第15話 遺跡の異変
第三位階上位
「すー、はぁ、すーー、はぁ」
ログインすると、即座に周囲の状況を確認する。
日が照らす遺跡、戦いの音は聞こえない。
どうやら危険は無いらしい、一先ず安心である。
僕は今、ティアに抱き抱えられている様だ。
場所は崩れた外壁の所、ティアはそこに腰掛けて僕を膝に乗せている。
身長が同じくらいなので、あまり安定しない体勢だ。
ウルルは僕等の足元で周囲を警戒している。
改めて遺跡の気配を探ると、確かに張り詰めた様な嫌な気配が満ちている。
邪悪な気配と言うのは良く分からないが、何者かに監視されている、粘つく様な視線を感じる。
そうと分かると気持ちが悪くなってきた。
これにはウルルもティアも気が落ち着かないらしく、ウルルは牙を剥き出しにして辺りをふぐふぐしているし、ティアは深呼吸を繰り返している。
取り敢えず探索してその原因を如何にかすべきだろう。
「ティア」
「すぅーーー、はぁー、すーー、はぁ」
「……ティア?」
行動に移すべく、ティアに声を掛けたのだが、余程集中しているのか僕の声が届いていない。
仕方ないので体を揺すって声を掛ける。
「ティアー、ティーアー」
「はぁ……ん? ひゃあ!? ユ、ユキ!? き、君! 起きてるなら声をかけないか!!」
何を言ってるかねティアは。
こんな危険そうな場所で、まさか僕の匂いを嗅いでいたわけでもあるまい。
いくら僕が可愛らしくて芳しくても、この状況でそれを堪能していたとか言うと、流石にやばいと思う。
——僕の魅力が。
……まぁ冗談は置いておいて
「ティア、何処まで探索してある?」
「う、うむ、元居住区辺りは全て調べた、行ってないのはあの塔と墓地だけだ」
「そここそ本命じゃないの?」
「そうなのだがな——」
ティアの軽い説明によると、墓地は強力な結界があって中に入れない、塔も半分まで登れるが、その上は結界が張られていて進めないとの事だった。
「ふむ……」
結界と言うとあれの事だろうか? 結界があるなら解除すれば良い、勿論解除出来ない可能性はあるが、取り敢えず行って調べてみよう。
「ティア、近い方に案内してくれないかな?」
「うむ、こっちだ」
「ウルル、行くよ」
「ウォン」
◇
やって来たのは遺跡の東にある墓地。
ティアは平然と結界に触れていて、ウルルも変わらず周囲を警戒している。
つまりそういう事なのだろう。
「ところでティア、墓地の中には何が見える?」
「うん? ……うーん、そうだな、ボロボロに朽ちていて草や木が沢山生えているのが見えるが……それがどうしたのだ?」
「うん、朽ちてはいるね」
何のスキルの効果かは分からないが、僕には結界の先の本当の光景が見えている。
ボロボロに朽ちた墓地。
枯れた草木。
——腐った大地。
辺り一帯には黒い靄が立ち込め、とてもでは無いが生物が住めるとは思えない。
勿論そこで蠢いているのは多数の骨や半透明の光、人型の土塊、他多数。
それらが思い思いに徘徊している事から、結界はあちら側からも色々と遮断している事が分かる。
ただし、一体だけ僕等をじっと見つめている奴がいた。
レッサーリッチ LV?
宙に浮き、他の骸骨とは違ってボロボロのローブを着込んでいるそれ。
此方をじっと見つめる眼窩には赤い炎がゆらゆらと揺れている。
図書館の書物に、遺跡の墓地にはアンデットを浄化する為の結界が張られていると書いてあった。
その結界には人の通りを遮断したり認識を改変する様な効果は無い筈。
その上、今目の前にある光景はアンデットを浄化する力が働いている様には見えない。
結界はあるが効果が違う、それはつまり……。
「……結界が書き換えられている?」
「?」
「ウ?」
結界に魔力を供給しているのは、大地を流れる魔力の流れから塔である事が分かる。
おかしい物があるとしたら、そこだろう。
「ティア、ウルル、塔に行くよ」
「わかった」
「ウォン!」
◇
塔へ行くには若干の時間を要した。
街の構造が塔へ行くのを阻む様な作りになっていて、遠くに見える塔へ近付いては遠ざかり、それを何度か繰り返すとようやく塔の元に辿り着ける。
更に、塔の下は結界が張られた迷路になっていて、遺跡の地図を記憶して来なかったらきっと日が暮れていた事だろう。
「……大きいな」
塔は思っていた以上に大きかった、横にも縦にも。
塔内部の地図は無かったので、此処から先は未見である。
確か何度でも復活するガーディアンが守護しているのだとか。
「ティア、頼んだよ?」
「うむ、任せておけ! 必ずユキを結界まで守り通そう!」
「ウォン!」
「ふふ、ウルルもね」
僕達は塔の中へと歩みを進めた。
……あれ? 何か立場的に違和感があるんだけど? このパーティーにいる姫は僕だっけ?




