第19話 決着!
第六位階上位
形があやふやな子達をよく観察すると、靄が無い部分に傾向がある事に気付いた。
端的に言って、よく使う部位、顔や心臓部、爪などが最もしっかりとした形をしている。
強い精神力で意識されている事が、確固たる魂の器を形成する要因なのだろう。
形を保っている子達は、全身に確実に魔力が行き渡っている。
なので、肉体の強度も高く、欠損しても他の部位には影響が少ない筈。
爺様達同様に、心臓などの弱点を破壊されても平然と生きていられるだろう。
……まぁ、多少の消耗はあるが。
他にも、よく目を凝らして周りを見渡すと、ほんのりと世界が色付いて見える事が分かった。
装備には色がある。
色があると言う事は、無色に感じられる魔力とは違って魂かそれに近い性質を持っていると言う事。
世界は仄かに色を持っている。
つまり、草木や土にも魂に近い何かが存在していると言う事。
そして、それがおそらく精霊と言う物なのだろう。
土には土属性の精霊が、水には水属性の精霊が、植物には植物属性の精霊が宿っている。
これらは、魔力とは少し違った形で存在している様だ。
僕はてっきり、周辺から魔力を吸収する際に、微小な精霊ごと吸っているのかと思っていたが、どうやらそうでは無いらしい。
例えば、水辺の大気中には単純な魔力の他に水属性の魔力が存在している。
僕はその水属性こそが、意思持たぬ精霊、種精霊であると思っていた。
しかし実際には、その水属性は種精霊が放出した水属性魔力である様だ。
つまり、周辺の精霊を完全に御する事が出来れば、膨大な量の魔力を抽出する事が出来ると言う事である。
そして……精霊の手綱となり得る現象を、僕は既に知っている。
——精霊刻印。
これを上手く使えば、所有する魔力がゼロの状態から魔導鎧に匹敵する程の力を生み出す事が出来るかもしれない。
やり方は単純だ。
意思持たぬ種精霊達が、最も好む精霊刻印を作り、寄って来た種精霊を捕獲。
魔導核の様な装置に保存し、必要な時に保有魔力を漉し取る。
殺した種精霊達を魔力に分解し、それすらもエネルギー源として利用する。
これで、膨大な量の魔力を取得する事が出来るだろう。
……うむ、悪魔の所業だな。
実際にそんな兵器を作れば、徐々に自然から精霊が消えて行き、やがては肥沃な森でさえ砂漠の様な有様に変わってしまうだろう。
それも生物なぞいないただの砂地だ。
……効率は些か落ちるだろうが、精霊を殺さない方法を考えてみようか。
先ず、種精霊が好む住居を作り、そこに大量の種精霊を保存する。
戦いの時には死なない程度に手伝って貰う。
必要とあらば、エネルギーを出し切った種精霊達を放出して、新たに元気な種精霊を吸収する。
これなら、自然破壊も少なく、ある程度のエネルギー量を維持出来るだろう。
これがリスクとコストの妥協点だ。
まぁ、今の僕なら種精霊の存在を感知出来るし、それを使用する事も出来るので、態々新たな武装を作る必要は無い。
…………事もない。
実際にやるとしたら、扱い難い他者のオドを処理する必要があるので、精神力の消耗が激しくなる事が予想される。
金色の粒子さんの時は、金色の粒子さんの意思が僕の動きを手助けしてくれていた。
種精霊達の場合は、意思持たぬ精霊と言われるだけあって、強い意思を持っていない。
その魔力を自力で使用するとなると、無駄に精神力を消費する事になるだろう。
事前に、精霊達の微細な意識を使役する事が出来る精霊刻印を作っておけば、自動発動型のスキル同様に精神力の消費が少なくて済む筈だ。
さて、此処まで考えると、作ってみたいという思いが止まらなくなるが、実は今、戦闘中なのだ。
そろそろリオンにトドメを刺してあげよう。
勿論、殺す訳では無い。
ただ単純に、僕がやられた事をリオンにもやるだけである。
体が痙攣し、視界がグラグラと揺れ、魂が体から剥離する異様な気持ち悪さを感じるあれを。
添えた指先から、リオンの魂に銀色の魔力、僕の魂の断片が入り込む。
どうやら魔覚。
精神力の消費が激しいらしい。
その状態で魔力を動かすと、酷く精神力を消耗する様で、僅かに疲労感を感じる。
少し急ぎつつ、リオンの魂を覆い尽くし——
『えい♪』
——揺さぶった。
◇
意識が現実に戻る。
目の前にいるリオンは、変わらず困惑した様な顔をしていたが、それも束の間。
即座に僕へ足払いを掛けに動き——
「ぁぇ?」
——転倒した。
何が起きたのか分からないと言った様子のリオンは、倒れたまま視線だけで僕を見上げた。
「らんえ……っ!?」
呆然と呂律の回っていない言葉を漏らした、次の瞬間——
「お、おえぇぇっ……」
——盛大に嘔吐いた。
出す物が無い様でモノは出ていないが、胃液の様な物質が吐き出され、荒地の地面が煙を上げて溶解した。
僕の眼前には……。
痙攣しながら胃液を吐き、目が文字通り回っている美少女がいた。
「おえぇぇ……」
「……」
虚しい勝利だった。




