第46話 白の騒乱 十四 ユキを研究
第六位階上位
総勢60キノコのパフィ子による合唱が鳴り響いている。
飛来した5匹の竜は、竜属性の魔力を持ち、炎のブレスを吐く本物の竜であった。
恐らく、空を舞う歩キノコ達は、飛翔に類するスキルを取得し鍛える為に飛び回っていたのだろう。
蓄積された戦闘データは、物理攻撃や魔法攻撃に強い堅固な鱗を形成し、その鱗は特に炎と風への耐性を持っている。
爪や牙は非常に鋭い。それは恐らく本物の爪や牙を解析したか、人が使う武器を解析したのだろう。
また、彼の竜は様々な下級や中級の魔法を使う。
それは、迷宮都市で攻撃された際に解析したのだろう。
通常のパフィニョンが魔法を使わなかったのは、各パフィニョンの演算能力が不足しているからだと考えられる。
竜達が魔法を使える理由は、それがアーククイーンの変異個体だからだ。
また、竜達の翼は一見すると鳥の翼の様に見え、何処と無く幻想的であるが、その実羽ばたく毎に鱗粉の様に胞子を撒き散らす恐ろしい代物だった。
そんな彼等を出し惜しみ無しの『死を呼ぶ黒霧』で包み込み、情報の送受信を遮断。
即座に瞬間移動で近付くと、圧縮された『パフィ子達のお話し経験〜絶望風味×33〜』を注入した。
危うく墜落しかけたパフィ竜を捕獲し、更にちょこっと説得して、パフィ竜を仲間に加えたのである。
今は、パフィ竜の情報とパフィ子の情報を交換し合い、取り敢えずはパフィ子型になっているが、全パフィ子がパフィ竜形態に変身出来る様になった。
また、彼女等は経験を共有すると言う性質上、より高レベルに至った経験を共有すれば、後は必要量の魔力さえあれば同格までレベルを上げられると言う、ちょっと空恐ろしい能力を持っていた事が確定した。
公都で人間を追い詰めた経験、西で複数種の魔獣と戦い追い詰められた経験、核が竜を解析した経験。他色々。
それ等の情報を纏め上げ、蓄積された情報を反復する事で、パフィ子達は魂を磨いて行く。
パフィ子達を見て僕が面白いと感じた理由は、彼女等が魂の研究のサンプルデータとして異常に優秀だったからなのだ。
ここまでパフィ子達を制圧し、分かった事を簡潔に纏める。
——スキルとは経験である。
スキルは魂魄に根を張るが如く、経験する毎に成長して行く。
僕の知る限りだと、魂魄の成長に掛かるリミッターを解除するには、精神の成長が不可知だ。
しかし、パフィ子達のケースを見る限り、精神の成長以外に魂魄のリミッターを解除する方法がある様だ。
それが、魂魄にスキルを刻む事。
山の斜面に木々が根を張る事で地滑りを防げる様に、魂魄にスキルを刻み成長させる事で、精神力が足らずとも魂魄を安定させる事が出来るのだろう。
だがしかし、それにも当然限界はある。
スキルで発揮される力は、先ず間違い無く魂魄の力と精神力を消耗するからだ。
余白の無い魂魄では本領を発揮する事は出来ず、スキルが多過ぎればそれを維持するのに精神力を磨耗する。
恐らく、精神力が鍛えられていない状態の魂魄の限界は、レベル300台。
スキルを多量に押し込んでも400前後が限界値だろう。
事実、僕の配下で生まれたばかりの子や、戦闘などの経験が浅い子達は、レベル300と少々でレベル限界に到達している。
経験を積ませれば限界の壁を越えて行く事が出来るだろう。
要約すると、
・どんなに鍛えていない生き物でも、上手く魂を弄れば恐らくレベル300前後までなら上げる事が出来る。
・スキルを多量に押し込み、スキルレベルを上げればレベル400前後まで上げる事が出来る。
と、こんなところか。
現状僕の力だと、強制的に魔力を流し込んでレベルを上げる事は出来るが、強過ぎる魔力を入れると肉体に異変が起きる可能性が高い。
魔覚の状態でなら上手く出来るかもしれないが、当然破壊するよりも作る方が難しいものだ。精神力に余裕がある時でないと検証も出来ない。
◇
フブキによる侵食を終え、総勢60キノコの合唱を聞きつつ、わんわん軍団とアニマルズを率いて核がある場所へ向かう。
その最中、パフィ子達の一部が僕やフブキの周りをくるくると飛翔してじーっと見つめて来ていた。
どうも観察されているらしい。そう思った次の瞬間——
「リャリャーン」
——笠が髪の毛みたいになった。
ポンっと音が出そうな変形である。
一方フブキを見ているパフィ子達は——
「ルルーン」
——スカートらしき物を形成していた。
パフィ子の数が増えたからか、言語だけで無く姿までコピーしに掛かった様だ。
些か荒削りと言える人型の体を、更に人型へ近付けようとしている。
彼女等が完全な人型になるのは時間の問題だろう。




