第17話 獅子の悪魔
第六位階上位
光の中から現れたのは、大きな天蓋付きのベットであった。
所々に精緻な細工が施された大きなベットは……ピンク色だった。
半透明なカーテンの先には、幾つかぬいぐるみが置かれており、その真ん中に大きな膨らみがあった。
「……ミュリア?」
「…………あ、あれぇ?」
自分の目を疑うかの様に目を擦り、おかしいなぁと言わんばかりに首を傾げたミュリア。
噂に聞く獅子頭の悪魔王が少女趣味である可能性は否定しきれないし、そもそも獅子頭の悪魔王の性別は分かっていない。
だがしかし、イメージとかけ離れたその様は、僕の頭の中に悪魔違いと言うワードを呼び起こしていた。
「……あ、動いたの」
アルネアの零した声に、ベットの方へ振り向くと、大きな膨らみがもぞりと動いた。
警戒しながらそれを見ていると、ゆっくりと布団が持ち上がり、膨らみの正体が露わになった。
それは——
「……ミュリア」
「…………」
——獅子のぬいぐるみだった。
布団の中から頭だけを出した獅子のぬいぐるみは、目算僕よりも大きく、布団の膨らみの殆どを占めていた。
その獅子のぬいぐるみの横に、大きく盛り上がった小さな影一つ。
どう見ても子供の大きさである。
いやまぁ、かの獅子悪魔王が子供である可能性は無きにしも非ず。
何せ、此処にいる誰もがその正体を知らないのだから。
それにレベルが高くて強いし。
小さな膨らみはもぞもぞと動き、布団をパサリと振り落とした。
その姿は——
「……ふぁ……まだ朝じゃ無いか……寝るぅ……」
——少女であった。
丸みを帯びた耳が揺れ、小さく欠伸をした後、また寝に入ったリオン・ルヘーテ。
毛の色は赤でも黒でもなく、真っ白。
肌は日に焼けた様な小麦色であった。
これが獅子頭の悪魔王か。
「……? ……な!? なんだお前ら!?」
唐突に耳をピクリと動かして上体を起こしたリオンは、周囲を見回して一瞬呆けた様に固まると、驚愕に目を見開いた。
驚いてぬいぐるみを引き寄せるその様には、歴戦の戦士と言った様子は欠片も無い。
……やっぱり悪魔違い?
「あー、君」
「……な、なんだ?」
少し警戒しつつも、僕の問い掛けに応じたリオン。
聞くことは一つ。
「獅子の悪魔王って知ってる?」
本人確認だ。
「じ、じいちゃんの事?」
「……」
「違うのか?」
おどおどし始めた彼女を放置して、ミュリアへジト目を向ける。
「……」
「えーと……獅子頭の悪魔王の孫です」
……まぁ、良いか。
今更何か言っても状況が変わる訳では無い。
今はリオンに集中しよう。
「リオン」
「な、なんだよ」
どうしようか?
獅子頭の悪魔王に対する人質として使えるかもしれないし、配下に加えた方が良いかな。
「僕の配下にならない?」
「え? ……お前、強いのか?」
リオンは、僕の事を足先から頭頂までじっくり見回し、問うて来た。
「さて、どうだろうね?」
「お前があたしより強かったら手下になってやる。弱かったらお前があたしの手下になれ!」
そう言うや否や、リオンはベットから飛び出して、僕に飛び掛かって来た。
僕を守ろうと動く他の子達を制して、前に出る。
僕が単独で倒さないと、従ってくれそうに無いからね。




