第36話 vs.神滅機神・アトランティス 二
第七位階中位
激しく燃え上がる炎の巨剣が機神の足へと突き刺さった。
並大抵の炎であれば、寧ろ火の化身である機神を回復させる事に成りかねない。
しかし、紅の騎士が放った炎の巨剣は機神の片足を融解させ、断ち切った。
……おそらくだけど、機神に使われている金属は、神話に語られる真なる金属の一つ。『ヒヒイロカネ』。
それを紅の騎士が炎で断ち切ったと言う事は……私の予想が間違ってるか、紅の騎士の炎がそれ程強力なのか……。
原因には何となく心当たりがある。
最初の内は、機神は紅の騎士の炎剣を無視していたし、事実、紅の騎士は機神を傷付ける事が出来なかった。
しかし、機神の総合魔力量が半分を割ってからは紅の騎士の攻撃が機神の体を傷付けられる様になった。
あくまでも私の推測だけど……真なる金属は所持者の魔力に感応してその力を増すんじゃ無いかしら?
……或いは、紅の騎士が戦いの最中に急成長したか。
もしくはその両方が作用したのか。
ともかく、足を断たれた機神は轟音を立てて大地へと沈んだ。
これで機神も終わりだろう。
『む。『能力増強』『結晶大王蟹の御霊』『古の不死賢王の御霊』『死神の御霊』『不可知天帝竜の御霊』『黒曜天犬姫の御霊』『熾天使の御霊』取り押さえて』
戦いも終局と言うタイミングで、またもやユキが何かをした。
念話を通して伝わって来た思念は、複数の意味が重複していて何をしたのか全く分からなかったが、前線にいるゴーレム達が大幅に強化された事だけが分かった。
ユキが指示した次の瞬間——
——機神から赤色のオーラが噴出した。
噴火の如き暴撃が繰り出されようとした瞬間、すんでのところで化け物染みた強化が施された五体の騎士によって動きを封じられる。
それでも尚、機神は大地を割り砕き、拘束から逃れようと暴れている。
『狂戦士化』だ。
自爆と同義の暴走状態に入る事で、ゴーレム達を道連れにしようとしたらしい。
もし機神の最期の足掻きを無防備に受けていたら、少なくとも三体の聖騎士は破壊されていたかもしれない。
紅と白の騎士は分からないが、機神の膨大な魔力量は僅か1割にも満たない量であっても、容易く地形を変える程。
少なくとも無事では済まないでしょうね。
……そして、それを事前に察知したユキの力で止められたと。
……ユキってかなりヤバイ子よね。
そもそも格上の総合魔力量を把握し切るだなんて、土台無理な事をしてるし。
流石の私でも、自分の魔力量より多く魔力を持っている相手の魔力量は何となくしか分からない。
機神やイェガくらいになると、正確な総量は測れないし、何となく同量くらいとしか感じられない。
余りに膨大なオドは、その質と量でもって他者の干渉を跳ね除ける。
他者のオドを完全に把握すると言う事は、その相手の力量を完全に把握している事と同義だ。
更に言うと、私が察知出来る魔力は肉体に宿るものと魂表層に存在するものの2つだけ。
ユキはそれだけでなく、魂の中に眠る膨大な力をも観測している様だ。
やっぱりユキ、頭オカシイわ。
拘束を振り切るべく残魔力を絞り出す機神に対し、ユキによって超強化を施されたゴーレム達は全力で機神を抑え込み。
時間にして僅か数秒の激闘は——
——機神が力尽きる事で終わりを迎えた。
次の瞬間、ユキを伝わって私達の中に機神の力が流れ込んでくる。
どうやら本当に終わったらしいわね。
「ふむふむ……中々良……ふぁ……」
ユキにとっては退屈な戦いだったのかしら?
軽く欠伸をしたユキは、おもむろに立ち上がるとゴーレム達を労い出す。
その途中で機神を回収し、様々な後始末を終えて迷宮を後にしたのだった。
「……次は誰にしようかな?」
……次の機神との戦いは近いみたいね。




