第64話 vs.ジャイアントレッドリザード
第四位階中位
最後に残ったジャイアントレッドリザードに魔法の雨が降り注ぐ。
しかし、ヒュージリザードには効いた魔法もジャイアントリザードには効きが悪く、強固な鱗には殆どダメージが与えられていない様に見える。
「コウジ、ユーゴは前方から、他は左右から攻撃して足を潰せ!」
ユウイチ氏の良く通る声が大広間の中を響き渡る。
前衛メンバーは即座に行動を開始した。
コウジ氏が化け物じみた怪力でジャイアントリザードを正面から押さえ付け、ユーゴ氏がブレスを吐かせない為に顎を抑える。
そしてアルベルト氏がヒュージリザードにやった様に見えない盾を出して動きを抑制した。
出来た大きな隙に3人の剣士が迫る。
「らっ!」
「ぬんっ!」
「はっ!」
ユウイチ氏とタダト氏が右前足を、ティアーネ氏が左前足をほぼ同時に攻撃した。
使った技は、剣術奥義『斬鉄』。
竜には弾かれたその一撃は、見事にジャイアントリザードの両前足を切り落とした。
——GYAaaaaaaAA!?
大広間にジャイアントリザードの悲鳴が木霊し、両前足を失った大蜥蜴がアルベルト氏の盾を破壊してめちゃくちゃに暴れ回る。
「退避! 奴が疲労するまで遠距離攻撃に徹しろ!」
前衛メンバーが蜘蛛の子を散らす様に逃げ出す。
次の瞬間、キミト氏が投擲した炸裂玉がジャイアントリザードの両目に直撃した。
先程の悲鳴にも匹敵する大きな声が響き渡り、ジャイアントリザードが先に倍する程の激しい動きでのたうち回る。
針や銃弾に水の槍、ピンク色の光線や炸裂玉がジャイアントリザードへ雨あられと降り注ぎ、その隙にリエ氏が前衛の細かい手傷や疲労を回復させて行く。
ジャイアントリザードが必死に暴れ回るので、大広間に落ちている赤い小石がかなりのスピードで弾かれて飛来する上、ブレスが見当違いな所に吐かれているとはいえ地味に危険だ。
残念ながら針や光線、炸裂玉は大したダメージになっていない様だが、テルオミ氏の狙撃やエリザベート氏の回転を加えた水の槍は鱗を貫通してダメージを与えている。
程無くして、死に物狂いで広間を暴れ回っていたジャイアントリザードの動きが鈍くなった。
「よし、攻撃に移る! 今度は後ろ足を破壊して完全に機動力を奪うぞっ!」
ユウイチ氏の指示を受けて先と同じ様に皆が動き、ジャイアントリザードの両後足は見事に切断される。
今度は先と違って機動力を奪われた為か、アルベルト氏の盾も破壊される事は無く、口を押さえられているからブレスを吐くことも出来ないジャイアントリザードは、必死に手足の無い体をくねらせ、尻尾をブンブンと振り回している。
「ティアーネ、トドメは任せた!」
「任された」
ティアーネ氏は掛け声と同時に大きく跳躍してジャイアントリザードの頭に飛び乗ると、剣にオーラを纏わせ、弱点である脳目掛け、逆手に持った大剣を突き下ろした。
真紅の大剣は深々と大蜥蜴の頭に突き刺さり、それをティアーネ氏が力任せに引き抜いて、ジャイアントレッドリザードは息絶えた。
◇
「皆忘れ物は無いな? ……よし、撤収!」
その掛け声と同時に、ロアの引く荷車がゆっくりと動き始めた。
エリアボス討伐報酬として出現した木の宝箱には、長い事討伐されていなかったからかレアなアイテムが入っていた。
アケミ氏の鑑定によると、剣一本分程の赤いインゴットは希少金属であるルジェ。
魔法符は中級爆裂魔法の『フレアマイン』。
そして最後は、ここ数日くらいから出る様になった精巧な魔物の絵が描かれた手のひらサイズの魔鋼の板。
1台目の荷車には宝箱から入手したアイテムと解体したビックレッドリザードの素材やジャイアントレッドリザードの手足を詰め込み、2台目にはレッドリザードの素材を満載した。
残りのヒュージレッドリザードとジャイアントレッドリザードは、力持ちのメンバーによる運搬だ。
怪力のコウジ氏とユウイチ氏、ユウゴ氏、アルベルト氏でジャイアントレッドリザードを運び、ティアーネ氏とタダト氏、アコ氏と分身、俺達がそれぞれヒュージレッドリザードを運ぶ。
これで肉に関しては準備完了だと思う。
野菜とお酒は地上で揃えられるし、後は下準備かな?
ティアーネ(?????) 20(+??) 女
LV52
・チートスキル
【武の天才】
武術(中)
闘術(小)
身体強化(中)
再生(小)
索敵(中)
隠密(小)
思考加速(小)
直感(大)
【選ばれし勇者】
金の因子(極微)
・スキル
武術(中)
闘術(小)
能力増強(中)
治癒力向上(小)
思考明瞭(中)
負耐性(微)
精神耐性(中)
痛撃耐性(中)
疲労耐性(大)
睡眠耐性(大)
◇
〜その頃の銀髪鬼面〜
「よしよし、経過は順調だね」
抜ける様な青空。
遥か空の上で、少女は黒い翼を羽ばたかせ、地上にある街を見下ろす。
「うん、各部隊はそのまま野良迷宮の攻略を続けて。深部に到達したら待機する事」
空には少女以外誰もいない。
聴く者がいない筈の言葉を、少女は手に持つ本に落とし込んでいる。
「三鹿は鹿軍と共に引き続き無名の森の地図埋め、竜は魔割山脈を西から東へ、それじゃあ皆、よろしく」
少女は本を閉じると、そっとため息をついた。
「……はぁ……もう一段階くらい進化すれば使いやすくなるかな」
そう言うと、少女は改めて街を見下ろす。
「さてさて、私も迷宮の侵略を始めようか」
黒い翼を羽ばたかせ、少女は街へと降りて行く。
それを見た者は誰もいない。
迷宮都市クラット。
リベリオンが竜を討伐したと言う知らせに浮き足立ったその街に、銀髪の少女が紛れ込む。




