励起させるとの事。
つまりは、最低でも人間百億人分の思考を統一して強引に魔力を操ると言う事だ。
ナノマシンの現物は、イヴ・ハルモニアの体内にあった。
思考する神血 品質? レア度? 耐久力?
備考:?
この船の核や彼女のそれはこの世界に来て変質したらしく、今やナノマシン一個で1EBの記録容量を誇る様だ。
掻き集めた様々な情報の断片や、情報統制の抜け道を利用して得た情報によると、彼女がいた世界の文明は人類が爆発的に増加し、環境汚染が取り返しのつかないレベルまで進んでしまった様だ。
増えた人類は巨大なアーコロジーを建設し、その中に閉じこもる事でどうにか命を繋いでいた。
そんな終末を迎えるばかりとなった世界で、現状を打破する為に世界中が協力し、そして——救済はなされた。
今まで観測出来ていなかった因子『暗黒物質』足る『根源因子』、魔力を発見したのだ。
後は早い物で、滅びかけた人類は僅か1世紀で息を吹き返し、更に2世紀目で終末とまで言われた汚染を完全に浄化し、3世紀目に至っては星海旅行というジャンルまで生まれた。
そんな黄金期を迎えた人類はしかし、ある日唐突に終末の時を迎える事となった。
——邪神の襲来だ。
戦いは苛烈を極め、幾多もの星が滅んだ。
そして最後、今や機械に覆われた最初の星すら滅びを迎える時が来た。
人類は希望の芽を残す為、その月に産まれた新生児を『冷凍睡眠』させ、それらと回収した星核を乗せた船、星核機装船を複数作成し、取り分け優れた性能を持つに至った機構人類に全権を委ねて送り出した。
その後機殻星では最後の囮自爆作戦が実行され、結果生存惑星化された星含め全ての人類が住める星が滅びる事となった。
他の星核機装船がとにかく遠くへと離れて行く中、性能が他より頭一つ抜け出ていたイヴ・ハルモニアは得意の『次元移行』を利用した『世界間移行計画』を提案、決行した。
機殻星の自爆はイヴ・ハルモニアの船に使われる機殻星の星核によって行われる。
星の物質体全てを魔力に分解し、それを一気に解放するのだ。
その威力は、正に神を殺す一撃となった事だろう。
イヴ・ハルモニアは迸る惑星爆発の膨大なエネルギーを利用して世界間移行を実行し、それは半分成功した。
イヴ・ハルモニアの船は、厚い時空の壁を飛び越え——
——世界の狭間に落ちたのだ。




