第16話 看破する
レイーナがイリーナになっていたのを修正
他細かい点を少し修正
第三位階上位
塔の内部に入ると、先ず最初は広間だった。
塔の床いっぱいに魔法陣が描かれていて、壁には一面にびっしりと文様が描かれている。これも魔法文字の一種だ。
その壁に沿って長い螺旋階段があり、上の階層へ続いている。
ティアの話だと、結界までは全五階層、それより上は未知。
「よし、行くぞ! ユキ!」
「ちょっとまった」
「ん?」
急いで上に向かおうとするティアを押し留めて、周囲をよく観察する。
魔力の流れに違和感を感じた、上に行く流れが2つと下に行く流れが1つの計3つ。
下に行く流れが墓地や街に結界を張る為なら、上に行く2つの流れは何だろうか?
更に詳しくその魔力を見てみると、片方は荒く、もう片方は統制がとれている。
「ふむ……」
常時結界を張るとなると相当な魔力が必要になる筈。
王都はその魔力を王都の中の生物から供給していたが、この遺跡には生物がいない。
色々と古い書物を読んだが、考えられる事は二つ。
遥か昔に作られた兵器に、高位の精霊を封じて力を奪い続け、それを燃料にして飛ぶ空中要塞があったのだとか。
その技術を利用して精霊から魔力を供給している可能性。
そして、こっちが本命だが。
世界には血管の様に、膨大な魔力が流れる道が張り巡らされていて、それは一般的に地脈や龍脈と呼ばれている。
その地脈から魔力を吸い上げている可能性。
……まぁ、後者であろう。
つまり、荒い流れは地脈から魔力を吸い上げているのだとして、統制された流れは、上の結界を張っているのではなかろうか。
だとしたら進むべきは地下だ。
「ティア、地下への入り口は?」
「ん? 此処、地下があったのか」
……更に観察を続ける、着目したのは床の魔法陣だ。
残念ながら、魔法陣や魔法文字、魔法紋については僕も詳しくない。少し読んだ程度だ。
それでも魔力の質から、やりたい事は何となく理解できた。
隠蔽、認識阻害、幻術、階段への意識の誘引。
「…………あそこか?」
向かった先は階段の裏。
そこだけは石の色が剥き出しになった無地の壁。
確かめる為に壁へ触れようとして——
「おっと」
「むむ」
「?」
——すり抜けた。
どうやら正解だったらしい。
偽物の壁の先には地下へと続く階段があり、灯り石の淡い光で照らされている。
「行くよ、ティア、ウルル」
「うむ! 流石ユキだな!」
「ウォン!」
この先に上の結界を解除する為の何かが……あったら良いなぁ。
◇
薄暗く長い階段を進む事しばらく、狭い通路へと辿り着いた、その先には明るい広間が見えている。
広く四角い空間で、奥には大きな扉がある。
左右の壁際には、騎士と弓兵を象った黒っぽい金属の像が沢山あり。
入り口の左右には、白っぽい金属を使って作られている巨大な像がある。
そして、入り口の上に朽ちて石が欠けた所為で見えてしまっている鉄格子。
入ったら落ちてきて閉じ込められるのだろう。
最悪、僕は死に戻りが出来るが、ティアは出来ない。此処は僕が行くべきだ。
「ティア……」
「どうしたんだ? ユキ」
ふと、思ったんだが、仮にティアにこの事を伝えたとしたらティアは素直に待っていてくれるだろうか?
マレビトが死なないのはこの世界では一般常識らしいが、ティアは僕が一晩居ないだけで心配したという。
知って尚、待っていてくれるとは到底思えない。
「僕のお願い、聞いてくれるかな?」
「っ!? き、聞くぞ、何でも言ってくれ!」
上目遣いと甘え声、こう言うのは得意だ。演技は元来得意なのだ。
「じゃあ目を瞑ってあっち向いててね」
「わかった! こうだな!」
「うん、良いって言うまでそうしてて」
……これで大丈夫だろう。
文句は後で聞くとして、今は先に進むべきだ。
「『召喚ヒュージポイズンスライム』『召喚アイアンゴーレム』……」
戦いに備えて精鋭組を召喚する、半日休んだので万全の筈だ。
勿論、巨大蟹みたいな化け物が出てきたら何も出来ずに全滅するだろうが。
さぁ、鬼が出るか蛇が出るか……。




