第19話 進撃の白騎士
第三位階上位
擦り寄って甘えてくるティアを撫で続ける事暫く、ティアが正気に戻ったらしい。
「あ、あの、ユキ、殿」
「どうしたんだい、ティア? 急に他人行儀になったね」
「あ、う、その、ユキ……殿」
「……エスティア殿」
「ぐっ、……あー、ユキ、そう、ユキ」
「どうしたのティア?」
「う、む……な、何でも無い」
ティアで遊びつつ、頭を撫でる。ティアの髪は柔らかくてしなやか、いい匂いもして飽きが来ない。ウルルとはまた違った感覚である。
そんなティアは正気に戻ったのに耳を真っ赤にしてまでスリスリと甘えてきた。
だがまぁ、弄るのはここまでとしておこう、今は状況が状況だ。無駄とは言わないがタイムロスである。
「ところでティア、離れ難いほどに僕を愛してくれるのは嬉しいんだけど、今は急いだ方が良いと思うんだ」
「っ!?」
僕の、羞恥心を煽り逃げ道を用意する事で流れを誘導する為の言葉に、まるで雷に打たれた様に震えたティア。何事?
「そうか、これが……これが愛……」
「ティア?」
「愛とは……かくも素晴らしい物だったのか……」
何やら小声で呟いたティア。何を言っているのか訳分からないが、取り敢えず立ち直りそうなので良かった。
「よし! 行こう! ユキ!!」
僕ごと起き上がったティアは、僕からさっと離れ、まだ赤みの残る顔をニコリと笑みに変えて僕に微笑むと、そう声を掛けてきた。
「そうだね、早く行こうか」
「ああ、時間が無いからな!」
「誰かさんが甘えて離れなかったせいでね」
「あぅ、それは、あれだ……ユキが悪い!」
「確かに、僕が魅力的過ぎるのがいけないか。うん、なら仕方ないな」
流石僕、万人を惑わす魅力
まぁ、冗談は置いておいて、時刻を確認すると、今はちょうどおやつの時間と夕食の時間の間である。そろそろ空が緋に染まる時間帯だ。
◇
階段を駆け上がり、1階の広間を抜けて螺旋階段を登る。
ティアは重そうな鎧を着ているのにも関わらず、僕に合わせたスピードで階段を登っている。
これでも、僕の身長と体型で出せる最高速度で走っているのに、ティアの身体能力はどうなっているのだろうか?
2階に辿り着いた。
そこで屯していたのは黒い石の像。
それらをティアの巨剣が切り捨て、薙ぎ払う。
その生き残りや零れた物を、ウルルが叩き潰し、僕は残骸拾いである。
サボっている訳ではなく、回収しないと塔が吸い上げる地脈の魔力で自動再生する。
いちいち魔石を取り出している暇は無いので、残骸諸共纏めて回収しているのだ。
呪われし石の兵士 LV15
呪われし石の騎士 LV20
LVは低めだが、数がやたらと多い、そしてその中に何体か上位の個体が混じっている。
見た目が異なるので簡単に見分けがつくが、乱戦状態で囲まれていたとして、内何体かが他より素早く強いとなれば相当に厄介なのだろう。
しかし、その全ては同じ木っ端の様にティアの剣で薙ぎ払われている。
階層の石像を全て回収し次の階層へ進む。
次の階層に居たのは、同じく黒い石の騎士、今度は大きな個体を中心に統制が取れている。
呪われし石の騎士 LV20
呪われし石の大騎士 LV30
統率された石の騎士団は上がってきた僕達を上に行かせまいと、盾を前に出し壁を作っている。
ティアの振るう巨剣は、そんな事は知らんとばかりに盾ごと石像達を薙ぎ払らい、前に出てきた一際大きな石像を一撃で屠って殲滅した。
3階には黒く大きな石像が複数と、金属光沢を放つ像が待ち構えていた。
呪われし石の大騎士 LV30
呪われし鉄の兵士 LV30
呪われし鉄の騎士 LV35
かなり重そうな像であるが、されどティアの猛進を止める事は叶わず、石も鉄もバラバラである。
剣の切れ味は凄まじく、何より耐久力が尋常ではない。
《レベルが上がりました》
4階に来た。前の階層の時点で、ウルルの攻撃力では敵を簡単には倒せなくなり、後はティア頼りである。
呪われし鉄の騎士 LV35
呪われし鉄の大騎士 LV40
呪われし鉄の巨大騎士 LV?
ティアの戦闘力は底知れない、獅子奮迅とでも言おうか? もはや僕とウルルは見ているだけである。
一際に巨大で、僕の鑑定ではレベルが見えない巨大な騎士は、ティアの一撃をその巨大な剣と腕を犠牲にして受け切ったが、切り返しの二撃目で破壊された。
《レベルが上がりました》
「ユキ、これで敵は最後だぞ」
どうやら、5階には石像はないらしい。
全ての像を回収すると、すぐさま上の階へと向かった。
長い螺旋階段を駆け上がり、5階へ辿り着いた。
5階は他の階同様に広間があり、天井は他の階よりずっと高い。
天井と床のちょうど半分の辺りで魔法文字が途切れている、結界はここに張られていたのだろう。
5階の中央には地下にあった物と同じ台座があるが、其処には何も立っていない。
「ティア、ウルル、行こう」
「ああ!」
「ウォン!」
僕達は上へ続く螺旋階段を駆け上がる。
何もない、なんて事はありえないんだろうね




