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【書籍化】錬金術師ユキの攻略 〜最強を自負する美少女(?)が、本当に最強になって異世界を支配する!〜  作者: 白兎 龍
第?章 Another Chronicle 第一節 叛逆の追憶記

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第60話 三聖獣

第四位階中位

 



 アルタイル一号でエミリーに散々怒られ、泣かれ、慰めて、エミリーが落ち着いてからアルタイル三号に移動した。



 そこにあったのは、事前にリエに聞いていた、赤竜の首。



 物珍しさからか討伐班や防衛班の殆どが後方に集まっていた。



「それじゃあこの首は解体せずにクラットまで運ぶって事で良いな」

「そうですわね」

「しかし流石は竜ですね。首だけになっても完全に死んだ訳では無い、とは……一体どのような原理で……」



 物知りなエリザや元医大生のリョウタと首の処理について話し合い、クラットまでの2日間血抜きもせずに運ぶ方針で決まった。

 同席したリエや他の転生者も、ゲーム知識から竜の血は捨てない方が良いと言うので、結局竜の首は落とされたまま持って行く事となった。


 エリザの話によると、初代ルステリア王は竜を倒し、その血を浴び、飲む事で強大な力を得られたと言う。

 その力で魔物の領域を開拓して行った為に、ルステリア帝国やその他の国々はドラゴンスレイヤーを最高位の称号に据えているのだ。

 


「そうだな、口裏合わせはどうするのだ?」



 ティアーネのその言葉に、全員の視線が俺に集まる。


 それが一番の問題だ。

 少しだけ思考し、考えを述べた。



「……赤い竜は俺たちが倒した事にする」



 実際そうするしかないだろう。

 首を持ち帰っているし、討伐された事は事実なのだ。



「でもユウイチ氏、そうなると、何故体の方を持ち帰らなかったのかー。とか言われそうだけど……」

「ああ、だから更に魔物の襲撃があった事にしようと思う」



 ノリヒコの言葉に、適当に考えた作戦を話す。


 流石に青い竜が現れて赤い竜を一瞬で殺したとか報告すると、新たな脅威が現れたとかで、ただでさえ戦力的に余裕の無いクランゼル王国が更なる劣勢に立たされるのは間違いない。


