第89話 お話しする
第四位階上位
ナーヤ氏の魂魄を軽く解析し、魂魄表層から浅層に掛けての減少していた魔力や高濃度魔力を、ナーヤ氏の魂に合わせて調整してから補充する。
無調整の魔力をそのまま注入すると、最悪死んでしまう可能性があるので、慎重に事を行なった。
一応魔力的には問題は無いが、精神力は依然として消耗したままなので、それが回復するまでは満足に戦う事すら出来ないだろう。
まぁ、戦いに行く訳では無いので起こすが。
と言う訳で、手っ取り早く魂に衝撃を与えて起こそうと思う。
「えい」
「ひゃぁぁぁぁああっ!?」
「うぉえ!? 何!? 何したの今!?」
「ちょっと魂を……ちょこんとね」
驚く2名は置いておいて、目を白黒させているナーヤ氏にあれこれ説明を始める。
◇
「——状況は分かりました。私もマシロさんの為に手を尽くそうと思います」
「そうしてくれると助かるよ」
ナーヤ氏は細かい話をする前に、快く配下に降ってくれた。
三聖獣、建国王妃、剣仙、人形の魔女、とこれだけカードがあれば十分だろう。
後は細かい設定だが、クランゼル北の魔割山脈を越えた先に国でも作ろう。
S級魔境の灼海の先に国がある事にすれば、誰も確認に行けないので、多少誇張しても問題無いだろうし。
「それじゃあ今から詳しい話をしようか」
全員の顔を見つつ、三聖獣を迷宮へ転移させた。
迷宮内ならある程度魔力消費を無視出来るから便利で良いね。
「今回のカードは、三聖獣、建国王と王妃、剣仙、そして人形の魔女だ」
「お、おぉ……! 久しぶ——」
次の瞬間、クラディとゼーレがディヴァロアに蹴り飛ばされた。
迷宮の壁に衝突した2人には、特に外傷は無い。
「痛、くは無いけど……な、何でだ?」
「うぅ、やっぱりこうなる気は少ししてたけど……」
どうやら原因はクラディとゼーレの方にある様だ。
三聖獣はそれだけやると地面に座り込んだので、それ以上追求する気は無いのだろう。
取り敢えず今後の話を進めようか。
「さて、話を煮詰めるよ?」
◇◆◇
悪魔の襲撃とその終息から数時間。
重大案件専用の執務室にて多くの文官と共に様々な問題の対応を行なっていた。
最大の功労者たる冒険者集団『リベリオン』の主力達は未だ目覚める気配を見せず、街の至る所でリベリオンの団員達が怪我人の救助と治療をしている。
——最大の危機は去った。
地下聖堂では現れた邪神と戦ったと思わしき激戦の跡が残り、それを討ち果たしたからこそ彼等は生きているのだろう。
彼等を救国の英雄として祭り上げ、少しでも民心を癒す。
舞い込む報告とその対処に追われながら、如何にして民へ寄り添うかを考えていたその時、それは唐突に現れた。
「やぁ、こんにちは」
「っ!?」
それらは何も無い虚空から、何の予兆もなく現れた。
誰からも闖入者を誰何する声は上がらなかった。
「忙しい中悪いね」
闖入者は4人。
顔を動かさずに周りを見ると、宰相と文官達は目を見開いて固まっていた。
「騒々しいのは面倒だからね、先に行動を封じさせて貰ったよ」
4人の内最も前にいた鬼面の少女が虚空に腰掛けた、その後ろにいたのは——
「——初代様……?」
「お、おう」
「まぁ、そうね……」
あのミスリルの輝き。間違いない……!
幼き日に忍び込んだ地下聖堂で見たクランゼル王国の建国王様と王妃様の像。
地下聖堂から消えていたのが気掛かりだったが、邪神の封印が解かれる時に動き出し英雄と共に戦うと言うのは本当だったのか……。
「こ、こんにちは、レイガス。久し振りね」
「な、ナーヤ、先生……?」
更に後ろから顔を出したのは、忘れもしない。
賢神と呼ばれる現人神、グリエル様の直弟子である、剣の仙。ナーヤ先生。
「ナーヤ……」
「先生……?」
『ぶふっ』
「はまり過ぎだろ……!」
「似合い過ぎよ……!」
「むぅ……」
和気藹々と話す3人の強者を、まるで従えるかの様に現れた、この鬼面の少女は一体何者なんだ……?
「さて、現国主レイガス・クランゼル君、並びに国政に携わる御一行……ちょっとお話し、しようか?」
鬼面の少女が言い終えると同時に、辺りが光に包まれていった。




