第47話 白の騒乱 十五 雪の加護
第六位階上位
千変万化するパフィ子達を横目に、核を目指して森を歩む。
移動の間に、森の後処理も同時並行で進める。
西方は人の領域に接していないので、植物魔法が使える鹿君と狼君に再生を任せた。
同じく北方も村などの人工物は無いので、先に再生を開始する。
北方の再生を行うのは、ザッハーク君。
ザッハーク君は何げに魔法関係の能力が充実しており、引き出しの多さは僕に次ぐ物がある。
配下の中では特に強いメンバーの内の1人だ。
東方は、街道やちょっとした砦、宿場があるが、人通りは無いので、ゆっくりと還元を進める。
南方はと言うと、侵略された範囲が他よりも広く、またその範囲内には多数の村があるのだ。
全てを元通りにするには、事を片付けてから腰を据えて行う必要があるだろう。
◇
進む事しばらく、目的地へは何の障害も無く辿り着いた。
そこにあったのは、何も無い、何の変哲も無い広場。
真っ白な森の中に開いたちょっとした空白地帯。
死神の装備だからこそ分かるが、ここには今、間違い無く何かがいる。
だと言うのに、姿を目視する事は出来ず、不自然な匂いもなければ音もしない。
しかし——どうやらこれだけは欺け無かったらしい。
? LV?
グレーターパフィニョン・エンプレス LV?
おそらく、いると確信しているが故に鑑定が正常に発動したのだろう。
片方は何か分からないが、もう片方はパフィ女王。
そしてその両者は、僕の魔覚をすら欺く隠密能力の持ち主だ。
パフィ女王の方はその力を解析して取り込んだ故に、ある程度の隠密能力を持っているのだと推測出来る。
完全に解析出来ていないから、僕でもギリギリ察知出来たのだろう。
今僕が知り得た情報を組み合わせると、自ずともう片方の正体も分かる。
先ず、パフィ子達にはパフィ竜形態があり、そのパフィ竜は竜属性の魔力を持つ正真正銘の竜だ。
つまり、正体不明の輩は竜種である。
次に、自惚れでは無いが、僕の魔覚を欺ける程の隠密能力を持つ存在と言うのは限られて来る。
具体的には、死神や瞳神、そして——不可知竜帝。
……そうそう似た力を持つ化け物がいる筈も無いので、間違い無くハミリオンの奴だろう。
あくまでも推測でしか無いが、おそらく死神の星珠の一撃は思っていた以上に不可知竜帝へダメージを与えたのだろう。
竜帝はあの戦場から東へ逃げ、この場所で眠りについた。
そこへ、何らかの原因で強く成長し、竜属性に耐性を持ったパフィニョンが……津波で流されて来た。
そして、これまた何らかの原因でパフィニョンは竜帝を認識し、その力の影響を受けて進化、力を取り込んで増殖、そして今、その力の源を解析して取り込んでいる最中なのだ。
——これはチャンスだ。
人海戦術で警戒するしかなかったハミリオンの帝王を、確実に抹殺するまたと無いチャンス。
かと言って、僕が無闇に手を出せば、藪を突いて蛇を出す事態になり兼ねない。
今竜帝が動いていない事から、パフィ女王は綱渡りの様な状態で竜帝を解析、吸収しているのだと分かる。
竜帝がそれに気付くと、間違い無く暴れ出すだろう。
死神の星珠に魔力を補充して、今度こそ全魔力を使って致死の一撃を振り下ろせば、不可知竜帝を仕留める事は出来るかもしれない。
しかしそれをすると、余波でパフィ女王が死ぬ可能性が高い。
僕以外の救援者としてパフィ子達を向かわせる手も考えられるが、エンプレスの演算能力で限界ならパフィ子達は足手纏いになるだろう。
これを放置すると言う手は無い。
万が一パフィ女王がミスをすれば、不可知竜帝を討つチャンスは失われるし、僕が気に入ったパフィニョン達の核も殺されてしまう。
状況を打開する方法は……無きにしもあらず。
その方法とは——
◇
「ハヒュー」「ヤワヤワー」「ユィー」「ムニャムニャー」
60のパフィ子達が、僕の体に纏わりつく。
もふもふと蠢き、体の各所をむにむにと触って来ているのだ。
誰の何処を触ってヤワヤワでムニャムニャか。
この状態は実に5分程続いているが、ようやくその時が来たらしい。
パフィ子達の動きが止まり、そして——
シルバーパフィニョン・アーククイーン LV454 状態:眷属 《ユキ》
——進化した。
見た目は、子供の頃の僕に似ており、目の色は銀、髪の色は白で、髪の先端部分が銀色になっている。
白い肌に白いチュニックを着込んだ、白い子供僕が其処にいた。
5分も掛かったのは僕の外見をコピーしていたからか。
ともあれ、これで彼女等の演算能力は格段に向上した筈だ。
僕の肉体をベースに作られた姉妹に比べると、個々の演算能力は大幅に落ちるが、それでも十分だ。
最も重要なのは、パフィ子達と僕の親和性を高める事なのだから。
「それじゃあ皆、取り掛かるよ」
「アィー」「イゥォー」「アンアゥー」「ユイーイッォー」「フキューン」
僕の呼び掛けに舌足らずなパフィ子達の声が応え——竜帝の攻略が始まった。