 青い竜に遭遇したエリザとアコは敵対したら国が滅ぶ危険性があるとか言ってたし、ティアーネは敵じゃないと思うと言っていた。

 ここはティアーネの勘を信じて国やギルドへの報告はせず、最低限青い竜への備えはリベリオンだけで行う。



「仮想敵はどうするっすか? 流石に青い竜の事を話したらまずいと思うっすけど……」

「となると、竜よりも下位の魔物で、俺たちが撤退を判断する程の規模、か……何それ、やばくね? 無理くね?」



 コウジの言葉に全員が唸る。


 竜を倒せなかったと言う事は出来ない。

 竜は頭が良い生き物だから、反撃を恐れて国軍を動かす事態になり兼ねない。


 その上俺達は結果的に誰一人欠ける事なく、その上無傷だ。

 どう見ても壊滅的打撃を受けた様子では無い。



「……むぅ、リベリオンが余力を残しつつも撤退する理由であり、尚且つ人里に危害を加える可能性が低い魔物か……むむむ」



 そんな都合の良い生き物がいるだろうか。いや、いない。


 そんなどうでも良い思考が頭をよぎった。


 ……っか、まじ無理じゃん。



 皆が皆どうしたものかと頭を抱える中、アルがポツリと呟いた。



「……シュザロア」

「「それだ《ですわ》!!」」



 それに反応したのは、リエとエリザの物知りコンビだ。



「シュザロアって何ですか?」

「聞いたことも無い名前であります」



 エミリーとテルオミが俺らの疑問を代弁してくれた。

 ……しかし、どっかで聞いた事がある様な名前だな。



「皆さんロアは知っておりますでしょう?」

「うちらが酒場でいつも注文してる安くて美味しいお肉だよ。クランゼル王国の肉料理と言ったらロアの肉って言われてるけど、知ってるよね?」

「ああ、そう言やそうだな……確かロアとか言ったっけ。あれがウメェんだよなぁ……! ……じゅる」



 確かに、そんなのいたな。


 大きな筋肉質の鹿で、クランゼル王国周辺に生息する固有種。


 クランゼルで肉料理と言ったら大鹿のロアか、或いは南のエルデホート港公国にいる大牛のバルだろう。

 大型馬車であるアルタイル号を二頭で牽引出来る力持ちだ。



「シュザロアはクランゼル王国三聖獣の1つに数えられている」

「三聖獣でありますか……」

「一体どの様な逸話があるでござるか?」

「それについては私がお話し致しますわ」



 説明好きのエリザによると、三聖獣とは初代クランゼル国王に協力した巨大な鹿型魔物の事を言うらしい。


 圧倒的な剛力で遍く外敵を打ち砕く『ディヴァロア』。

 物の持つ重さを操り、竜をも下す『ティオロア』。

 無数の鋭い刃を持ち、森を切り拓いた『シュザロア』。


 これらを三聖獣として奉り、ロアをクランゼルの隣人として時に敬い、時に有り難く頂くのがここの文化であるらしい。



「——クランゼルの建国伝説によると、ディヴァロアとティオロアは森の深部に入った切り戻って来ていないそうですが、シュザロアは初代国王が存命の内は国に残っていたそうですわ」

「それに、シュザロアの角から作られたとされている魔剣が国宝として残っているらしいよ。……ロアの大群を率いる巨大ロアと遭遇した事にすれば……クランゼル王国から兵が出る事は無いと思う」



 成る程……妙案だ。


 だが……。



「……建国っていつの話なんだ?」

「クランゼル王国の建国王は開拓王とも呼ばれていますわ。国の歴史は短く、おおよそ300年と言ったところですわね」



 300年……。



「……寿命で死んでるじゃないか?」

「ユウイチ、不勉強過ぎ。……ドラゴンみたいな強い魔物は病気や何かで死なない限り1,000年でも2,000年でも生きるって言われてるんだよ」

「「「「マジかよ」」」」

「あんたら……」



 じゃあ聖獣とまで言われるシュザロアなら300年くらい生きてても不思議じゃない、か。



「ならその線で行こう。幸い竜の首は刃物で切られた様な切り口だしな」



 そうと決まれば後は詳しい内容を煮詰めるだけ。


 しばらくの間皆でしっかりと話し合い、シュザロアの特徴については周知徹底させた。



「では纏めるぞ。……私達ははぐれ竜と無事遭遇し、戦闘を始めた。拮抗する事しばらくすると、正体不明の巨大ロアとロアの大群が乱入、巨大ロアの鋭利な角によって竜の首が刎ねられた。ユウイチの判断により即座に撤退し、たまたま落ちていた首を私が拾った……うむ、私は穴の無い説明に感じるが、皆はどうだ?」



 ティアーネが改めて作り話を纏めた。


 中々良い出来じゃ無かろうか?


 戦場から遠い後衛陣には剣が突き刺さった様な巨大ロアが出たと言う様にしてあるし、前衛陣は剣が生えた様な巨大ロアと言う様にしている。

 体毛や角の色も伝説通りにしてあるので、特に不審な点は無い……と思いたい。



「うちは良いと思う。強いて気になる所を上げるなら……ロアの大群が何処から来たのかなって思う」

「……そうだな……まぁ北アシュリア大森域の方から来た様だとでも伝えれば良いだろう……念の為北アシュリア大森域に帰って行ったとも報告するか」



 現状やるべき事も終えたし、後はクラットに向かうだけだな。



 

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永遠未完『魔物解説』……ネタバレ含む。

よろしければ『黒き金糸雀は空を仰ぐ』此方も如何?
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