第21話 vs.レーベ・ルヘーテ
※260万PV達成
第六位階上位
ズシン、ズシンと重い音を立て、悠然と歩く赤獅子、レーベ・ルヘーテ。
その瞳は憤怒故か、鬣と同じくらい赤く染まっている。
僕の周りにいる子達は、全員が前に出て、それぞれが魔力を滾らせ、獅子を威嚇している。
そんな中、一番最初に飛び出したのは、ラース君とルーベルの2人だった。
どちらも、身体強化系のスキルを持った強者である。
最初に仕掛けたのはラース君。
超高速で接近すると、低姿勢からの、全体重と勢いを乗せた右フックを、獅子の膝裏に叩き込んだ。
——ドゴォォンッ!!
轟音。
肉と肉がぶつかり合ったとは思えない程の衝撃音が響いたが、どうやらレーベ・ルヘーテには効いていない様だ。
身動ぎ一つせず獅子は視線だけでラース君を見下ろした。次の瞬間——
——ルーベルの拳と獅子の裏拳が衝突した。
限界突破を使用したらしいルーベルの一撃は、先の衝突よりも大きな衝撃音を鳴り響かせ、拮抗する。
しかし、それも一瞬の事。
——ルーベルは吹き飛ばされた。
それだけでなく、ラース君も、回り込もうとした行動を読まれ、軽めの後ろ蹴りをくらっていた。
ギリギリの所で防いだ様だが、腕が半ばから千切れている。
ほんの一瞬、僅かな時間の交錯であったが、獅子の瞳からは怒りが溶け消え、理性の光が戻っていた。
一撃一撃は確かに強力だが、込められた殺意は軽めである。
どうやら、僕とリオンの状態を見て、何かの誤解が解けたらしい。
そして、レーベ氏は僕が気付いている事に気付いた様子だ。
それだけでも、極めて高い知能を有している事が分かる。
折角の機会なので、配下の皆がどの程度やるのか、僕の指示無しでどう動くのかを見ておこう。
取り敢えず、レーベ氏にウインクしておく。
レーベ氏は僕の事を見て一瞬困った様な表情を浮かべたが、直ぐに先と同じ様に、怒り狂った獅子の如き演技を始め、先にも劣らぬ咆哮を上げた。
「とーちゃむぐっ!?」
とーちゃんね。すると彼も獅子頭の悪魔王では無いと言う事になる。
さっきの怒りは、『娘を泣かせたのはてめぇらかっ!』と言った感じであろうか? 大正解である。
取り敢えず、リオンは撫でさすって黙らせよう。
「……」
「ふへぁ……」
僕がそんな事をしている間に、戦闘は再開していた。
◇
降り注ぐ雷霆。
青白い光と赤黒い炎が獅子を包み、火と水、風、土の大槍や爆弾が雨の様に打ち込まれる。
そんな攻撃の嵐に晒された赤獅子は、しかし、平然と腕を組み、巌の如く大地を踏みしめている。
……雷霆の時だけちょっと痛そうにしているが。
まぁ当然だろう。
何せ雷撃は1回に8割程の魔力が乗せられている。『神鳴り』には劣るが、十分な威力だ。
それらの攻撃を全身に受け、平然としている様に見えるレーベ氏。
しかし、魔覚で見ると、ゴリゴリ魔力が削られて行く様子が良く見える。
結局、魔法攻撃をしている子達が魔力切れになり、レーベ氏の魔力を4割程度削るに留まった。
攻撃の嵐が終わるや否や、ウルルの吠え声が響き、粉塵も晴れぬ内にウルル率いる狼と犬の子達が飛び込んで行った。何故かミュリアも。
煙の中に消えて行った彼等を、視界では何も捉える事は出来ないものの、魔覚では何が起きているのか良く分かる。
真っ直ぐに飛び込んで行ったウルルは、レーベ氏の一撃を紙一重で回避し、腕に牙を突き立てた。
しかし、レーベ氏はそれに構わず腕を振るい、迫っていたネロへウルルを振り下ろした。
すんでのところでネロは回避し、ウルルは赤獅子を離して体を捻り着地する。
続け様に、四方八方から赤獅子へ襲い掛かる犬と狼達は、しかし、赤獅子の被弾を無視した重い連撃によって迎撃されていく。
牙を突き立て、爪で切りつけ、確実に魔力を削っているが、それもまた微々たる物。
弾き飛ばされ戦闘不能になる子達が増えて行く。
土煙が晴れる頃には、残っていたのはウルル、ネロ、ミュリアの3体だけ。
他の子達は、事前に魔力を消費していた事もあり、一撃かニ撃で沈んでしまった。
赤獅子の周囲から仲間が居なくなったこの瞬間、今まで隙を伺っていたミュリアが動いた。
唐突に、ミュリアから光の線が放たれる。
僕の使うホーリーレイに似ているが、威力も規模も桁違いに大きい。
天使が使った物に良く似た光の柱。
閃光はレーベ氏を包み込み、海の彼方へと消えて行った。
後に残ったのは、煙りを上げながら腕をクロスしているレーベ氏と、魔力切れと精神力切れで倒れたミュリア。
レーベ氏の膨大な魔力を、単独で2割程も削ってみせたのは、流石は元七聖賢と言ったところか。
これで削った魔力は6割と少々。
皆は何処までやれるかな?




