第79話 リベリオンと蒼銀の光
※540万PV達成
第四位階中位
可及的速やかに、且つ慎重に長い階段を下りていると、それは起きた。
最初、それは風に感じられた。
地下深くから唐突に風が吹いたのだと思った。
次の瞬間、ゾクッと背筋が震え、歩みが止まった。
——それは波紋。
死と恐怖の化身が現れた事による、世界の悲鳴。
直感的に封印が解かれたのを理解した。
「……何だよ……邪神の封印を解く前段階じゃなかったのかよ……」
確信を持って、俺はその言葉を吐いた。
だってそうだろ?
あんなやばい気配を放つ存在が、早々いる筈が無い。
地下の暗がりから何か得体の知れない化け物が這い出てくる姿を幻視した。
それは今直ぐにでも訪れる未来だと理解した。
——逃げなければ死ぬ。
それは厳然たる事実だった。
しかし——
「……っ」
——振り返った先には、まるで臆した様子を見せないティアーネとエリザがいた。
険しい表情だが震えるでもなく、ただ背負った大剣に手を添えているティアーネ、その青く澄んだ瞳と目があった。
見つめ合ったのはほんの一瞬。
1秒にも満たない僅かな時間。
その瞳には一抹の不安が見て取れた。
次の瞬間、俺の口から溢れたのは、感じた恐怖への無意味な悲鳴では無く、恐怖からの逃避を意味する撤退の二文字でも無かった。
「……お前ら、大丈夫か?」
いつも通りの声音に、自分でも驚いた。
しかし、その言葉の意味を、俺はしっかりと理解していた。
リベリオンのリーダーとして、隊員の命に責任がある。
リベリオンのリーダーとして、仲間が1人でも逃げないのら、その隊員と共に戦う義務がある。
リベリオンのリーダーとして、全員が諦めたとしても歩みを止める事は出来ない。
誰よりも前を進み、何が起きても動じる事なく、仲間を率いて行く。
それがリベリオンのリーダー。俺が立たなければ行けない場所だ。
「無理な奴は引いて良い。此処から先は命の保証は出来ないからな」
問うた視線の先には、震える仲間達の姿があった。
あれが、ティアーネやエリザがいなかった時の俺の姿。
此処で仲間達が引いても、俺はそれを責める事は出来ないし、逃げるのは当たり前の事だ。
果たして——
「……お、俺は行くぞ。大将が行くんだ、リベリオンの盾として、此処で引く訳にはいかねぇさ」
「コウジ……」
若干声音が震えているが、コウジはその頼もしい大盾を掲げ、胸をドンと叩いて見せた。
「うちも……癒し手はうちしかいないし、誰か1人でも進むならうちも進むしかないでしょ」
「わ、私が逃げたら誰がリベリオンの斥候をすんのかって話っすよね……」
「敵の力を把握するのが私の仕事です。私が居れば勝てたかもしれない……。そんな後悔はしたくありません」
「ミラ様を助けるまで帰るつもりはありませんよ? 誰も行かないなら私1人でも行きます」
「僕も、君に選ばれて此処にいるのだから。君が望む結果を出すのが、共に来た仲間としての義務じゃないかな?」
皆が皆、前を見詰めている。
タダトがいつにも無い優しい笑みを浮かべて言った。
「……いつでも頼れ。俺はそう言った筈だぞ」
「タダト、皆……」
ふと、見上げた視線がティアーネと交わる。
その青い瞳には、もう一切の不安は感じ取れなかった。
「ふふ、ユーイチ様。皆様の意思は固いようですわよ?」
エリザが微笑んだ。
「ユーイチ」
ティアーネは真っ直ぐ俺を見詰めて来る。
そうだ——
「——行こう!」
『応!』
いつも通り、皆の頼もしい声が響いた次の瞬間——
——蒼銀の光が闇を打ち払った。
「……な、なんだこれ」
暗い階段を照らすその光は、良く見るとマシロさんから渡されたアーティファクトから放たれている。
一番光っているのは、ついて来た真珠のゴーレムだ。
その光は俺達を優しく包み込んで行く。
ふと、感じていた恐怖が薄れて行った。
同時に、暖かい力が全身に行き渡る。
「……流石はマシロちゃんだな。これも想定していたのか……!」
そんなティアーネの感動した様な声に、我にかえる。
俺の口元に浮かんでいたのは、苦笑。
「ほんと、スズノミヤマシロってどうなってんだよ……」
呆れた様にそう呟きながらも、心強い助成に強く感謝し、地下へと歩みを進めた。
◇
程無くして、大広間に辿り着いた。
見えた物は、
バラバラになっている男女の像。
地にへたり込み、震えているミラ嬢。
部屋を二分する黒みがかった結界。
そして——
——瘴気纏う黒竜と異形の魔物が戦っている姿だった。
ヤーハ(菅原 健介) 18(+24) 男
LV36
・チートスキル
【言霊】
命令(大)
従魔術(中)
契約魔法(中)
支配(微)
使役(大)
調教(大)
・スキル
騎乗(小)
御者(小)
牧畜(微)
家畜統率(小)




