第14話 遺跡へ
第三位階上位
ワンワン、キャンキャン、クゥーンクゥーン。
長い坂の半ばに突如として現れたワンワン軍団は、野生は何処に置いて来たと言わずにはいられない程に懐いて来た。
本を確認してみると、グレーターブラックドッグのページに配下、と言う項目があり、其処に大量の犬が入っていた。
わざわざ1匹ずつテイムしなくても良いらしい。
ただし、テイムしないと進化の選択は本犬に一任される様だ。
本犬が許可した時、僕が選択出来る様になる。
いつ迄もワサワサと戯れていては日が暮れてしまうので、ワンワン軍団は送還し、時間の遅れはデカワンワンに乗る事で取り戻す。
吐血したけど大丈夫そうなので乗った訳でありイジメではない。……大丈夫だよね?
◇
太陽が空高く上がる頃、遺跡に辿り着いた。
メニューから時計を確認する、どうやら昼前に間に合ったらしい。
デカワンワンの頑張りのお陰である。
「よーし、よしよしよし、ありがとう」
「わふ、クゥーン」
デカワンワンを一頻り撫でさすると、労いの言葉をかけて送還。
振り返り、改めて遺跡を見る。
古びて朽ちている石の街。かつて頑強を誇ったであろう外壁は、風化ではなく何者かに破壊されたかの様に所々砕け、まるで意味をなしていない。
あちこちに見られる魔法陣や魔法文字から、この都市が魔法的にかなり発展していたのが分かる。
遠くに朽ちかけの高い塔が見え、それより高い建物は見当たらない。この都市の象徴だろうか?
あと……街の中に白い鎧に白い巨剣を背負った人物が居る。
どう見てもティアだ。
「おーい、ティアー」
「む? おお! ユキ!」
僕が呼び掛けると、白鎧からティアの声が聞こえた、やはりティアで合っていた様だ。
まぁ、あんなのが2人も3人もいるとは思えないが。
僕に気付いたティアは、鎧を一瞬で何処かへ消して僕の方へ駆けて来て、飛び付いた。
「おっと……ティア?」
ぐっと抱き付いてくるティアは相変わらずの怪力で……。
「……昨日は何処に行ってたんだ? ……心配したぞ……」
「……ティア」
どうやら酷く心配をかけたらしい、幸いな事に連絡手段があるので、スキル『契約・特殊』でティアと契約しておく。
「ティア」
「……何だ?」
「苦しい」
「知るか」
潰れてしまうかもしれない。
僕もかなりレベルが上がったが、ティアの怪力も中々のものだ、一体どの様な力が作用しているのか、実に興味深い。
◇
落ち着いた後、ティアが此処へ来た理由を聞いた。
ここ数日何やら不穏な気配を感じていたが、街中に特におかしい所は見当たらず。
昨日はその気配が強くなったので、慌てて街中の目ぼしい危なそうな場所を巡っていたらしい。
今朝、そんな気持ちの悪い状態で素振りをしていると、急に邪悪な気配が膨れ上がり、ティアはそれを感じ取った。その発生源が王都から南。この遺跡にあると。
其処からは、まだ暗い道を走り続け、遺跡に辿り着いては邪悪な気配の元を探していたのだそうだ。
そして、探しているうちに、昨日僕が居なかった事と今回の件が繋がっているのでは無いか? と疑い始め、思考は悪い方へ悪い方へと進んでいき、そこへ僕が現れた、と。
成る程、確かに言われてみれば、此処は王都と違って何処か物悲しい、寂しい気分になってくる。
それは、此処が遺跡だからかと思っていた。
過去に此処で人々の営みがあり富み栄え、されど何か大きな事件があって滅び去ったのだと、それ故に寂しい気分になるのだと。
しかし——よくよく考えてみれば、僕はそんなにロマンチストでは無い。
此処に来た理由も、レアアイテムを探しに来たからである。
考えても何が起きているのか分からない、情報が足りない。
事態を解明するにはこの遺跡を探索するしか無いだろう。
「……ティア、取り敢えず僕用事があるから寝るけど」
「え? あ、ああ」
「僕の体……よろしくね」
「へ? ……ユキの体を……私が……? 良いのか!?」
何だか不穏な気配を感じる。
だがまぁ、時間も時間なので仕方ない、取り敢えず万事に対応出来そうなウルルだけ召喚しておく。
「『召喚ウルル』」
「ふわ……おぉ、ユキの狼」
「クゥーン」
「ウルル、僕が戻ってくるまで僕とティアを守ってね」
「ウォン!」
一応これで、ログアウトしよう、僕が戻って来るまで何も起きない事を願って。
「クローズゲート」
途切れ、再接続される感覚の後、瞼を開く。
僕以外誰も居ない部屋。静かな家。アヤは今アナザーをやっているのだろうが、物悲しさは心にこびり付き、離れてくれない。
嫌な感覚を振り切って、直ぐにリビングへ降り、昼食を食べ終えた。
いつも通り、アヤに書き置きをする。
『親愛なるアヤへ、昼食先に頂きました。アナザーで何やら大変な事になりそうなので、友達共々備えてくれていると嬉しい。兄より』
書き置きを残して、雑事をパパッとこなしてログインする。
願わくば何も起きていませんように。
「オープンゲート」
意識がブツリと途切れる。




