第114話 賞金首
第四位階中位
『モクテキチー、シューヘンデース』
一抱えもある巨大なエメラルドのゴーレムが、そう声を掛けてくる。
ガラス越しに見える景色は未だ森の中だけど、フードを取って白い狼の耳をそばだてると、鳥や虫の鳴き声に混じって人の笑い声が聞こえてきた。
皆がわちゃわちゃ煩いから良く聞こえないんだけど……襲われてはいないっぽい。
しばらく森を進むと直ぐに草原へ出て、砦が見えて来た。
そのまま真っ直ぐに草原を進み、大河沿いの砦に着くと、其処には既にクロギリさんが来ていた。
大きな門が開き、車ごと砦へ入って行く。
『モクテキチーヘ、トーチャクシマシター。ゴコウシャニナリマスサイハー、ワスレモノナドナキヨー、オキヲツケクダサーイ』
そんなちょっと気の抜ける言葉に従い車から降りると、見えて来たのは此方へ敬礼する兵士や騎士の集団だった。
その集団を背にしたクロギリさんから指示が出る。
「休憩の後に作戦通達を行います。帝国軍の到着時刻は深夜以降と予測されますので、安心してお休みください」
その後、クロギリさんから極簡単な説明を受け、仮設休憩所とやらに移動する事になった。
◇
「——んで、これが仮設?」
「それ、3度目だよ」
ユウイチはじゅるるーとイチゴ牛乳を飲み干して、同じ事を呟いた。
まぁその気持ちも分かるけどね……。
仮説休憩所と呼ばれ案内された場所は、クランゼル王国の王宮にあった物と同じ施設だった。
「そう言えば特設支店と言っていましたね」
「つまり幾らでも作れるって事か? ……特設と仮設の違いって何よ?」
これまでの運搬やら何やらの苦労を思えば、ユウイチが微妙に荒れるのも仕方ない。
まぁ、そんな事よりも目前の戦いに目を向けるべきだと思う……けども、これじゃあね……。
配られた書類にはこうある。
「『敵軍勢は無力化のち順次捕獲して行きます。ご協力頂いた分報酬をお支払い致しますので、奮ってご参加ください』……ね」
戦争って……ナンダッケ?
転生者組が何とも言えない溜息や乾いた笑いを浮かべている一方で、現地組はあるリストを読み込んでいる。
「高額配当『鎚仙:ビアジーヌ・アンビシオン』300万MC。『単眼巨人:サイクロプス』150万MC。『豚鬼王:オークキング』120万MC。『青銅巨兵:ジャイアントブロンズゴーレム』80万MC。『雷霆:ムンディス』80万MC。……まるで賞金首だな」
名前と肩書き、特徴、能力、弱点、そう言った様々な情報が網羅されている。
情報戦では敵を圧倒していると言って良いかな。……多分相手もマシロさんみたいなのがいるなんて想定すらしてないだろうし。
「狙い目は大型魔物ですわね。クロギリさん達に先を越されない様に作戦を練らなければ……」
『では我々は露払いと緊急時の救護を行いましょう』
「あ、あら、聞いてましたの?」
エリザとクロギリさんの会話で、先程から思っていた懸念が湧き上がって来た。
そもそもマシロさんの狙いは何なのだろうか?
おそらくだけど、マシロさんはリベリオンの力を借りなくても簡単に帝国を蹴散らす事が出来ると思う。
それなのに、わざわざ1000万円以上の援助をしてくれたし、今回も『報酬金の前払いです』とか言って1人に10万MC、合計で1700万以上のお金が振り込まれていた。
古代魔導遺産だって、一度だけ死を退けるという破格の性能の物をポンポン出す。
魔法符も、戦略級の大魔法を簡単に渡す。
極め付けは限界突破だ。
その魔法符の性能から考えて、たった一枚でも売れば一生遊んで暮らせる程の大金が手に入ると思う。
それだけの大金を私達に注ぎ込む理由が、私にはどうしても分からない。
獣みたいに感の良いティアが気を許している事から、敵意はないのだと分かる。
マシロさんの目的は邪神の殲滅だと言う話も聞いているけど、それなら尚の事、弱い私達を支援する理由が分からない。
そこだけがどうにも気になって気持ち悪いんだよね。
まぁ、本人は商売商売言ってるし、額面通りに受け取れば先行投資のつもりなんだろうね。
◇
ミーティングが終了した。
作戦内容は至って簡単。
リベリオンとスノーブラックによる大物狩りだ。
敵に一定以上の強者がいる為砦は袋小路にしかならないと言う事で、敵が砦を攻撃している間に背後から奇襲を仕掛ける。
リベリオンが限界突破で一気に強敵を撃破し、スノーブラックと兵士が残敵を掃討する。
幾つかの注意事項を確認し、夜までゆっくり休む様指示を受けてその場は解散となった。




