第20話 vs.黒き魔物
第三位階上位
階段の先は塔の頂上、吹き抜けになったその場所からは、夕陽が差す遺跡の全てが見下ろせる。
中央には魔法陣があり、その真上には、地下にあった物より一回り大きな黒い結晶が浮かんでいる。
その横にいたのは黒い影。
? LV?
「あぁ? もう来ちまったか、使えねぇ木偶共が」
黒い翼に黒い尾、禍々しい黒い鎧で顔が半分隠れている騎士。
こいつが今回の件の犯人だろうか?
そいつは、僕等、特に僕を足先から頭の上までねっとりと見回すとニヤリと笑った。
「へへ、やっぱりかなりの上玉だな。こいつを捧げれば俺様もこんなクソみたいな仕事とはおさらば出来るってもんよ」
……どうやら黒幕は他にいるらしい。
こいつに連れて行かれれば黒幕に会えるのだろうが……ティアが泣くか。
僕の方へ歩み寄ってくる黒鎧。
勿論捕まってやる気はない。
悪鎧をじっと睨み、ナイフへ手を伸ばした——
——刹那、真横にいたティアが雷光の様な速度で飛び出し、黒鎧に向けて剣を振り下ろした。
「おっと、っっ!!?」
黒鎧は剣でそれを受け止めようとしたが、ティアの怪力が想定以上だったらしく弾き飛ばされる。
翼で急制動を掛け停止し、追撃に迫るティアの一撃を受け止めた。
「貴様! 私のユキに近付くな!!」
剣を押さえつけたまま振るわれたティアの二撃目
確実に当たると思われたその一撃はしかし——
——闇を凝縮した様な黒い魔力の剣で受け止められた。
「ぐっ! 馬鹿力の化け物がっ!!」
そのまま鍔迫り合いになり、一瞬は拮抗するも、ティアの怪力で徐々に押し込まれていく黒鎧。
黒鎧は魔力を練り上げると、それを体に纏い身体強化を施して押し返した。
ティアはバックステップで距離を取るが、黒鎧は追撃出来る程の余裕が無いのか荒い息を吐いている。
「はぁはぁ、くそがっ!!」
「ユキは下がってくれ」
「ああ、うん」
ティアの指示に従い、ウルルと一緒に後退する。ティアの怪力を押し返すとなると、確かに僕等では足手纏いだろう。
それからティアと黒鎧の剣閃が始まった。
打ち合い、斬り合い、防ぎ合い、時折ティアが押し込むも、黒鎧の魔法によって押し返される。
そんな攻防が続き、少しずつ、だが確実にティアは黒鎧を追い詰めていく。
今の攻防を見たところ、剣術の腕も身体性能もティアの方が上だ。
今は魔法で防がれているが、それも時間の問題だろう。
それに焦ったらしい黒鎧は、ティアと鍔迫り合いになると周囲を見回し、階段からひょっこり頭を出している僕と目が合った。
黒鎧はニタリと笑みを浮かべ、ティアに見える様、空中に黒い槍を生成し、僕へ向けて飛ばして来た。
込められた魔力の量から見て、この程度の攻撃ならどうとでもなる、と思ったが、ティアはそうでも無かった様で、槍を追いかけ叩き落とした。
その隙に、黒鎧は浮かんでいる黒い結晶に近付くと、その魔力を一気に吸収する。
体がドクンドクンと脈打ち巨大化し——
黒い毛が生え角が伸び——
剣はカランと音を立て地面に落ち——
——腕は鋭い爪が生える豪腕に変わった。
その熊の様な体には膨大な量の魔力が込められ、溢れ出している。
「ぐははははっ!! 力が溢れる! これが地脈の力かぁっ!!」
大声をあげて笑った巨大な獣は瞬時にティアへ近付くとその豪腕を横薙ぎに振るった。
ティアはそれを剣で防いだが、大量の魔力を込められた一撃は重く、ティアを吹き飛ばした。
「ぐあっ!?」
ティアは地面に剣を振り下ろし、突き刺す事で停止し、如何にか転落を免れた。
しかし——
「ぐ、ぅぅ!」
「おらおら!! さっきまでの威勢はどうしたぁ!!」
「ぐぐぐっ!!」
獣は立ち上がったティアに近付くと、ティアを押しつぶす様に左右から押し込み始めた。
ティアの怪力でも、膨大な魔力で強化された獣の腕力には敵わない様で、ぐいぐいと押し込まれていく。
このままではティアの勝機は薄いだろう、なので助けに入る事にする。
