第23話 獅子の親子
第六位階上位
「改めて名乗ろう」
未だ警戒している4人も交え、話し合いを始めた。
土を操り即席の椅子と円卓を作って、それぞれが席に着くと、最初に話し始めたのはレーベ氏。
「我が名はレーベ。ルヘーテの血盟に名を連ねる者」
「僕はユキ、マレビトだよ」
レーベ氏のご丁寧な自己紹介に、簡潔且つ決定的な情報を混ぜてお返しする。
「マレビトであったか……」
レーベ氏はその言葉に少し考える様な仕草をした後、急に立ち上がった。
警戒を強める4人を差し置いて、僕の隣まで来ると——
——土下座した。
「無理を承知で頼む。力の盟約に従った娘を解放してくれとは言わない、ただ、苦しませる様な事はしないで欲しい」
「ふーん」
「とーちゃん……!」
立派な親心である。
リオンは感動した様に震えたが、僕としては気になる点が一つ。
『力の盟約』、それはリオンが言っていた事だろうか?
敗者は勝者に従うと言うアレだ。
土下座するレーベ氏を見下ろす。
改めて先の戦いを考えると、彼が本気で戦った場合でも僕達が勝っていただろう。
それはつまり……。
「頼む、この通りだ……!」
「……面を上げるんだ、レーベ」
ゆっくりと顔を上げたレーベ氏。
僕は確りと彼の目を覗き込む、その瞳には強い意志が宿っていた。
「君は今、戦士としてでは無く、親として僕の前にいる。そう解釈していいね?」
無理を承知で頼む。と言う言葉は、一方から見れば無理だと分かっているが、別の視点から見ると、それでも如何にかならないか。と言う思いがあると言う事だ。
力の盟約と言う言葉からも分かる通り、レーベ氏には戦士として、一本筋の通った強い意志を、心を持っている。
それと同時に、リオンが捕らえられ、泣かされた事に激しく憤る親心もある。
今回の土下座は、戦士の心よりも親心が強い事を表しているのだ。
果たして、レーベ氏は僕と目を合わせたまま、コクリと、強い肯定の意を示した。
「ではレーベ、リオンと言う大きな力を使えない対価、如何にして払う?」
「……この身を捧げ——」
「——それは最初から決まっていた事だろう?」
「くっ……」
レーベ氏は苦り切った表情を浮かべている。
ルヘーテの血盟だか力の盟約だかは知らないが、例え演技で有ろうとも、どうやっても僕が勝っていた事実は変わらない。
まぁ、対価なんてどうでも良いが。
大事なのは、彼の中で確りと僕に服従する気持ちを固める事である。
「レーベ、分かっているね?」
「……ああ、力の盟約に……従おう」
「それではリオン、命令だ」
苦悶、苦痛、そんな表情のレーベ氏。
此方を睨み付けている様であるが、僕は何処吹く風とリオンへ視線を移す。
「リオン、君はこの後向かう迷宮がある町で、危急時以外レーベと一緒に狩りをしていて欲しい。衣食住は保証しよう」
そう伝えると、レーベは驚いた様に僕を見た。
僕はそれへウインクして見せる。
と言うか、リオンのレベルで苦しむ様な事って、そうそう無いと思うんだ。
レーベは口元に笑みを浮かべ、ビシリッと凍り付いた。
「——オレ……ねーちゃんと一緒が良い」
……取り敢えず指示の内容は都度考えよう。だからレーベ、泣かないで。
◇
レーベがリオン復活後、直ぐに此処へ来れたのは、2人が付けている同じデザインの腕輪が関係しているらしい。
その腕輪は特殊なマジックアイテムであり、お互いの居場所が分かる他、日に一度、その場所へ転移する事も出来る。
つまり、レーベは過保護なのだ。
戦いの気配を感じ取り、様子見に来たリェニとルェルァに、新しい仲間が増えた事を伝えた。
4人は軽く挨拶を交わし、軽く話しをした後、リェニとルェルァは遺跡開発に戻って行った。
その後、戦いの跡が残る荒地を軽く整地し、ちょっとした後処理を終え、レーベに獅子獣人に変化して貰ってから、王都へ向かった。
爺様達が復活するのは、新しく2人が増えた為、明後日の朝頃になる。
全員が復活するまで王都からはあまり離れたく無いし、しばらくは僕の支配地の開発に専念しよう。
差し当たってやる事は、
・貴族街の改修。
・遺跡の改修。
・拠点の島の開発。
・王都地下の整備。
遺跡は妖精とエルフに任せるとして、拠点の島は後回しで良いだろう。
王都地下の整備は、時間がある時に纏めてやってしまおう。
貴族街の改修も、直ぐに必要と言う訳では無いが、貴族達が残して行った家具や、魔法道具なんかがあるのを密かに期待している。
獣亜人の子達もいるので、パパッと良い屋敷を作って上げよう。
他に王都近郊で出来る事と言えば、
・鍛錬島の攻略。
・迷宮の作成と調整。
・新たな装備の開発、作成。
・兵士やプレイヤーの強化。
などなど、明後日までには色々と終わらせられるだろう。




