第12話 ゴブリンさんこんにちは
第三位階中位
第8層。
其処は代わり映えのしない洞窟だった。
違う点は2つ。
水晶の代わりに光る苔らしき物が生えている事と、非常に入り組んだ地形であると言う事。
今までの階層が『迷宮《洞窟》』だったとしたら、この階層は洞窟そのものである。
そんな第8層に出てくる魔物は——
ゴブリン LV6
ハイゴブリン LV10
ゴブリンコマンダー LV14
——ゴブリンである。
武器は木の棍棒や木の槍が主で、中には弓を使う奴や石斧を持っている奴がいる。
そんなゴブリンが複雑な迷路の其処彼処に潜伏しており、コマンダーの指揮の元統率された動きで攻撃を仕掛けてくるのだ。
厄介と言えば厄介だが、コマンダー程度の統率力では使役出来るゴブリンは精々10体。
合計11体ぐらいのゴブリンなら、然程の脅威では無い。
ゴブリンは人型で武器を持っているので、ドール達の対人戦闘訓練に丁度良い相手だ。
取り敢えずは地図を全て埋め、少しレベリングをしてから侵略核を設置しよう。
◇
接近して来るゴブリンの群れへナイフを投擲する。
「ギッ」
「グギャ」
2つのナイフは狙い違わず、ゴブリン2体の頭に突き刺さり、その命を刈り取った。
続け様に火魔法を使って炎の壁を出し、ゴブリンコマンダーを焼き殺すと同時にゴブリン達の退路を断つ。
僕の猛攻に怯んだゴブリンへと3体の妖狐火が襲い掛かり、燃え盛る赤い炎がゴブリンを焼き殺す。
迷宮の中を聴くに耐えない絶叫が響き渡り、ゴブリン達は消える事の無い炎を消そうと必死に地面を転がっている。
妖狐火は召喚制限ありのモンスターだが、迷宮内の魔力を吸っている為その制限時間が非常に長くなっている。
それに、どうやら彼等は僕の尻尾と連動している様で、水竜人と淫魔の特性を出すと、炎の色が赤色から三色に変わる。
青い炎は水属性を宿し、水の吐息と同じ様な性質を持つ様になる。
黒い炎は闇属性を宿し、どうやら淫魔女王の支配能力が付与される様で、ゴブリンは燃えながらも僕の命令を聴く様になる。
銀の炎は、魔力濃度がやたらと高い。
つまりはより高次の敵と戦うのに使えると言う事だ。
妖狐火がゴブリンを3匹倒し、僕がゴブリン2匹とコマンダーを倒したので、後に残るはハイゴブリン5匹。
これをドール達と1対1で戦わせるのが、この階層での狩の仕方である。
槍と大盾を持つドールは、馬鹿正直なゴブリンの一撃を大盾で受け流し、槍で腕や足などの末端部位を攻撃している。
腕を攻撃すれば武器を落とし、足に攻撃すれば機動力を奪えるので、持久力のある槍持ち2体にはこの戦い方を教えているのだ。
剣や棍と小盾を持つドールは、同じく盾でゴブリンの攻撃を受け流し、槍と違って胴体付近を狙わせている。
魔法によりパワーを増しているドールの斬撃は、防具が腰ミノしかないゴブリンの胴体を容易く切り裂く事が出来る。
或いは武器と武器で斬り結び、盾で敵を攻撃させるなど、多数の攻撃手段を教えているので、しっかり練習に勤めて欲しい。
大剣を持つドールは、多少の被弾覚悟で武器を振るわせる様にしている。
一応は拳や脚を使った攻撃も教えているが、ドール程度に体術での戦闘は荷が勝ちすぎている。
大型の強敵相手では大剣の重い一撃が勝負の決め手となる筈なので、その訓練に従事させるのだ。
そんなこんなでハイゴブリン5匹は直ぐに殲滅され、僕等は次の獲物目指して迷宮攻略を再開した。
◇
「……うむ、攻略完了っと」
複雑且つ広大で薄暗い迷路の探索が完了した。
時刻はもう夜遅い。
ゴブリンをサーチ&デストロイしていたから時間が掛かってしまったが、それも修行の為である。
レベルは全員1つ上がり、僕はレベル15、ドール達は11になった。
探索中に、何故か迷宮の中央に丁度良い十字路があったので、明日はそこに侵略核を設置するとしよう。
丁度ここは袋小路なので、今日はもう休む事にする。
「それじゃあ皆、よろしくね」
ドールと妖狐火に声を掛け、硬い地面に布を敷いて眠りに就いた。
◇
「……ふぁ…………」
翌朝。
どんなに敵を近付かせない様に頑張っても、流石にドール5体と妖狐火3体では人妖狐の気配察知範囲に敵が来てしまう。
些か寝不足気味だが、迷宮内なのだから致し方あるまい。
それは兎も角として、迷宮の中央にやって来た。
道中現れたゴブリン達は昨日と同じ様に狩り、軽い運動の相手をして貰った。
早速侵略核を設置、起動する。
手順は簡単。
十字路の中心にコアを置き、起動と唱えるだけ。
本当にやる事はその後に始まるのだ。
ドキドキと心臓の音が聞こえて来た。
どうやら僕は緊張しているらしい。
「……はぁ」
軽く深呼吸をして心を落ち着ける。
「……さて……」
仲間の戦闘準備は万全。
ローブには魔水晶を仕込んであるし、心の準備も万端だ。
「……起動」
迷宮の暗闇に消えるかの様な小さな呟きに、侵略核はしっかりと応えてくれた。
とくんっと、それはまるで鼓動の様に。
迷宮に響き渡った小さな胎動、それに向けられたのは——
——敵意。
聞こえて来たのはゴブリン達の咆哮。
それは開戦を告げる銅鑼の音と同義。
——戦いが始まる。




