第110話 そんな事よりお昼ご飯
第四位階上位
昼頃に目を覚ますと、港公国が大変な事になっていた。
まぁ、公国がどうなろうと私の知った事では無いので、優雅にランチを取りつつ対応を考える。
今日のお昼は紅花のリクエストで鶏肉尽くしだ。
骨つき鶏モモ肉の白ワイン煮を白ワイン片手に召し上がっていらっしゃる白夜の横で、紅花やクラウは唐揚げをもきゅもきゅ食べている。
そんな紅花やクラウをみて、白夜は嘲笑う様に鼻で笑った。
「……ふ」
クラウが起動するのは至極当然の事だろう。
「……こころもからだもこども」
「……わ、私は大人だからね。子供の言う事なんて間に受けないのさ」
そう言う白夜は、頰を引きつらせている。
早くも仮面が剥がれ始めた白夜に対し、クラウは心底驚いたと言わんばかりに追撃する。
「……びっくり。こどもなのはからだだけだった?」
「ふ、ふふ……」
口角が痙攣した様に動いているのは、白夜の己を律せんとする努力の結晶だ。
そして陥落寸前の証でもある。
「……ていせい。こどもなのはむねだけだった」
「う、うぅ……」
潤んだ瞳には決壊が秒読みとなった心の汗が、その時を今か今かと待ちわびている。
そんな白夜に、クラウがトドメの一言を言い放った。
「……あ……りかい。いっしょうちいさいからおとなぶった」
「い、いい、一生とか限らないし! 次進化したら絶対ドーンと——」
「——しんぱい。むりしないで?」
「むきー!!」
一片の陰りも無い様に見える顔で、クラウは白夜の肩に手を置き、白夜はその手を払い除ける。何時もの風景である。
——しかし、今はクラウの刑が執行中なのだ。
クラウの更なる追い討ちが白夜の涙ダムへと襲い掛かる。
「……ていせい。いっしょうじゃなくてぜんしょう?」
「お、お前っ。後で大きくなったら覚えてろよ!」
「おっきくならないからわすれる」
「う、うう、うえーん!」
ダムを決壊させられた白夜は、一瞬私の方を見てから、皿とグラスを持って机の下に潜り込んで行った。
まぁ、彼女も1人になりたい時くらいあるだろう。
しかし、クラウは同じく唐揚げが満載された皿を床に置くと、自分も床に座り込み、机の下の白夜をじーっと見つめながら唐揚げを食べ始めた。
どうやらクラウからは逃げられ無いらしい。
そんな、決して上品では無い騒動が起きている一方で、新規参入のテリオヌスことテリーは料理に感動したらしく、一口一口噛み締める様に食べていた。
料理の研究とかし始めそうである。
またもう一方では睡蓮と茉莉花が向かい合って照り焼き定食を箸で食べている。
挟んで食べる睡蓮とぶっ刺して食べる茉莉花は、見た目が似通っているからこそ対象的だ。
時折睡蓮が茉莉花の頰を拭う姿は、母娘そのものに見える。
天殻樹のルメールは、私の頭程もあるジョッキで果実酒をぐびぐび、いやざざーっと飲んでいる。
視覚的にはだまし絵の様な違和感があるが、毎食の光景なのでもう慣れた。
セロ、ロニカ、リーンの3人に加えて人妖猿のキースが、家事ドールさん改めオルメルさんが炭火で焼く焼き鳥を食べながら一杯やっていた。
4人とも大食漢な所があるので、オルメルさんの手は高速で動き続けている。それでも笑みを絶やさないのは流石と言えるだろう。
気管や鶏冠、銀皮なんかは私も食べた事が無いので、少し気になる所である。
匂いにつられて机の下から這い出して来た白夜と、唐揚げを全部もきゅもきゅし終えた紅花&クラウ、香草焼きを食べ終えたテリーなどが、幽鬼の様に揺らめきながら焼き鳥のブースに歩いて行ったので、黒霧の端末を援軍として呼んでおこう。
◇
黒霧の援軍。
それは拳の戦いにミサイルを投下するのと同義だ。
最終的に昼食は焼き鳥大会となって終わった。
途中クラウと白夜が競い合う様に食べ始め、紅花に『味わって、食べると、良いと思う、ぞ』と諭されてシュンとしたり、『皮うまー』と貪り食っていた白夜へクラウが『びろびろべちゃべちゃ』と呟いて戦争、虐殺が起きたりした。
その他にも、素材の旨味を引き出す塩派を主張するテリーと、それならばとタレ派に回ったルメールが静かなディベートの後に和解したり、監視の任務がある為に昼食を食べ損ねている事に気付いたレスタが昼食を取っているメンバー全員に念話でぐずぐずと文句を言って黒霧に叩かれたり。
とまぁ、楽しい昼食の時間を過ごした。
……さて。公都で起きたクーデターはどうしてくれようか。




