第26話 捕まえた黒いのを見せて驚かそうとした
第四位階中位
洞窟エリアを侵略するにあたって、何処から侵略を開始するかと言う問題があった。
鬼2人の情報によると、洞窟エリアは大まかに分類して3層存在しているらしい。
硬い岩とそこで生きるのに適した進化を遂げたらしい地を這う様に低い植物がある『地上』。
ゴブリン達が住んでいた、長年の拡張により迷路の様に入り組んだ『地中』。
比較的強い魔物が無数に存在する『地底』。
この場合、最も防衛に適しているのは『地底』だ。
敵が来る方向が一定であり、地形によっては一方から来る敵にのみ集中出来る。
と、言う訳で、僕は地底に向かったのだ。
◇
「——はっ……一体僕は何を」
ふと気が付くと、其処は大広間の中だった。
何か怖い夢を見た様な気がするが、きっと気のせいだろう。
状態の把握を開始する。
今の僕のレベルは、55から3つ上昇して58になっていた。
残り魔力量はおよそ150%。
何かと交戦し、貯めておいた400%の内250%の魔力を消費した事になる。
体に残る倦怠感から、強い敵、もしくは無数の敵と対峙したのだと推測出来るが、今一良く覚えていない。
大きな黒い何かと小さな黒い何かの群れと戦った事は覚えているが、それ以外の記憶が曖昧であった。
取り敢えず狐と竜と悪魔のキメラみたいな状態を解除し、人型に戻っておく。
周囲の状況を確認すると、僕がいるのは大広間の中央。
すぐ目の前には侵略核が存在し、その侵略率は1%
大広間の出入口らしき大きな門の先ではドール達が何かと交戦中であり、その真向かいにある大きな門の先には金属製の宝箱らしき物が設置されている。
また一方では、戦場をチラチラと見ながらオロオロする赤鬼と、涙目でそれに縋り付く白鬼の姿があった。
一体何があったのやら……まぁ少し考えれば分かる事だが。
おそらく無数の黒い何かと言うのはコックローチ的な何かだろう。
そして大きな黒い何かとは、それの母体たるマザーコックローチ、或いはクイーンコックローチの事だろう。
……まぁ、確かな真実を知る方法ならちゃんと存在しているのだ。
僕の視界の端にある、黒くて大きなドロップアイテムを鑑定すれば。
「ぬぬぬ……」
目を凝らし、視界を狭めて黒い何かの上面を見る。
艶から見て、おそらくこれは甲殻だろう。
強力な魔蟲の甲殻は素材として十二分な価値があるし、ざっと試算してこれだけの大きさの甲殻があればドール達の装備を整えるのに十分な量である。
しかし——
「浄化。これは浄化だ」
——僕は迷わずそれを燃やし尽くした。
◇
唯一解せないのは、白鬼が半泣き状態になっている事だが……これは本人に聞いた方が早いかな。
「ねぇ——」
「ひぃ!? ち、違うんですっ! ほんの悪戯のつもりだったんですぅ! ごめんなさいごめんなさいゴメンナサイゴメンナサイ」
「……」
まぁ、良いか。
悪い事をしたのは白鬼の方らしいので、しばらくはこのままでも良いだろう。
パーティー欄を確認するに、ドール達は苦戦している訳でも無い様なので、先に宝箱の方を確認しよう。
「む?」
小部屋に入ると、見えたのは豪華な装飾が施された天井。
金や銀、宝石の中に上手いこと紛れ込ませている迷宮核らしき物の存在。
折角なので頂いておこう。
《【迷宮クエスト】『迷宮攻略への道:地下迷宮』をクリアしました》
【迷宮クエスト】
『迷宮攻略への道:地下迷宮』
参加条件
・地下迷宮の制御核の破壊、回収
達成条件
・地下迷宮の制御核の破壊、回収
失敗条件
・無し
達成報酬
参加者報酬
スキルポイント1P
《レベルが上がりました》
謎の玉を念動で外してインベントリにしまうと、クエストをクリアした。
どうやら今回収したアイテムは、住居核にとっての侵略核の様な物だったらしい。
言うなれば迷宮核の子機である。
これは良い拾い物をした。
そんな思いと同時に銀の宝箱を開くと、中にあったのは1つの革袋と……モンスターカード?
収納袋 品質B レア度4 耐久力D
備考:見た目以上に多くの物をしまえる魔法の袋。《小》。
魔物召喚板:『ビックコックローチ』 品質A レア度4 耐久力B
備考:ビックコックローチの魔物召喚板。
「なんだ、ゴミか」
取り敢えずマジックバックは回収し、モンスターカードはビックコックローチからビックスパイダーに改良しておいた。
まったく。こんな悪戯をする遊技神は一発じゃなくて十発くらい殴らないと行けないよね?
あわよくば魂核にデコピンの1つでもしてやらないと気が済まないよ。
神だし。魂核に攻撃されても大丈夫でしょ? それどころか魂核を壊されても大丈夫でしょ?
ふふふ、覚えていろよ遊技神。きっとこの迷宮にコックローチを配置したのも彼奴の仕業に違いない。
目に物を見せてくれよう。
取り敢えず今は洞窟エリアの侵略だ。




