第7話 後始末
第六位階上位
——ただ撃退しただけでレベルが5も上がってしまった。
それだけの強敵だったと言う事か。
そんな思考はさておいて、敵の動きを考えよう。
逃げたと言う事は、それなりに大きなダメージを与える事は出来たのだろう。
推測するに、余裕は無く、然りとて、相討ち覚悟で破れかぶれに突っ込んでは来ない程度。
まぁ、敵が余程慎重な輩であったのなら、多少痛手を食らったので取り敢えず撤退、なんて事かもしれないが……。
前者は僕の希望的観測である。
どちらにせよ、数日間くらいは森の奥に潜伏してくれる……かもしれない。
次来たら『氷極の宝珠』が火を噴く事になるだろう。
海を全て回収し、メイド服に着替えてそこまで考えた所で、唐突に世界が緑の光に包まれた。
緑色をした植物属性の魔力は、樹木の魔物から放たれて、破壊し尽くされた森を物凄い勢いで再生して行く。
光が収まる頃には、樹木の魔物は消滅し、森は元通りに戻っていた。
危機も一応は去った様であるし、後始末も終えた。
ウルル達やエルミェージュ達と合流しよう。
◇
「……救援感謝します」
森の中から音も無く現れたエイジュとエルミェージュ。
二人は警戒している様で、エルミェージュは離れた場所で弓を構え、エイジュは杖を持っている。
対して僕は、非武装のただのメイドである。
……後ろに巨大な銀狼とケルベロスを従えた。
「そう言う依頼だからね」
「依頼……ですか……」
エイジュは少し考える仕草を見せ、その後、僕の姿を足先から頭頂までじっくり見回した。
「……貴女は対価に何を望むのです?」
「既に貰っているよ」
「そう……ですか……ルテールはもう、潰えてしまったのですね……」
憂いに満ちた表情で遠くを見詰めるエイジュ。
何をどう思考したのかは分かっているが、残念ながら潰えたのはルテールでは無くローシェである。
「……分かりました、私もルテールの1人。強き者、貴女に従いましょう」
エイジュはエルミェージュを呼び寄せ、訝しげに近付いて来たエルミェージュへ有無を言わせず隷属魔法を掛けた。
「え……」
直ぐに自らにも隷属魔法を掛けて、僕の配下に加わる事となった。
「これで我々は貴女様の隷下となりました」
「うん、他のルテール氏族は僕の隷下では無いけどね」
「え……?」
「……」
「折角だから貰っておくよ」
「え、あの……えぇ?」
折角だからね。
◇
その後、ルテールの代わりにローシェが配下に加わった事や、僕が一応デュナークやザイエの弟子である事、アルネアとアルメリア、ビャクラの知り合いである事を説明した。
結局2人は僕の配下のままとなり、その後——
——倒れて動かなくなった。
化け物との戦闘で疲労が限界を超えていたのだろう。
そこへ、信用出来る戦力が来たから、緊張の糸が切れてしまった。
正に糸が切れた操り人形の様にぶっ倒れた2人を、取り敢えず布に包んでキャンディーの袋の様にした後、ネロの左右の首に両端を咥えさせ、王都へ向かう事となった。
昼を少し過ぎた位の時間には王都へ到着し、ウルルとネロを送還。
天使化のスキルを使って翼を生やし、不可視の外套を羽織って不可視化、包帯でぐるぐる巻きにした2人を両脇に抱えて、王城地下、審判の間に入った。
「で、今度は何を連れて来たんだ?」
「エイジュとエルミェージュ」
二つのぐるぐる巻きを見て、開口一番に聞いて来たザイエに中身を伝える。
すると、包帯の隙間から光が漏れ出し、エルフ2人がロリ化した。
「ふむ、今度はどんな敵と戦って来たんだい?」
「聞かせて貰おうか」
爺様が紅茶を入れ、ビャクラが着席を促す。
ちょっとした大きさの丸机には、シスターアルメリア、桃花、白雪、レミアがついている。
軽く説明しようか。
◇
「へー、完全に不可知の竜、か……本当に完全だったのか?」
「ええ、『森海の宝珠』の力を持ってしても捉える事すら出来なかった……」
「ザイエ兄でも無理」
復活したエルフ姉妹も交えて、今回の敵の脅威を説明した。
「確かに、エイジュが宝珠を使っても無理なら、ザイエや僕では無理だろうね」
「……それをユキ殿が退けた、と……」
ビャクラの言葉に、全員の視線が僕へ集まった。
「ハニー……素敵……」
「流石私のユキね!」
「……し、従って正解だった……」
レミアは自分で配下に加わった訳では無いけどね。
「あの力、尋常の物ではありませんでした……」
「あれ程の死の気配を感じたのは……悪魔王と相対した時以来……」
「休んでまだ3日なのに……追い抜かれたのか……?」
畏怖する様に呟いたエルフ姉妹に対し、ザイエは呆然と言葉を零す。
すると、シスターアルメリアが席を立ち、僕の方へ歩み寄って来た。
「ユキさん、2人を助けてくれて、ありがとう」
「わぷ」
シスターアルメリアの少女化しても然程縮んでいなかった胸元に抱き締められる。
……まぁ、僕は可愛いから抱き締めたくなる気持ちは分かるけど、早く遺跡に行かないといけないから、手早くしてね。




