第29話 白の騒乱 四 心器は共に
第六位階上位
フブキが繁殖体の元へ辿り着いた。
道中パフィニョン達が間断なく襲い掛かって来るという、キノコ狩りをしながらの道のりだったので少し時間が掛かった。
早速繁殖体に接触し、母体の位置を探る。
魔力の流れを確認し、最も太い線を辿って行く。
「……見つけた」
場所はここから北西へ進んだ元森の中。
かなり強力な隠蔽が為されているが、まぁこの程度なら容易く探知出来る。
……問題なのは、パフィニョンが母体を隠せる知能と能力があると言う事か。
それに……気の所為だとは思うが……パフィニョン達、ほんの少し固くなってない?
斬撃で仕留める際に、倒すのに込める力がほんの一ミクロン分くらい多くなっている様に思う。
……気の所為だとは思うが……気の所為じゃなかった場合は……今回の一件、少し不味い事になりそうだ。
◇
移動はフブキに任せて、僕はアイテムなどの解析を行う。
差し当たって解析するのは、観察者の涙と血の鎌。
観察者の涙は、神結晶と同じ様に、僕では測れない程の強大な力を秘めた結晶体である。
所謂『観察』系統の概念魔力が詰まっているので、純粋な力の塊である神結晶と比べると些か使い辛い。
また、観察者の涙は宝珠などと同じで、自動で魔力を回復する作用があるらしい。
その回路は、魔導論者のスキルを使って魂魄を覗き込む事で確認出来た。
ただ、魔導論者のスキルレベルが低いからか、最も重要な深部を見る事は出来ず、完全解析とは至らなかった。
錬成を用いてこれを加工すれば、新たな宝珠を作成する事が出来るかもしれない。
続いて血の鎌。
これは、片手で持てる小さな鎌である。
能力は、血を吸えば吸う程強くなると言う、所謂成長型の武器で、現時点ではただの鎌だ。
狩った獲物を血抜きするのに役立ちそう。
ただ、獲物の血は血刃にも転用できるし、場合によっては召喚術の供物にも使えるので、一滴あたりの強化倍率次第では無駄使いになり兼ねない。
……しかし、かなり高位の武具になれるポテンシャルはある筈なので、使わないのも勿体無い。
ここは血繋がりでアスフィンにでもあげるとしよう。
次に、スキルの確認。
確認すべき物は、武器召喚、心器召喚、クエストオーダー。
武器召喚は、魔力を消費して武器を生成するスキルらしい。
生成出来る武器は、レベル1では木製の武器だけ。
コスパの悪いスキルである。
インベントリスキルが無く、何処ぞのダンジョン奥地に放逐された、と言う様な状況でなければ使わない様なスキルだ。
ただし、此方も血の鎌同様、レベルを上げて行けば無から精霊金属の武器を生成出来る様になるかもしれないので、一概に無駄スキルとは言えない。
次、心器召喚。
武器召喚と同じ様に選択すると、《心器を生成しますか?》と言う確認のメッセージが届いた。
態々メッセージを送ると言う事は、心器と言う物はそれなりに重要な物と言う事だろう。
少し悩んだが、YESを選択する。
「っ!?」
瞬間、ほぼ満タンまで回復していた僕の魔力が一気に0になり、更に魂魄からもエネルギーを吸いとられた。
流石に魂からエネルギーを吸われるとは思っていなかったので少しびっくりしたが、僕の命に別状は無い。
失ったエネルギーも、魂の器に満たされている余剰の力を吸われただけなので、長時間放っておいたり生き物を殺して吸収したりすれば直ぐに回復するだろう。
僅かに感じる悪寒は、器に力が満たされていない事から来る危険信号だと思う。
同時にほんの少し感じる疲労は、精神力をも使用されたと言う事か。
そんな訳で、改めて僕に装着されたそれらを鑑定する。
蒼銀の万能鎧 品質? レア度? 耐久力?
備考:?
蒼銀の万能武器 品質? レア度? 耐久力?
備考:?
今僕は、死神の装備がいつの間にかインベントリに仕舞われ、代わりに新しい武具を装備した状態になっている。
件の鎧は、頭にティアラの様な物が付き、所々に不可思議な文様が刻まれた蒼色と銀色のドレスアーマー。
武器は、僕の目の前に浮遊している宝珠の様な蒼い珠。
何方も自在に形状を変える事が可能らしく、武器は弓にも大剣にも籠手にもなる。
鎧は、謎のフィット感で着心地が良い。
やはり、この武具は僕の魂と精神力を使用して作成されただけあり、まるで体の一部であるかの如く、動作に何の違和感も無い。
武具を着替え、インベントリにしまってから心器召喚を試みると、死神装備が蒼銀装備に換装された。
同じ物を複数作成する事は出来ない様である。
即ち、この武具はワンオフのアイテムと言う事だ。
次はお待ちかね。クエストオーダーの確認だ。




