第18話 ティアの想い
第三位階上位
取り敢えずポロポロ落ちて来たアイテムを全て回収しつつ、スキル結晶は使用。
改めて門を見るが、開いた様子は見えない。
「ふむ、開かないか、しょうがない」
そう呟くと、僕は門に歩み寄り、手を伸ばした。
「……何という力、此れからは麗しき銀の乙女が我が君か……」
「……こりゃあ、やべぇな……小娘の見た目だが、あの術式を破壊するなんて、正体は何処ぞの大魔女か大賢者か……」
ここで僕は彼等に衝撃の真実を伝えなくてはならない。そう——
「——僕、男だよ?」
「な、なんとぉ!? 我が君は乙女では無く男児であったか」
「な、何だと!? その面で男? 世の女が咽び泣くぞ……」
それはそうと、門の解除である。中々に複雑な術式で封印が施されているが、やはり長い年月による風化が効いている様で、綻びがある。
解除は出来そうだ。
◇
多少手古摺ったが、門の術式を解除出来た。綻びが無かったら解除不可能な程強固な術式で、運が良いとしか言えない。
それと、綻びの主な原因が分かった。
地脈から吸い上げた魔力で術式を維持しているせいだ。
つまり、魔力自体がかなりのじゃじゃ馬でそれを強固な術式で押さえつけて運用しているからだ。
これが王都と同じく生物から余剰魔力を吸い取り維持される術式だったら、殆ど不壊だったろう。
ともあれ門を開く。
「おぉ、あの術式も見切ったか、流石我が君だ」
「やはり、かなりの手練れだな」
大きな門を押し開こうとしたが……残念、開きません。僕の力じゃ開けられない。
見兼ねた2人が僕の代わりに門を押してくれた。
ゴゴゴゴゴッと重い音を立てて門が開く。
その先にあったのは地脈から魔力を吸い取り結界を展開している魔法陣、中央には余剰分の魔力が集まって結晶化している。
そして、その奥には今回の遺跡探索の目的が鎮座していた。
取り敢えず、魔法陣をパパッと解除し、ついでに結晶を回収する。
「おぉ、我が君は凄いな」
「軽々とやりやがる、化け物か」
外野の声を聞き流しつつ、ルンルン気分でそれに近付いていく。
古びた盾 品質C レア度? 耐久力A
備考:硬い金属で作られた古びた盾。何処か気品を感じる。
この古びたシリーズと言うと変だが、説明文が同じなこれらは、童話『救世の七勇者』や歴史書『年代記:魔窟大陸』に載っている。
全部で七種類あるこの装備は、それぞれ、剣、大剣、盾、弓、鎧、槍、杖、の七種で。
そのうち剣と杖、盾を発見した。
因みに僕は、ティアの鎧と巨剣が勇者の装備なのではないかと疑っている。
ともあれ、此方も前回と同じ様に魔力の質を変化させて結界を解除し、盾と祭壇と金属板を回収する。
《【伝説クエスト】『清浄なる盾の継承者』をクリアしました》
【伝説クエスト】
『清浄なる盾の継承者』
参加条件
・資格を保持している事。
・追記:一定量を超える器を観測した時。
達成条件
・資格を保持していると認められる。
・追記:一定量を超える器を観測した時
失敗条件
・無し
達成報酬
・古びた盾
エクストラ評価報酬
資格未保持者
二度目の強制解放
・スキルポイント10P
全体報酬
・新スキル解放
うん、順調だ。
門から出て広間に戻った。ん?
「……何と言う……」
「……化け物だ、間違いねぇ……」
「どうしたの?」
「い、いや、何でもない。流石我が君」
「主人が何でもねぇなら何でもねぇ」
「?」
良く分からないが、2人に本の事を説明して、ウルル以外の皆を送還した。
ついでに2人のページを確認する。
名前: LV? 状態:
種族:真銀の聖騎士巨像
スキル
?
残り駆動可能時間〔01:24:31〕
召喚可能
名前: LV? 状態:
種族:真銀の狂戦士巨像
スキル
?
