第113話 イヴ・ハルモニア
第四位階上位
公都のあちこちにいたサキュバス達は、私が最初から持っていたスキル『淫魔使役』と、落としたサキュバス・クイーン、リムの『淫魔使役』『淫魔支配』のスキルにより、公都から迷宮に転送された。
黒霧なら武力的にも能力的にもレベル300程度に負ける事は無いので、安心して任せられる。
サキュバス達とリムは聞きたい情報を全て回収した後に、魅了などの状態異常を解除して再教育を施す事になっている。
彼女らが公都で起こした問題は、私の方で全て片付けておくとして、連れて来た戦力は一部の防衛戦力を残して他の二ヶ所へ分配した。
さて、後片付けをしようか。
振り返った時、それは私の目の前に現れていた。
◇
何の気配を発する事もなく、いつのまにか背後に何かがいた。
『対象確認。解析結果:非敵性。友好プログラムを起動します』
そんな思考が流れて来た後、少女は口を開いた。
「初めまして、私はF型・機構人類。機体番号7番。機体名イヴ・ハルモニアです」
機構人類 レア度? 品質? 耐久力?
備考:イヴ・ハルモニア偵察機体。
鑑定から得られた情報から、これが黒霧と同じ端末である事を理解した。
ただ、力の多寡はまるで分からない。
私が分からないと言う事は、私が分からない程度には強いと言う事だ。
「こんにちは、イヴ。私はユキ。よろしくね」
『個体名『ユキ』登録完了。高度な融和性を確認。友好度を『知人』に引き上げます』
「こんにちは、ユキ」
イヴ・ハルモニアは長い白髪をふわりと揺らしながら、優雅に一礼して見せた。
服装は何やら体にぴっちり張り付くスーツの様で、その上に鎧の様な物を纏っている。
『ユキの表層魂魄解析が完了しました。危険度:災禍級。……ユキ討伐プログラムの構築が完了しました。ユキ討伐プログラムはいつでも実行可能です』
「ところでユキ。高空を高速で飛翔する物体に心当たりはありませんか? 速度は推定マッハ5、高さは上部成層圏程です」
『高速飛翔物体の特定因子と個体名ユキの特定因子の適合率:73%。証拠不十分と判定。虚偽検知プログラムを起動します』
「……」
「……」
『……精神分析プログラム起動。個体名ユキの精神状態を分析…………分析失敗。詳細不明。警戒レベルを引き上げます』
「ユキ、どうしました?」
心配そうにこちらを見下ろしているイヴ。
これは頭の中がダダ漏れになってる事に気付いてない感じだろうか? 或いは気付いていてそう言う演技をしているのだろうか?
……どのみち格は天帝竜程に高いだろうし、ちょっと手加減無しで対応しよう。
「……高速飛翔物体ね、それは多分僕が作った物だよ」
「……」
『…………特定因子の急速な変遷を確認。表層魂魄、及び深層魂魄の解析を開始します……ユキ討伐プログラムを大幅修正。瞬間変遷の前例はありません。警戒レベルを最大まで引き上げます』
先程まで人間そのものの動きをしていたイヴは、急停止して人形の様に固まってしまった。
……うむ、失敗したかもしれない。
『…………深層魂魄の一部解析が完了しました。『金の因子』『銀の因子』『青瞳の因子』を確認。警戒レベルを0に引き下げます。ユキ討伐プログラムを永久抹消しました。友好情報に『客神』『幼神候補』を追加しました』
む? なんか大丈夫そう……?
と言うか、金と銀の因子に青の瞳とは、聞き覚えのあるフレーズばかりだな。
「……」
「……えーと、大丈夫」
『対話データを参照「……高速飛翔物体ね、それは僕が作った物だよ」参照完了』
「大丈夫です。当機は正常です。ユキ様は機殼星出身でしょうか?」
唐突な様付けだが、裏の声が聞こえているので理解は出来る。
マシナティア……も知らないね。ニホンと言いトウキョウと言い。知らない単語ばっかりだよ。
「マシナティアは知らない名前だね」
「そうですか……」
『目的を達成。個体名ユキが持つ技術体系の調査申請を行い——』
「——良いよ。教えてあげる」
敢えて被せる様にイヴの思考を遮った。
ずっと垂れ流しじゃ可哀想だからね。
『……対神霊用対話プログラムを起動します——』
そんな言葉を最後に、イヴの裏の声は聞こえなくなった。
「その代わり、其方の技術体系も教えて欲しいな」
「分かりました。星核機装船へご案内します」
戦争と後始末は黒霧達に任せ、僕は1人、新たなる未知の探求を始める事にした。




