第26話 不死なる者達の来襲
第三位階上位
本を開き、配下を召喚しつつ、前線へと歩む。
邪魔にならない様に小さく足が速い子達を先に召喚し、波が引く様に開いてくれた人達の隙間を歩く。
何故かどんどん隙間が広くなって行くので、大きい子達も召喚出来る。
最前線の更に先に出た所でデカスラさんと騎士像さんと戦士像さんを召喚する。
「ふむ、我が君、御命令を」
「強い不浄を感じる。何をすれば良い?」
大きく重い声で問い掛けてくる二像。
うさーずの6匹はさっさとデカスラさんの中に入って行った。
思っていた以上に大きくなっていた蟹さんと蜘蛛さんは、ゴーレムさんと一緒に小さな子達を守りながら闘う模様。
ワンワン軍団は皆真っ白になっていた。
デカワンワンの配下で戦うのかと思ったが、デカワンワンがウルルに従っている様なのでウルルの配下の様な感じだ。
「……二人はレッサーリッチ、空飛ぶ骸骨を倒して。皆はゴーストやワイトを狩りつつデスナイトを集中して狩って欲しい」
「承りました、必ずや遂行して見せましょう。我が君もどうかお気を付けて」
「任せておけ、全て叩き落としてくれる」
風に含まれるのは腐敗臭、怨嗟の声。
森からのっそりと現れたのは腐敗した人の死体、骸骨、他色々。
魔水晶は既にメイド服のあちこちに仕込んである。
魔力吸収の魔法を全身で使えば低い出力を補って魔力を回復出来るだろう。
最後に僕はインベントリから結晶大王蟹の蒼壊槌を取り出した。
「皆、行くよ!」
「ウォン!」
「『カルキノス』!」
アンデットの大軍へ向けて駆け出した僕達。
それに続く様にプレイヤー達が咆哮を上げて動き出すのが分かった。
頭上には大量の魔法や矢が飛び、確実にゴーストやワイト周辺に当たっている。
僕が狙うのは一番前にいるレッサーリッチ。
二像へ腕を突き出し魔法陣を展開しているそれ目掛けて、カルキノスの怪力で飛び上がる。
「カカッ!?」
一瞬で長い距離をゼロにすると、驚いた様な音を立てるレッサーリッチへ、魔力の消費を考えない一撃を叩き込む。
「っ!!」
「カカ——」
バキャッッ!!!
頭と胴体を纏めて叩き潰す軌道で放たれた一撃は、レッサーリッチを粉々に粉砕し、その飛沫が散弾となって下の魔物に降り注ぐ。
落下地点にいた魔物を軽めの一振りで吹き飛ばし、次の獲物を物色する。
魔力吸収は発動済み、この調子なら数分は持つだろう。
次の獲物に向かって進み、途中のゾンビやスケルトンは、時に鎚で、時に蹴りで薙ぎ払いつつ駆ける。
時折聞こえる轟音は騎士像さんか戦士像さんか、あるいはティアだろうか?
飛び上がり、次の獲物に鎚を振るう。
「っ!」
ビシッパリィン!! バキャッ!!
魔法で結界を張っていたらしいレッサーリッチを結界ごと破壊する。
しかし、結界の成果か破壊された飛沫は飛び散るだけで、副次効果は期待出来ない。
……やはり思った通り、『結晶大王蟹の御霊』は『結晶大王蟹』の力を完全に再現出来ている訳ではない。
僕の力不足かそれとも元々そう言う仕様なのか?
どうであるにせよ、魔力を意図して操作すれば能力を高める事が出来るのだから、僕の力不足だと言える。
《レベルが上がりました》
うむ、幸先が良い。
とにかく倒して倒して倒し続ければやがて終わりも見えるだろう。
暫くは何も考えずに鎚を振るい続けよう。
◇
《レベルが上がりました》
逃げ続けるレッサーリッチを追いかけ敵を薙ぎ払い、ようやく四体目を倒した所でタイムリミットだ。
安全地帯まで撤退して魔水晶を入れ替える必要がある。
戦いの最中、周囲を纏めて薙ぎ払ってみたり全力で走ってみたりと軽く検証も交えていたので、カルキノス発動時の身体能力はある程度把握している。
外壁の高さは概ね三十メートル程、上に飛び乗る事は可能だ。
敵を薙ぎ倒し、外壁の下まで撤退、上へ向けて飛び、着地。
目の前に居たマヤが目を丸くして驚いているのが目に入った。折角だから写真撮っておこう。
「ユキ君、お疲れ様!」
「ああ、まだ戦うよ?」
同じく外壁の上に居たユウミが声を掛けてきた、喋っている暇は無いので魔水晶を入れ替える。
ユウミとマヤは魔力が尽きている様なので、ついでに回復させておく。
「『魔力譲渡』」
「………?……!?」
「あ、魔力が……ユキ君、ありがとう!」
「続けて戦ってね」
「……わ、分かった」
「うん! 任せて!」
二人が魔法を詠唱し始めたので、僕も入れ替え作業に移る。
このメイド服は、服のあちこちに何かを仕込める様な作りになっていて、スカートの中身は魔境である。
入れ替えている間は暇になるので、戦況の把握に努める事にしよう。




