第30話 微笑む者達
第六位階上位
傾き始めた日の光が差す大きな広場。
子供達の騒ぐ声とレリアの唸り声、そう言った喧騒が戻ってきた。
とりあえずレーベにはウインクで危険がない事を伝えた。
次の瞬間——
「——ふぇっ!?」
唐突に、何かが僕の頭に衝突した。
殴られた様な強烈な衝撃が頭頂から足先まで走り抜け、あまりにも見事な不意打ちに産まれて初めて完全に硬直した。
ごろりと僕の目の前に落ちて来たのは——
観測者の涙 品質? レア度? 耐久力?
備考:?
——巨大な水色の宝石だった。
涙滴型をしたそれは僕の胴体程もある、結構な魔力が込められた実に巨大な結晶だ。
万が一逆に落下して来ていたら、間違いなく僕の頭に突き刺さっていただろう。
……この、的確に精神の隙を突いておちょくってくる感じ、死神にそっくりだ。
とりあえず宝石は回収し、僕に集まっていた視線を微笑む事で誤魔化した。
レリアにはやる事を伝えてあるし、特に此処でやり残した事は無い。出発しよう。
リオン、レーベ、アルネアを集め、貴族街を出た。
爺様達の所へは、今夜あたり向かおう。
目的地は、拠点の島、スノー。
◇
移動は即席ゴーレム馬車だ。
聖杯の残魔力量は半分程。ダモスの財宝は魔導鎧の作成に結構使ったがまだ8割近く残っている。
移動の間に瞳神の言葉を考察しておこう。
先ず、彼女が何の為に来たのかと言うと……それは僕を見る為なのだろう。
金と銀の力にふさわしければそれで良し。そうでなければ……。と言った所か。
もう一つの理由は——忠告。
僕が今まで聞いた事は、終焉、救世、試練。
それから、様々な神々が関与していると言う事実。
推測するに、来る終焉に備えて小さな生命である僕等に、『誕生の試練』と銘打った試練を課し、殻を破らせる、つまり進化させようとしている?
……つまり、このゲームの目的は、新たな人材の発掘とその育成と言う事か。
瞳神の忠告は、僕だけが試練を突破してしまう事の忌避。
強者として産まれ出でるのが僕だけではいけないと言う事だろう。
確かに、一つを特化して強化するよりも複数を満遍なく強化する方が、ローコストでハイリターン、ハイスピードでの戦力増加が可能だ。
要約すると、早い! 安い! 旨い! ……この三点が真理と言う事か。
差し当たって僕がやるべき事は、プレイヤーの強化。兵士の強化。配下の増量。
やり方は幾らでもあるが、一番良いのは……そう——
——ダンジョンの設立だっ!
「ふふっ」
『?』
「何でもないよ」
左右にいるリオンとアルネアを撫でて誤魔化す。
迷宮。
それはマーケティングだ。
良い魔物。
強力な装備。
希少な素材。
これらを駆使し、需要と供給を見抜いて、如何に攻略者達を引き込み魅了するか。
DPを稼ぎ、施設を拡張し、攻略者達を育成する。
僕は未知を探求出来て戦力が増えるし、攻略者達はレベルや装備がより良い物になる。
正にwin-win。
今は強敵との連戦で大いに疲労しているので、今日の所は拠点の整備だけに留めよう。
しかし明日からは、本格的な生産核の捜索と、鍛錬島の迷宮作成に取り掛かる!
「ふふふっ」
『?』
「にゃんでもない」
……ちょっと取り繕えない程疲労してるみたいだ。
「ねーちゃん、楽しそう……えへへ」
「ユキが嬉しそうなの。私も嬉しいの」
またもや撫でて誤魔化そうとしている僕を見て、レーベは腕を組みながらも、その厳めしい顔の口角を緩めるのであった。
・王都周辺の攻略 完




