第30話 決戦前に魔改造を 四 最後の仕上げ
第七位階中位
続いて行ったのは、冬将軍の強化だ。
決戦場の環境は相性が最悪なので、戦闘そのものにはあまり参加させないつもりだ。
彼が行うのは、決戦場の火属性を中和する事。
火山と言う環境は間違い無くアトランティスに有利なので、それを少しでも和らげるのが彼の仕事だ。
と言う訳で、彼には氷獄の宝珠を装備して貰った。
彼の肉体や宝珠内部に刻んだ魔法機構は、他の子達同様に身体能力を強化する物。
それに加え、宝珠の方には積極的に周囲の属性魔力を吸収する機構と、それを氷属性に変換する機構を刻み込んだ。
まぁ、種精霊達には元々別属性の魔力を取り込み同属性に変換する働きがあるので、如何に宝珠と言えども焼け石に水ではあるが。
火山を沈静化させるには、宝珠の力を100%使っても数十日は掛かる。
勿論それには例外がある。
宝珠を完全に消費し切れば、火山は瞬きの一瞬で氷結するだろう。
物凄く勿体無いのでやらないが、急を要する事態になった時は切り札として消費してしまうのもありだ。
氷獄の宝珠は手持ちの宝珠の中では最も星珠に近い魔力量を誇るので、宝珠の研究の為にも後で回収する。
冬将軍くんには後日、自作した氷の宝珠をプレゼントしよう。……氷属性持ちの魔物は希少なのでいつになるかは分からないが。
逆に水や土などの、物理的にありふれた基本属性の宝珠なら、殆どの魔物が持っているので今すぐにでも作れるだろう。
次は三巨像さんの整備だ。
三巨像さんは大聖天銀、大精霊金属と同格の聖属性金属で構成された巨大な像だ。
大聖精金属は正式名称をウィヴァーシア鋼と言い、白騎士はそれで出来ている。
三巨像さん達は、ウィヴァーシア鋼と言う大分類の中にある、シルバー・ウィヴァーシアと言う金属である。
金属の分類に関しては色々と種類や呼び方があるのだが、大まかに性質を調べた所によると、
金は魅了の力を持ちやすく魔力の保持容量が多い。
銀は聖なる力が宿りやすい。
銅は魔力の保持容量がかなり多め。
鉄は属性変化しやすく硬い。
となっている。
つまり、銀で出来たウィヴァーシア鋼は最も聖属性の高い金属であると言える。
金属が元来持っている性質は、属性変化した時点で原型を留めない程に変質してしまうので、金属毎に存在する特異な性質は、所謂『信仰』による物だと考えられる。
まぁ、大精霊金属級まで高めると、特異な性質と言うのも誤差程度でしか無いので、僕が何かを作るとしたらやはり安価な鉄を使うがね。
三巨像さん達は能力的には白騎士に近い。
また、彼等は巨大な子達同様に小型化や圧縮のスキルを持っている。
戦闘時のイメージとしては、大型状態で盾役を担うか、圧縮した高質量+高機動力による奇襲的重撃を行う。のどちらかが良いだろう。
アトランティスは大体巨像さん達の3〜4倍程の大きさがあり、逆に言うと巨像さん達はアトランティスの膝丈程もある標的だ。
前者だと酷い集中砲火を受ける可能性が高い。よって此処は後者にするのが最善である。
機動力をあげる機構を刻んだ後は、巨像さん達の四肢、胴体、頭部、計六箇所にバスケットボール大の貯蓄結晶を埋め込み、完成。
これで巨像さん達の魔力保持容量は桁違いに増加したので、戦闘中に魔力切れで離脱する事は無いだろう。
そして最後、イェガ。
イェガは既に整備を終えているので、決戦に向けて特に何かを弄る訳では無い。
ただちょっと、ハミリオン・インペリアルソウルの機構を刻んだ悪魔の宝珠的な物を、イェガ都市の中心に設置しただけである。
決戦中にイェガを狙われても経験にはならないし、空飛ぶ巨大なイェガは隠密能力を高めれば何かと便利だ。
イェガの迎撃人形には大まかに分けて二種類あるのだが、やはり透明化の恩恵が得られるのは、イェガが操作するタイプの方だけらしい。
魂魄を与えたゴーレムになると、イェガの中にいる間は勿論透明だが、外に出た途端に透明化が解けてしまう。
とりあえず、イェガの処理能力が及ぶ範囲までは人形の方を量産し、その後はゴーレムに切り替えよう。
決戦に備えてやるべき事はこれで殆どやり終えた。
後は観戦用の準備を程々に行うだけ。
……決戦準備、締めてダモスの財宝二割也。
霞孫100本が高く付いた。
まぁ、リスクとコストを天秤に掛けるとこんな物だろう。
もう少し稼ぎの良い商売をしないと、開発に滞ってしまう。
とりあえず全ての準備が終わったので、決戦場に向かうとしよう。




