第15話 淡雪 頑張る
第六位階下位
何処までも晴れ渡る青い空に、太陽さんがキラキラと輝いています。
何処からか暖かい風が吹いてきて、仄かな磯の香りを運んできました。
私の周囲には多数のプレイヤーさんがいて、イベントが〜、とか、また銀の天使が〜、とかよくわからない事を言っています。
……銀の天使って、ユキお姉ちゃんの事ですよね? 何をしたんでしょうか……?
もう直ぐ戦いが始まると言うのに、外壁の下には緊張感がありません。
私がいる場所は、王都北の草原やや東の外壁寄り。
ちょうど、プレイヤーと、プレイヤーがNPCと呼ぶ現地民の間の場所です。
フードを目深に被り、初戦闘に備えて杖を握り締めています。……緊張しているだけですが。
そもそも、何故外壁の下に冒険者さん達がいるのでしょうか?
私達と違って命は一度しか無いのに。
何故東に数少ない冒険者さん達が固まっているのかと言うと、プレイヤーのリーダーである大剣士さんがそう指示したからです。
何でも、NPCは強いから戦場の中心から極力離した所に配置するだとか。
私が使用を許可されている魔法は、下級の補助魔法、下級の回復魔法、四属性の下級魔法。
ユキお姉ちゃんに貰ったローブと杖はインベントリにしまって、今はユキお姉ちゃん曰く、弱め。らしい装備を付けています。
武器は、鋼の短剣に魔力が通りやすい白木の長杖。
防具は、ユキお姉ちゃんしか正体を知らない植物繊維で出来た下着とチュニック、ショートパンツ。それから、同じく正体不明の革靴と革ベルト。
其処に、ユキお姉ちゃんが作ったギルドの、幹部の証となる指輪と、真っ黒なフード付きマント。
インベントリの中には、多数の上級ポーションや下級ポーション。
下級から中級の魔法が使える魔法符に、綺麗な布や大きな籠、服、大量の食料と調理道具、日用雑貨、他色々。
『何時、どの様な状況になっても良いように備え、常に己の状態を把握する事が生存へ繋がる』
ユキお姉ちゃんの教えを守って、装備を確認してみたんだけど……良く分からないよぉ……。
緊張も治らないし、動悸も激しくなってきたし……お、お姉ちゃーん……!
「アワユキ、落ち着いて」
「っ!」
その声は唐突に聞こえて来ました。
——私の耳元で。
「お、お姉ちゃっ!?」
振り返ろうとすると、マントの下に手が回され、胴体と首を固定されました。
何処から手が伸びているのかまるで分かりません! 凄く怖いですっ!
「アワユキ、何も恐れる必要は無いよ。誰も死にはしない」
「あ、あうぅ」
「だからアワユキ、落ち着いて。君がしたい事を、したい様に、すれば良い」
「ユキ、お姉ちゃ……!」
ユキお姉ちゃんは私のお腹と頰に手を這わせ、ゆっくりと撫でながら、優しい声音で私を元気付けてくれます。
ユキお姉ちゃんの慰め。
体の芯に熱が泊り、奥底から活力が湧いて来るこれ、その原因は私が元々ユキお姉ちゃんと1つだったからこそ分かります。
ユキお姉ちゃんはこれをやる時、必ず魂に触れて来るのです!
それが無意識なのかそうじゃ無いのか分からないのですが……とにかく気持ち良くなってしまうのです!
だからお姉ちゃん、もうやめて……!
「ふぇ……」
「アワユキ……アワユキ? アワユキー。…………故障?」
◇
腰砕け状態からどうにか立て直し、もう直ぐ開戦の時間です。
ユキお姉ちゃんが接続で、戦場の状況を分かりやすい様に伝達してくれるので、とても安心出来ます。
最初は強く接続したのですが、あまりの情報量に目が回りそうになり、ユキお姉ちゃんに助けて貰う事になりました。
一応、セツお姉ちゃんとフユお姉さん、フブキちゃんとも、常時回線を繋いでいるのですが、ユキお姉ちゃんについて行けたのはセツお姉ちゃんだけでした。
フブキちゃんとはほぼ同時に産まれ、私は最初に意識が覚醒したので、お姉ちゃんとしてフブキちゃんが何処まで出来るのかとても心配だったのですが、接続を弾かれたのはほぼ同時。
……少し安心してしまったのは内緒です。
その後は、ユキお姉ちゃんとセツお姉ちゃんが、同ポテンシャルの筈ですが……、とか、興味深いね、とか話しをしていたのですが、良く覚えていません。
色んな理由で立ってるのがやっとの状態だったので、二人の会話を聞いている余裕はありませんでした。
それなのに、ユキお姉ちゃんが、
『折角の機会だから、此処で思考能力の限界を調べておこうか』
と、言い出して、とても大変でした。
『何処に注目するか、の性格と、後は単純に経験の不足だね。これからの課題にしよう』
ユキお姉ちゃんがそう言った事だけは覚えています。
ともあれ、もう直ぐ開戦です。
全てはユキお姉ちゃんの手の平の上。
何も恐れる必要は無く、ただ私のしたい事をすれば良いのです。




