第97話 組織スノーブラック 五
第四位階中位
カフェに入って2人の話を聞いた。
「……つまり、放っておけば治るって事か」
「そう言う事……らしいよ?」
今朝目覚めると、フード付きマントやサングラスと共に紙が置いてあったらしい。
内容を簡潔に纏めると、限界突破で眠っていた因子が覚醒した。と言う事になる。
放っておけばある程度元に戻るが、完全に戻すには強くなるか特別な治療を行うしか無い様だ。
「詳しくは後で会った時に話すが、概ね3〜5日程で殆ど元に戻るだろう。との事です」
「殆ど、ね……どのくらい残るんだ?」
「紙に書いてある事を信じるなら、うちは髪に白いのが残るって」
「私は最終的にどちらか一方の目に行動阻害の刻印が定着するだろうと書かれていました」
ふーむ。……悪くなるって訳じゃ無いんだろうか?
「何処か体調がおかしかったりとかはするか?」
「私は特に……目が凄く良くなってるくらいですね」
「うちは……体が軽くなってるかな? 後、凄く音がうるさい」
「音か……辛く無いか?」
「ちょっとね……でも、このフード被ってると全然うるさく無くなる」
そう言うと、リエはどでかいフードをバサリと被った。
見た所いつも通りだし、問題は無さそうだな。
「アケミは何か困った事無いか? 何でも言ってくれ」
「うーん……」
アケミは暫く悩む様な素振りを見せたが、直ぐに口を開いた。
「一応、リベリオンの団員として一つ。私はサングラスをかけるか目を瞑らないと魔眼が暴発するらしいです」
「暴発って……今外してるけど、どうなんだ?」
「一定以上の強者には意識して強めない限り効かないらしいですね」
今一効果を感じないから首を傾げ様とした所で、エミリーから声が上がった。
「ああ、通りで。先程から指先が上手く動かないと思っていたんですが、そう言う事だったんですね」
「これはすみません。直ぐ付けます」
「あ、動く様になりました。凄いです」
要するに、視界に入った対象を無差別に行動阻害するって訳だ。……それにこの感じ……。
「……魔力も勝手に消費されるのか?」
「え? 良く気が付きましたね。実はそうなんですよ」
「やっぱりか……俺も限界突破以降ちょっと鋭敏になってるみたいでな」
しかし、常に魔力消費するのは厄介だな。まぁ、サングラス掛けてれば問題無いみたいだが。
ともあれ、これでリベリオンは誰一人欠ける事無く、あの大事件を乗り越えられた事になる。
「……よし、今夜は宴会だな」
『では、その様に用意致します』
『…………』
……まさか全部聞いてたりとか?
『私はスノーブラックのナビゲーターですから』
その声は、心なしか誇らしげに聞こえた。
◇
訓練施設と大浴場を見て回った。
訓練場には様々なレンタル武器があり、ドール相手の対人想定訓練や、案山子を使った試し斬りなんかが出来る様になっていた。
一番凄いのはVRゲームを利用した訓練で、仮想空間で仲間と本気で殺しあえる仕様、とあった。
いや、まぁ、仮想空間じゃないと無理な話だよな。
大浴場は、様々な温泉施設がある素晴らしい所だった。
各性別用の施設に加え、水着着用が必須の混浴施設もあり、風呂から上がればそこにはのんびりと寛げる癒し空間が広がっている。
アイスや乳系の飲料にお酒とそのツマミが販売されていて、ちょっとしたボードゲームなんかも用意されている。
至れり尽くせりな施設だった。
そう言った施設を見て回り、昼飯に戻ってから、夕飯の宴会予定時刻までゲームコーナーで遊ぶ事にした。
仲間達の思わぬ才能を見出したり、今まで見る事の無かった一面を発見出来たりと、とても有意義な時間を過ごし、休息の大事さと言う物が身に染みる様だった。
現地民、転生者問わず、皆が楽しそうにしているのを見ながら、この何処か懐かしい非日常を日常に変えると、改めて決意を固めた。
・幸せあにまるず
謎の銀髪美少女監修のほのぼの系スローライフゲーム。
登場キャラクターである『ふわミン』はキット、もといピンク色のウサギ王と愉快な仲間達がモデルらしい。
主人公は魚を釣ったり虫を捕まえたり山菜を摘んだり野菜を育てたりしてのんびり暮らして行くみたいだ。
様々な目標が幾つか存在し、それを全て達成すると一応のゲームクリアとなる。
ゲームをクリア出来た廃じ……ふわミンが大好きな子達には、プレミアムふわミンの購入権がプレゼントされる様だ。
それ以外にも、称号『ふわミンの友』が与えられ、会員証にお好みのふわミンを表示出来る様になるらしい。
……そして、更に更に特別な条件を満たした子達には、なんと、ふわミンの世界——