残り駆動可能時間〔01:24:12〕
召喚可能
先ず、見えない所があるのは、テイムが二重になっているのが原因だと思われる。
従魔術のスキルレベルをあげて、より強い契約術を使える様になれば見えてくるだろう。
次に、残り駆動可能時間、これはおそらくだけど……。
ゴーレムである彼等は魔力を燃料にして動いている。ゴーレムさんはそれがプラスマイナスゼロなのだろうが、彼等は消費の方が大きいのだろう。
それ故に、連続稼働していると魔力が物凄いスピードで消費され、動けなくなる。
本での魔力供給スピードは、スライム・インスタントライフに比べるととても遅いが一応回復しているので安心だ。
最後に、駆動時間が一時間と短い理由についてだが……これは飽くまでも推測だが。
今までは地脈から燃料を得ていた。しかし、何者かが先程の魔法陣を弄って彼等に魔力が渡らない様に改造した、それ故に眠っている間に魔力が少しずつ抜けていった。
まぁ、検証のしようもないので飽くまでも推測だ。
◇
さて、ようやく地下からの脱出である。
先ずは鉄格子の術式を解除し、続いてカルキノスを発動させて右手で鉄格子を切り取る。
その後カルキノスを直ぐに解除して鉄格子は回収。
この後、戦うかもしれない敵の規模や質を考えると、カルキノスを連発するのは控えた方が良いだろう。
いざ必要となって魔力が足りません、だと洒落にならない、魔石タンクはまだ検証していないのだ。
「ティア、遅くなっ——」
俯いたまま動かないティアに声をかけ、先を急ごうとすると、突然鎧を解除したティアが飛びついてきた。
それも、さっきとは違って押し倒され、抱き締め上げられ、首元へ噛み付いてくる。
「ティア……?」
「ばかっ!!」
大きな声だった。
「ばかっ! ばかばか! ばかっ!!」
ティアが怒っている
「ティア、僕はマレビトだから、死んでも蘇——」
「違う!! そんな訳ない、そんな訳ないよ!!」
ティアは大声で否定する。らしくない口調、まるで子供の様だ。僕は諭す様に事実を伝える。
「僕は蘇る、でもティアは死んだらそれまでだ、だから——」
「確かにユキは蘇るかもしれない」
「だったら——」
「でも! 死ぬんだ、確かに一度死ぬんだよ……! そしたらきっとユキは薄れてしまう」
抽象的で要領が掴みにくいが、何と無く意味は分かる。
何度も死んでは蘇るを繰り返せば、やがて死を恐れなくなるだろう。
そうすれば次は痛みを恐れなくなる。同時に同じ境遇の他者が死にそうな時に、全力で助けなくなる。
例えゲームの出来事であったとしても、それは確かに薄くなる、考えが、その在り方が薄くなって行くのだろう。
だからと言って先の行動が間違いであるとは思わない。
僕は死んでも蘇る、薄くなっても確かに蘇る。
だが、ティアは死んだらそれまでだ。
僕とティアでは掛ける命の重さが違う。
だが、これを言っても聞かないだろう、どのみちこれは平行線だ。だからこそ
「……うん、わかった、次はもうしないよ、約束——」
「嘘つき!!」
「……」
「嘘つき、嘘つき、嘘つき!」
僕を睨みつけて紡がれた言葉、ティアの頬に伝う涙が、ポタリポタリと僕の頬を濡らした。
「……ティア」
「ばかっ! うっ、ぐす……ばか! ばかぁ、うぇ、ぐす」
泣き噦るティアを転がすと、今度は僕が上になった。
そのままティアをそっと抱き締めると、額に唇を落とす。
小さい頃、アヤは我儘を言わない子だったけど、稀に駄々を捏ねる時があった。
アヤは賢い子だから、ちゃんと全部分かっていて、でも納得出来なくて泣き出す。
そんな時、こうやって額にキスをして優しく話し掛けるとゆっくりと治って行くのだ。
これは母さん流、流石の僕も母さんには頭が上がらないのだ。
「ティアは優しい子、ティアは賢い子」
「うっ、ぐす……ぐす」
優しく静かに名前を何度も呼ぶ、これは催眠術の一種で、今のティアみたいな状態だと良くはまる。
勿論その間にもキスを落とす。
「ティアは出来る子」
「ぐす……」
「ティア、良く聞いて、ティアが苦しいと僕も苦しい、ティアが死んでしまうと僕は立ち直れないかもしれない」
「……うん」
「だから僕は誓うよ。僕は死なない、生きて勝ち続ける。だからもし、万が一死んでしまった時は、弱い僕を許してくれないか?」
「う……ぇ——」
ティアはまた泣き出してしまった。
わんわんと泣いて、泣いて泣いて、泣いて。
ようやく治ってもしばらくは頭を撫で続けた。そして——
「……ユキ、ごめんね、私が弱くて」
「……」
そんな事は無い。ティアは十分に強い。ただ、人智を超えた怪物がいるだけ。
「私がもっと強ければ、ユキは私を連れて行ってくれるよね?」
「……」
それはどうだろうか? 仮に最強と呼ばれる程になったとして、万が一が無いとは言い切れない。だが、それと同時にそんな事を考えても栓なき事だ、とも思う。
「私がもっとずっと、何よりも強ければ、ユキの隣に居れるよね?」
「……そうだね、何よりも強ければ、ね」
この世界の何よりも強いなら、確かに死ぬ確率は減るだろう。
「私、強くなる。誰にも殺されないくらい強く、ユキを守れるくらい、強く」
「……」
合理的だ、ティアは死なない様に、僕を死なせない様に強くなる。僕は死なない様に、ティア達を死なせない様に強くなる。
ティアの心が落ち着くまで、僕は優しくティアの頭を撫で続けた。




