第8話 迫る黒い影
※430万PV達成
第三位階中位
階段を降った先は、4層と同じく洞窟だった。
「ふむ?」
5層に降り立つと同時に、僕目掛け黒くて大きな物体が飛来して来た。
白く、鋭い牙が僕の首筋へ迫り——
「キィッ!?」
——竜鱗の上を滑った。
ブラックバット LV3
蝙蝠である。
迷宮の指令で特攻をするしかなかった哀れな蝙蝠さんは、ナイフでさっくり首を刎ねた。
ドロップ品は、『黒蝙蝠の翼膜』×1。
僅かに闇属性を纏ったこの素材は、闇属性の魔法と相性が良い。
数を揃えて防具に加工すれば、ただの木材よりも強い闇耐性を刻む事が出来るだろう。
◇
黒蝙蝠を狩りながら進む事しばらく。
侵略核と5体のドールを発見した。
定期的にやって来る蝙蝠をドール達に任せつつ、侵略核を調べる。
どうやら、この階層の侵略率は70%後半と言った所で、地図も完成している様だ。
地図を見るに、蝙蝠達はドール達へ盛んに襲い掛かっている様だが、ドールは木製なので蝙蝠達の攻撃は殆ど意味を成さない。
発生する蝙蝠の数はそう多い物でも無いし、危険な兆候も特に感じられない。
この階層も、しばらく放って置けば支配権の強奪は完了するだろう。
ドール達の整備と地図の更新を終え、その場を後にした。
◇
《レベルが上がりました》
「お……やっとか」
第6層の入り口へ移動する途中、ようやく僕のレベルが上がった。
これで全メンバーのレベルが2に上がった事になる。
未だドール達の戦闘は特性頼りであり、攻撃を受ける前に敵を迎撃出来た事は数度しか無いが、それでもやはり、レベルが上がった分能力は上がっている筈だ。
この調子でレベルを上げていき、より高次の種族に進化すれば、戦闘力は飛躍的に向上するだろう。
その後、数度の戦闘を難無くこなし、第6層の階段へ到達した。
次の獲物は何だろう? とそんな事を思いつつ階段に一歩踏み出すと——
「……むむ?」
——雰囲気が一段と重くなった。
5層と6層では感じられる敵意に結構な差があるらしい。
人妖狐の部分は危険に対しかなり敏感らしく、その差をはっきりと認識出来る。
ドール達は特に何かを感じた様子では無いが、そもそも敵意と言うのは精神力による攻撃の一種なので、精神力の低いゴーレムではほんの僅かに動きが鈍くなる恐れがある。
また、本来なら殆ど消耗しないゴーレムでも、長時間敵意を浴びれば精神力を消耗し、寿命自体が短くなる可能性すらある。
……ただし、精神力を消耗すると言う事は精神力を使う事と同義だ。
しっかりとメンテナンスを行い、程よい敵意を浴びて戦い続ければ、やがては強い精神力を獲得し、確固たる意思を確立する事が出来るだろう。
即ち、6層からが迷宮の本番であり、そして真に成長を促す戦いの始まりでもあると言う事だ。
「ふふふ」
笑みが零れた。
——僕は強くなるのが好きだ。
強くなれば出来る事が増える。
出来る事が増えていけば更なる未知を見付けられる様になる。
だから強くなるのが好き。
他にも、強大な力を持つ敵から皆を守りたい。とか、死神や遊技神を一発殴る。とか、色々と強くなりたい理由があるのだ。
……ただ……特に強い理由はおそらくもう一つある。
あくまでも推測だが、僕に力を与えてくれる金の神は僕が強くなる事を望み、僕は無意識下でそれに応えたいと思っている……可能性はなきにしもあらず。
ともかく、僕は強くなるのが好きなのだ。
「……ふぅ」
軽く深呼吸をして気を引き締める。
おそらく第6層も僕の敵では無いだろうが、油断は大敵である。
取り敢えずの目標は第10層。
残り半分にどんな敵が待ち構えているかは分からないが、一歩ずつ確実に進んで行こう。
◇
6層。
4層や5層と違って、その通路は岩肌が剥き出しとなった足場の悪い洞窟だった。
壁際に生えている結晶も、心なしか光が弱い様に感じる。
そんな6層に、それはいた。
「っ!? 『水の吐息』」
咄嗟に放った水属性の激流は、迫り来るそれらを殲滅し、大量のドロップ品を地面にばら撒かせた。
——しかし、それはまだ生きていた。
大量のドロップ品の中から這い出したそれは、安堵に一息つき掛けた僕に高速で接近する。
蘇る悪夢。
走馬灯の様に走る今までの短い人生。
完全に硬直する僕へ、黒い影は真っ直ぐ飛来し——
「きゅう」
——グシャッ!