観察したところ、どうやらこの獣、取り込んだ魔力を十全に扱えていない様子。それ故魔力がドバドバと溢れ出しているのだろう。
それと同時に、魔力の扱いが粗雑な所為で、少し流れを見てみれば直ぐに弱点が見えて来た。
場所は人と同じ心臓部。
所謂スライムの核の様な物だ、これを破壊すればこの獣もただでは済まないだろう。
「はぁーーはっはっはっはぁ!! このまま突き落としてやる!!」
「ぐぅ、わ、私は、負けない! ユキを、守る!!」
隙だらけの背中へ向けて走る。
カルキノスを発動させ、同時に大きく飛び上がる。
右手を大きく引き込んだ、狙いは勿論心臓部。
僕の出せる最速で——
——斬気の手刀を突き込んだ。
「死ねっ! しっ!!?」
「ぐぅ……う?」
カルキノスの斬属性魔力を宿した右腕は、獣の硬い毛皮と筋肉の鎧を容易く貫いて、核となっていた硬い物を貫いた。
これで終わりだと思うけど、一応もう一手打っておこう。
カルキノスの斬属性魔力を、魔法妨害の要領で獣の中で弾けさせる。
「ぎゃっ!? があぁぁぁーー!!!??」
「な!? なんだ!?」
ティアの反応がさっきから変だが、そんな事に構っていられる程の余裕は無いので放置する。
咆哮をあげる獣に魔力がなくなるギリギリまで斬属性を拡散させ、引き抜いた。
すると獣は力尽きた様にどさりと地面に倒れ——
——遂に動かなくなった。
《レベルが上がりました》
「ユ、ユキ!?」
「……やったか?」
あえてフラグを立てる様な言い方をしたが、やった事は既に分かっている。
? 品質? レア度? 耐久力?
備考:?
「うん、死んだみたいだね」
鑑定で死を確認すると、獣の死体をインベントリにしまった。
「ユキ!」
地面に着地した僕は、鎧を消して飛び付いて来たティアにまた押し倒された。
「ユキ、ユキ!」
何やら興奮した様に抱き付いて来ているティア。
何が嬉しいのか分からないが、戦闘時の怪力で抱きしめられている僕は本当に死ぬかもしれない。
「……し、死ぬぅ……」
「ふぁ!? す、済まないユキ! つい、嬉しくて……」
力を緩めてくれたティア、危うく本当に死にかけた。
しゅんとするティアの頭を撫でる、今回はティアの大功労である。
「ユ、ユキぃ……!」
感極まった様に擦り寄ってくるティア、小さい頃の妹が甘えてくる様で、僕としては懐かしい気分になる。
そんな時——
——ガッ!!
唐突に聞こえた金属音に慌てて音源を見る。
視線の先では墓地の結界を維持している魔法陣に黒い剣が深々と刺さっていた。
剣の持ち手には黒い靄が纏わり付いている。
「は、はは、はぁーはっはっ——」
そんな声を零し、黒い靄は空中へと溶けて消えた。
《【伝説クエスト】『塔の守護騎士』をクリアしました》
《【王国クエスト】『悪魔の計略』を失敗しました》
【伝説クエスト】
『塔の守護騎士』
参加条件
・塔の結界を守る守護騎士と戦う
達成条件
・塔の結界を守る守護騎士を討伐する
失敗条件
・敗北する
達成報酬
参加者報酬
・スキルポイント5P
参加者貢献度ランダム報酬
貢献度60%ーー100%
・武器『十字騎士の聖十字剣』
・スキル結晶『闇耐性』×3
・スキル結晶『怪力』×3
・スキル結晶『聖剣術』×1
・スキル結晶『再生』×1
エクストラ評価報酬
個体名『エスティア・ルベリオン』との友誼
ボスの変異個体『悪魔憑きの十字騎士像』の討伐
・スキルポイント10P
・スキル『魅力』
・スキル『魅了』
【王国クエスト】
『悪魔の計略』
参加条件
・悪魔と闘う
達成条件
・悪魔の計略を阻止する
失敗条件
・悪魔の計略が成就する
失敗報酬
参加者報酬
・スキルポイント1P
参加者達成度ランダム報酬
達成度99%
・スキル結晶『直感』×1
エクストラ評価報酬
油断禁物
・スキルポイント1P
——ビシッ!
嫌な音が響いた。
——パリィィンンッッ!!
何かが砕け散る、嫌な音が。
10万PV達成
ユキの攻略はまだまだ続く




